メフィスト賞2021年上期 印象に残った作品
文字数 816文字
『サイコ島』
巳:主人公が好きでした。生きるのが下手だけれど、愛されるべき要素をもった魅力ある人物です。単調な日々であっても、近隣の困った人や猫との触れ合いを通じて描かれる彼の孤独と温かさは伝わってきました。ただ、物語の筋が弱くエピソードの集積で終わってしまったのが残念です。しっかりとした構成を持ったプロットが欲しかった。
『虹の貴婦人』
巳:特殊設定でありながら、リアリティを感じる作品でした。文章力も高く、ラストまでの物語もしっかりとしていました。その分、設定部分の過酷さと救いのなさをエンタテインメントとして提供することには疑問を感じました。作者の訴えたいことが、怒りなのか諦めなのか読んだ後も気にかかります。
『燈国ノ菫ーー狼は春に啼くーー』
U:著者がキャラクターにとても思い入れを持って描いているのが伝わってきました。読み手もキャラクターに好感を持つことができて、素晴らしいです。展開や設定が、先行作品と類似している点がもったいないです。オリジナリティーが突出した一作を期待しています。
『エクソダス』
巳:地の文にイメージ喚起力、物語の牽引(けんいん)力があります。一方で会話は説明的でぎこちなさが残り、エンタテインメントとしては、固い印象です。映画「アルゴ」を思い出させる展開ですが、ドラマが描ききれていないと感じました。
『活性職能「名探偵」』
U:活性職能判定という設定が面白くて心躍りました。文章の読みやすさも魅力です。この設定と文章力を活かしきれていないように感じて、座談会に推せませんでした。一つ一つの謎が小粒で、解決しても主人公の格が上がっていない点がもったいないです。意識してみていただければ幸いです。
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