追悼・森村誠一さん/森村誠一さんとねこ

文字数 1,361文字

森村誠一先生が亡くなられました。江戸川乱歩賞『高層の死角』で世に出られ、推理小説界で大山脈を築かれました。時代小説『悪道』で吉川英治文学賞を受賞されました。講談社文庫100冊目は『ねこの証明』。お人柄がにじむご自身の写真、俳句、エッセイ満載の一冊です。心からの感謝とともに、謹んでお悔やみ申し上げます。


社会派、反権力、硬派な作品のイメージのある森村誠一さんですが、じつは大のねこ好きでした。野良の面倒を見ているうちに、次第に仲間のねこが列をなすようになり、先輩格のねこにいたっては、リビングに上がり込みテレビの時代劇を楽しんでいたといいます。

「ねこ写真俳句」


写真と俳句を組み合わせる新しい表現方法「写真俳句」を提唱し、実践していた森村さん。訪問してくるねこや散歩コースで出会うねこたちのしぐさをとらえてパチリ、そして俳句をひねりだし……。

その作品の一部をご紹介します。

撮影/森村誠一

「通い猫ねだる度ごと背丈伸び」


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「花を嗅ぐ風流猫や予定なく」


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「夢さめて昼寝の後も予定なし」


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「樹に上り猿か猫かと問いただす」


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「家猫とノラの差別や天高し」


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「隣家との境に昼寝七十年」


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「世はすべて事なく円し眠り猫」


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森村誠一(もりむら・せいいち)

1933年埼玉県熊谷市生まれ。青山学院大学卒。9年余のホテルマン生活を経て、1969年に『高層の死角』で江戸川乱歩賞を、1973年に『腐蝕の構造』で日本推理作家協会賞を受賞。1976年、『人間の証明』でブームを巻き起こし全国を席捲、『悪魔の飽食』で731部隊を告発して国際的な反響を得た。『忠臣蔵』など時代小説も手がけ、精力的な執筆活動を行っている。2004年、第7回日本ミステリー文学大賞を受賞。デジカメ片手に俳句を起こす表現方法「写真俳句」も提唱している。2011年、講談社創業100周年記念書き下ろし作品『悪道』で、吉川英治文学賞を受賞する。2023年7月逝去。

森村誠一ホームページ>> 

もっと「猫写真俳句」を楽しみたい方はこちらをぜひ!
「悪童」シリーズ
吉川英治文学賞受賞作!
将軍綱吉が柳沢邸に御成り中、天下の大乱を招きかねない変事が勃発。吉保は秘密を知る者の鏖(みなごろし)を暗殺集団猿蓑衆(さるみのしゅう)に命ずる。伊賀忍者末裔の英次郎は天才女医おそでを護り、おくのほそ道を血に染め逃亡の旅へ。強大な敵の喉元に迫るは不屈の一寸の虫たち。死闘の行方は!?
吉川英治文学賞に輝く時代小説の最高峰!

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