第2話・蔵の中に秘蔵されていた「江戸川乱歩のルーツ」

文字数 1,256文字

「ミステリー文学資料館」の冊子から、貴重な読み物を発掘&再録!
「ミステリー文学資料館」が年2回発行していた「ミステリー文学資料館ニュース」から、その折々の特設展示の内容を紹介する連載〈発掘!「ミステリー文学資料館ニュース」より〉。


前回は、「ミステリー文学資料館ニュース 第2号(2000年10月)」に掲載されていた、展示「鮎川哲也の世界」をご紹介しました。

今回は、2002年11月発行の第6号に掲載された展示を見てみたいと思います。


当時開催されていた展示のタイトルは……


↑↑「ミステリー文学資料館ニュース」第6号(2002年11月18日付)~P4「展示コーナー」
……「江戸川乱歩再見」


“本格の鬼”鮎川哲也に続きまして、乱歩というやはり最大級の巨星が登場です!

もちろんミステリー資料館である以上、江戸川乱歩の展示を行うのは、ある意味当たり前のこと。ですが、このときの展示には特別な意味があったのです。


乱歩邸に建つ蔵は「乱歩は蔵の中で蝋燭の明かりで執筆する」という伝説があったほど有名ですが、その蔵とそれを取り囲むように作られた書庫には、膨大な量の資料や書類が保管されていました。


ミステリー評論家の新保博久氏と山前譲氏は、その蔵書や書類を長年にわたって調査し続けていました。その成果のひとつが、展示の前年の2001年に新発見された、乱歩が横溝正史に宛てた341通もの書簡。乱歩はその几帳面な性格から、手紙をカーボン紙で複写して残しておく習慣があったことによる大発見です。


当時、新聞のニュースにもなり、ミステリー研究にまたひとつ大きなテーマが生まれたのでした。

乱歩と正史が交わした書簡――わくわくしますね!

また、乱歩の蔵書に関しては、新保・山前両氏により小説蔵書目録『幻影の蔵』としてまとめられ、2002年に刊行されています(下写真参照)。
↑↑「ミステリー文学資料館ニュース」第6号(2002年11月18日付)~P1「山前譲氏に聞く―わかってきた乱歩、作家デビューまで」

ちなみに同書にはCD-ROMがついていて、当時の蔵の様子を画像で見ることができます。


そして同じ2002年の春に、土蔵を含む乱步邸と4万点近くの蔵書が立教大学に譲渡され、それを記念して「江戸川乱歩再見」の展示が行われたのです。


この展示では、主にデビュー前の創作活動に焦点を当てていました。「二銭銅貨」の粗筋と草稿、早稲田大学時代に書いた幻想小説・冒険小説の原稿、シャーロック・ホームズものを訳した大学時代のノートなど、乱歩のルーツが見えてくる貴重な資料が並びました。


2002年は乱歩研究、そして乱歩ファンにとって画期的な年だったのです。


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