◆No.5 『立花三将伝』のテーマ曲は?
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私がいろいろ聞いた中では、
多くの作家が、音楽を聴きながら小説を書いています。
私は小説ごとに、テーマ曲を厳格に決めています。
その曲を聴くと、すぐにその小説の世界観に入れるわけです。
たとえばワーグナーやチャイコフスキーも文学から発想を得ていますし、絵画も、頻繁に物語を題材としますよね。
芸術は当然、相互に乗り入れがあるわけです。
その意味で、絵も文章もできる漫画家は偉大です。
前置きが長くなりました。
テーマ曲はずばり、ナオト・インティライミさんの「今のキミを忘れない」です。
ナオトさんによると、<卒業の定番ソング>にしたかったそうですね。
が、なぜか、なっていません。
面白い小説だから、評価されるとは全く限らないように(←ひがむな)、「こんな名曲が、なぜ放っておかれるの?」と、首を270°くらいかしげたくなるような作品もぞろぞろありますよね。世の中そういうものです。
もっとも、さすがにプロは名曲だと分かっているので、たくさんのアーティストがカバーしています。
木山裕策さん&クリス・ハートさんのデュエットもいいですよ。
BENIさんの英語の歌詞もいいし、弦楽曲やオルゴール、ジャズにまでなっています。
ナオトさんの曲は他の小説でもテーマ曲に使わせてもらっています。
ちなみに私は曲調だけ聞いているので、たぶん数千回聞いていますが、歌詞は覚えていません。J ポップの歌詞は戦国時代にちょっと合いませんからね。
好きな小説がそれぞれ違うように、好きな音楽もそれぞれです。
ですからお読みいただくときは、もちろんご自身のお好みのテーマ曲でどうぞ。
私はテーマ曲のタイトルを、必ずその小説の本文や章名に入れ込むようにしています。
そのままが難しい場合は、少し捻っていますが。
たとえば、『神遊の城』のテーマ曲は、ABCの「シャングリラ」なので、最終章は「桃源郷へ」という章名にしています。
『立花三将伝』では、私の好きな場面で弥十郎に言わせていますよ。
よろしければ探してみてください。
香椎宮:由緒ある大きな神社です。『三将伝』では神主さんが呼びつけられて……。
写真提供:道雪会
赤神 諒(アカガミ リョウ)
1972年京都府生まれ。同志社大学文学部卒業、東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了、上智大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学。私立大学教授、法学博士、弁護士。2017年、「義と愛と」(『大友二階崩れ』に改題)で第9回日経小説大賞を受賞し作家デビュー。他の著書に『大友の聖将(ヘラクレス)』『大友落月記』『神遊の城』『酔象の流儀 朝倉盛衰記』『戦神』『妙麟』『計策師 甲駿相三国同盟異聞』がある。