KADOKAWA×講談社 2020年の激押し作家・伊兼源太郎③
文字数 2,357文字
つもる話は、キャンペーン中の4作品に広がっていき――
白熱の60分、後編スタートです!
伊兼さんを読むなら、まずこの4冊!(後編)
編集K 『Sが泣いた日』というシリーズ続編を出すにあたり、どういうものを目指して作っていったんでしょうか。
編集N 『地検のS』では、伊勢が対立する悪役がいて、伊勢がなぜその男に向かっていくのかは明かされるんですが、まだ正体がつかめない。続編ではもう少し黒幕をしっかり出して、話を大きくしていく。そして、伊勢がある種無敵というか、かなり切れ者ではあるんですが、相対する悪役は相当の切れ者でないと成り立たなくなる。それで、最初原稿をもらった時に、これは「伊勢が敗北する話」なのかもしれないな、という話をしていて。「地検のS」シリーズは『Sが泣いた日』の次も、続きを進められればと思っているんですけど、進めていく上で一度、伊勢のギアが一段上がるというか、なりふり構わなくなるというか、彼を追い込むような展開に持っていければなぁ、というところはありましたね。
編集K 『地検のS』の伊勢は、無敵感があります(笑)。それが、今回はここまで感情をあらわに……、これ以上はネタバレになるんですけれど(笑)、この『Sが泣いた日』という題名が全てですよね。ただの冷酷な黒幕ではなく、実はとても感情移入ができるという。確かに『Sが泣いた日』では、伊勢のパーソナリティや過去など、いろんなものが出てきて、より没入できる作品になっていますもんね。シリーズとしての底がすごく膨らんだような感じです。
編集T ありがとうございます!
編集N あと、連作ものの良さといいますか、切れ味を追求していく中で、どのキャラクターも追い込まれていくというか、その緊迫感が、1作目とはまた違うところだと思います。Sというのは「エス」、スパイの意味でもありますが、伊勢という人物は裏でこそこそしていて、いい奴かというとそうでもない。実は検察だったり、警察だったり、弁護士事務所だったりに、自分の息のかかった人間をばらまいていて、すべてをコントロールしようとしている。そういうスパイたちが暗躍するのも、他の作品にはないおもしろさかなと思います。
編集K 清濁併せ呑んで、めっちゃかっこよくて、感情移入できる主人公……最強じゃないですか!(笑)
編集N 『事件持ち』でも「地検のS」シリーズでも、先ほど話に出た「正義」をめぐる話をしていると思うんですよね。検察の人も、起訴するのがいいか葛藤するというか、実際の世の中とはもちろん違うところもあるかもしれませんが、自分が起訴したことでその人の人生を左右してしまう。警察や新聞記者も、ある種権力を持っている。そういう人たちに対して、それを絶対視しないというか、疑問を投げかけつつ、でもこうかもしれない、みたいな答えを探していらっしゃるのかなという気がします。
編集K 伊兼さんが同席した取材でおっしゃっていたんですけど、新聞記者として働いていた当時は、やっぱり自分の中で答えが出せなかったと。「なんでこんな仕事をしないといけないのか」とか「報道ってそもそも必要なのか」とか。ただ、『事件持ち』を書いてようやく自分の中で光が見えた、というようなことをおっしゃっていました。
編集N ご自身の積年の答えがつまっているからこそ、これほど胸をうつんですね。そして、嬉しいニュースというと、『事件持ち』は最近重版が決まったと!
編集T 本当におめでとうございます!
編集K 良かったです! このまま、4冊爆売れを目指して、猛烈プッシュしていきましょう!
編集N 今後は、まず7月発売の「ミステリマガジン」(早川書房)で初めての連載がスタート。そして来年は、『密告はうたう 警視庁監察ファイル』(実業之日本社)がテレビドラマ化予定です!
編集K 伊兼さんの作品は、どれもキャラクターがたっていて映像化に向いていますよね。
編集N 報道や警察、検察、『金庫番の娘』(講談社)では政治など、どんどんフィールドを広げられていて。先の『密告がうたう』は、主人公は警察を監察する警察官。『地検のS』もそうですが、切り口にも工夫があるというか、新しいんですよね。
編集K これまらますますうなぎのぼりですね! ぜひみなさんにも気づいてほしい。今ならまだ間に合う!
編集T 来年ではちょっと遅い!(笑)
編集K KADOKAWAと講談社は最初から気づいていた、注目していたっていう(笑)。最初からプッシュしていたっていうのを知っておいてほしいなという……これは証拠の鼎談です(笑)
編集N 伊兼さんの作品はすでにたくさんありますが、まずは今日お話に出たこの4冊から読んでいっていただければなと思います!
『地検のS』
事件の裏には必ず”奴”がいる。
元新聞記者だから描けた、まったく新しい検察ミステリー!
川地検で起きるすべての事件の裏側には、必ずひとりの男――湊川地検総務課長・伊勢雅行の姿があった。地元財政界に太いパイプを持ち、時には量刑の判断にまで関与しているとの噂も。検事でもない総務のトップがなぜ? この男、何者なのか?
講談社文庫 定価:本体780円(税別)
『地検のS Sが泣いた日』
検察の機密情報が漏れている――?
<地検のS>シリーズ、待望の続編!
国会議員・吉村泰二にかかる収賄疑惑。湊川地方検察庁が証拠固めを急ぐ中、金の受け渡しを目撃したホステス2人が行方をくらませる。歴代次席検事の懐刀と称され、総務課長ながら地検を陰で操る伊勢雅行は、盟友である事務官の久保信也と独自に調査を始めるが……。
講談社 定価:本体1600円(税別)