『閻魔堂沙羅の推理奇譚』/AFTERGLOW

文字数 1,810文字

プロのデザイナーが、「本」のデザインについて語るエッセイ企画『装幀のあとがき』。

今回は連続ドラマ化も話題な『閻魔堂沙羅の推理奇譚』をご担当していただいた、アフターグロウさんに筆を執っていただきました。

書き手:株式会社アフターグロウ

代々木上原に居を構えるデザインオフィス。 在籍する多数のデザイナーがチームを組んで作品に寄り添ったデザインづくりを行っています。 ライトノベル・コミックスを中心として宣伝・雑誌・グッズなど作品の魅力を広げる仕事をさせていただいて います。

HP:https://www.afterglow-inc.jp/

アフターグロウ、デザインチームです。 今回、閻魔堂シリーズ最新刊発売に際して編集様より「デザインについて書いてください!」というありがたいお話をいただき、おおよそ2年半ほど昔の気持ちを懐かしみながら書かせていただきます。


2017年末、講談社タイガ様から新しい推理小説のご発注をいただき、それが第55回メフィスト賞受賞作 「閻魔堂沙羅の推理奇譚」でした。頂いたゲラを読んでまず「うわなにこれすごい」と興奮しきりだったのを覚えています。 探偵が被害者、タイトルにもなっている沙羅は推理せず(!)ある意味主人公ですらないわけですが、文面からにじみ出る存在感・小悪魔的な可愛らしさに加えて、人情味のあるストーリーの迫力に圧倒されました。


そして閻魔堂シリーズでは、この作品の「顔」となるイラストレーター様を探すことが最初の仕事となりま した。当時、編集様からお願いされたのは「キャラクター単体で映える画面が作れる」「グラフィックに特徴がある」「特定のキャラクターイメージがついていない」こと。 そしてなにより、この沙羅というキャラクターの魅力を抜群に表現できる方を探して欲しいという中で、実際に装画をご担当されたのが望月けい先生でした。 ラフが届いたときに沙羅の可愛さ・超然さが素晴らしいグラフィックで表現されていることに感激しました! 可愛くてミステリアスで小生意気。けれどどこか神秘的な沙羅がそこにいました。

最初に頂いた5種のラフのどれもが魅力的ではあったのですが、まずは1巻目(この時、すぐに2巻を続けます!というお話もあり)作中でも印象のある「椅子」をメインにもっていく「B」案「C」案の2つに絞っ て、仮配置を行いました。

     

 (使用しなかった他のイラストももったいなくて実はプルーフや予告などで使用させていただいています)

最終的に沙羅が椅子にもたれかかっている「2」のイラストに、「E」案のイラストを潰さない塊としてのロゴ を模索する形で、実際のデザイン作業をスタートしました。この時点では背景に重い色を乗せる想定があったのですが次の段階ですぐになくなっています。

各種デザインの提案を行いつつ、「B」案のマントに地獄のニュアンスをマントに足したグラフィックに、筑紫A丸ゴシックをベースとした「G」案のシンプルなロゴを合わせる。極力シンプルな形の中に変化をもた せる。イラストにおける沙羅の魅力を保ったまま一歩引きつつロゴ感によって印象をサポートする。これが最終のデザインになりました。

(↑最終デザイン)


この段階で地は白一色(4冊目からは黒)で装飾もタイトルとその付随物のみ、沙羅の印象を押し出して いくという基本的な流れも生まれました。

各話の主人公は沙羅ではなく、けれど一貫して登場するのはあくまで沙羅!ということで、2巻目以降のシリーズ展開でも、何より沙羅が良い!と読者の方に思ってもらえるようデザインとの存在感のバランスを毎回悩みながら以後のシリーズ展開をさせていただいています。3巻目までが白のグラフィック、4巻目から6巻目までは黒のグラフィックで、黒のパターンは各巻それぞ れイラストに合わせた黒を作って印象を調整したりもしています。 7巻目からはまた新しいグラフィックの仕組みにもなっていくので、シリーズの展開と一緒に楽しんでいただければ幸いです。


コミカライズもドラマも始まる閻魔堂シリーズ。 これからもデザイナーとして作品とファンの皆様の間であれこれ悩める嬉しさを噛み締めていきます!

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