『福猫屋 お佐和のねこかし』刊行記念スペシャルエッセイ③/三國青葉

文字数 2,155文字

心温まる優しい歴史小説が話題の三國青葉さんの新シリーズ「福猫屋」、第2巻が刊行です!。

第2弾は、『福猫屋 お佐和のねこかし』

その刊行を記念して、猫好きの三國さんがまたまたとっておきの猫エッセイ「猫の健康診断」をよせてくださいました!

猫の健康診断/三國青葉


 うちの猫は、『ごっち』という12歳のキジトラです。2010年6月、生後1カ月で愛媛のボランティアさんに保護され、その年の12月にうちの子になりました。


「猫は人間の4倍の速さで歳をとるので、年に1度健康診断を受けても、人間で考えると4年に1度ということになるんですよ」


 ワクチン接種のため、ごっちを最初に病院に連れて行ったとき、先生がおっしゃった言葉です。若いときは年に1度でいいけれど、シニアになったら半年に1度が望ましいともうかがいました。そこで、ごっちは誕生月の5月に毎年健康診断を受けることにしたのです。健康診断の内容は、触診、尿検査、便検査、血液検査などです。


  ごっちは3歳のとき、血液検査で異常が見つかりました。中性脂肪の数値がとても高かったのです。まだ若いので先天的な病気だろうということで、リポテストという脂質の詳しい分析検査を受けたところ、猫には非常に珍しい先天性のインシュリン抵抗性型脂質代謝異常という病気であることがわかりました。生まれつき脂質を代謝する酵素が欠如していて中性脂肪の値が高くなり、ほうっておくと膵炎や糖尿病を引き起こしてしまうのです。血液検査と尿検査、1日3回4種類の投薬が欠かせません。


   治療を始めて9年以上が経過した今は、4カ月ごとに検査を受けており、中性脂肪はなんとか基準値におさまっています。ただ、中性脂肪を抑える薬はだんだん効かなくなるそうで、その場合は量を増やさなければなりません。それでもだめなときはさらに強い薬にするのですが、肝臓が悪いごっちには使用が難しいそうです。一度量を増やしたあと増やさずにすんでいますので、この状態が長く続いてくれれば……と願っています。また、膵臓が悪くなりかけて新たな薬を処方していただいたり、肝酵素の値が上がってしまったりと、なかなか気が抜けません。


   この病気は食事療法も大切で、ドライフードは療法食。缶詰は長い間禁止だったのですが、今は小さい猫缶を毎日ひとつずつ。あとはちゅ〜るの総合栄養食タイプを毎日1本。これがごっちが口にすることができる食べ物のすべてです。あと、猫は絶食が続くと肝リピドーシスという生命に関わる状態になるのですが、脂質代謝異常の子は特に罹患しやすいそうで、その点にも注意しなければなりません。以前急にご飯を食べなくなってしまったことがあり、その時はちゅ〜るで命をつなぎました。


 病気がわかった頃は落ち込んでいましたが、時がたつにつれ、前向きに考えることができるようになりました。本猫はいたって元気ですし、できるだけ長く生きられるよう、一日一日を大切にこれからもごっちと一緒に頑張っていきたいと思います。医療費も年間30万円以上かかるので(ペット保険に入っていれば、もっと安くすむのでしょうが……)、下僕は一生懸命働く所存です。


 健康診断を受けていたおかげで、何の症状も出ていないうちに病気を早期発見することができました。もし糖尿病や膵炎まで進んでしまうまで病院にかからずにいたら、ごっちは命を失っていたかもしれません。子猫の時から毎年健康診断を受けていてほんとうによかったと思います。うちの猫は特殊な病気ですが、猫の三大疾患は『心臓病』『腎臓病』『悪性腫瘍』、どれも早期発見が望ましいものばかりです。また、猫には、不調を隠すという習性があります。気づいたときは重病になっているケースも少なくないのです。


 愛猫さんと穏やかで幸せな日々を過ごすために、定期的な健康診断の受診をぜひおすすめいたします。


三國青葉(みくに・あおば)

兵庫県生まれ。お茶の水女子大学大学院理学研究科修士課程修了。2012年「朝の容花」で第24回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞し、『かおばな憑依帖』と改題してデビュー(文庫で『かおばな剣士妖夏伝 人の恋路を邪魔する怨霊』に改題)。幽霊が見える兄と聞こえる妹の話を描いた『損料屋見鬼控え』は霊感のある兄妹の姿が感動を呼んで話題になった。その他の著書に『忍びのかすていら』『学園ゴーストバスターズ』『学園ゴーストバスターズ 夏のおもいで』『黒猫の夜におやすみ 神戸元町レンタルキャット事件帖』 『心花堂手習ごよみ』などがある。

頬ずりしたり、じゃらしたり。

福猫屋の新商売「猫茶屋」が大繁盛!

文庫書下ろし・あったか時代小説!


ネズミ捕りの猫を手配したり、猫をあしらった小物を作ったり、さらには子猫と遊びたい客が存分に楽しめる猫茶屋を開いたりして、福猫屋の経営もやっと軌道に乗りかけてきた。そんな矢先、突然猫が消える「猫さらい」の噂が伝わってくる。すでに地元の両国界隈で発生しているらしい。三味線に使う目的のためにトラ猫と白猫が売り飛ばされているという噂まで上っていた。果たして福猫屋では白猫のユキが行方不明になった。犯人は客の中にいるのだろうか。そしてこの「猫さらい」をきっかけに、お佐和が思いついた新たな商売とは……。

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