編集長ジミーがオススメ、5月の光文社文庫!

文字数 1,140文字

 ゴールデンウィーク前に発令された緊急事態宣言が延長されてしまい、コンサートや美術館も、軒並み中止や休館となったままです。その中で、緊急事態宣言直前にトーハクの「国宝鳥獣戯画のすべて」に行くことができました。今回は甲乙丙丁すべての巻を展示。しかも甲巻は動く歩道で鑑賞というユニークなスタイル。今回は時間指定での入場となりましたが、それでも混雑は否めず、こうした工夫は密を防ぐ意味でも大事ですね。アイデアに拍手を送りたいと思います。

 さて、5月の光文社文庫、まずは御歳90歳を迎えてますます健筆を振るわれている西村京太郎さんの『能登花嫁列車殺人事件』からオススメしましょう。もはや説明不要の大ベストセラー、十津川警部シリーズの光文社文庫最新刊になります。能登を走る「花嫁列車」。そこに現れた花嫁衣装の女性。そして殺人事件が発生。殺された女優に隠された人間関係と、15年前に撮られた映画の秘密とは?
政界を巻き込む難事件に十津川警部が挑みます。



 続いては、青柳碧人さんの『未来を、11秒だけ』を。こちらは4月に刊行された『二人の推理は夢見がち』の続編となりますので、できれば2冊続けてどうぞ。もちろん、この作品のみでも十分楽しめます。本作は昨今の本格ミステリ界で多くの作品が描かれている「特殊設定ミステリ」。どのような特殊設定かは、タイトルから推察してみてください。青柳さんならではの、唯一無二の世界観を持った作品で、本格、恋愛、サスペンスとさまざまな要素を含んだお得な一冊です。



 最後に時代小説からも一冊。知野みさきさんの大人気シリーズ「上絵師
律の似面絵帖」の最新作『しのぶ彼岸花』を。上絵師としての仕事も順調、さらには長い春を実らせて私生活も充実、という女職人の律ですが、やはり禍福は糾える縄の如し、とんだ事件にも巻き込まれて……。丁寧に描かれた物語は、辛いこともきっと乗り越えて行ける、と希望をくれる作品です。ぜひ一巻からお読みください。



 それにしても緊急事態宣言はいつまで続くのでしょう。4月の半ばに奇跡のようなムーティ指揮東京春祭オーケストラのヴェルディ『マクベス』演奏会形式を聴くことができたのが、遠い昔のように感じます。まだまだ厳しい日常は続きそうです。いずれにしても希望を捨てずに、日々を大切に生きていくしかありません。光文社文庫もそんな生活の中で、一つのオアシスとなれば幸いです。

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