刊行まで毎日更新試し読み⑥ 『歯医者後藤』

文字数 1,996文字

人気お笑いトリオ・四千頭身後藤拓実さんによる初エッセイ『これこそが後藤』が、いよいよ9月8日に発売! その刊行を記念して、本書に収録されているエッセイを1日1本、7日まで毎日特別公開いたします!

毎日がちょっと楽しくなる魔法のエッセイーー色んな後藤を召し上がれ!


写真:森 清

歯医者後藤


どうもおはようございます。朝に書いております。洗濯機を回しております。


こう見えて最近ありがたいことに、いろんな仕事をいただけるようになってきました。まぁ文字なんでどうにも見えてないと思いますけど。


そんな中、この間お久しぶりに休日がありました。その日は本当に久しぶりの休みだったので朝起きて「おはよう」じゃなく「久しぶり」とその日に挨拶しました。


さて何しよう、そうなるわけです。休みの過ごし方を忘れてしまったのです。


休みの日は何するんですか、と聞かれると、まぁ映画とか見に行きますね。なんて誠実なサラリーマンみたいなアンサーを返してましたが、本当に映画を見に行く気にはならずボーッとしてました。


起きたのが10時くらいでした。11時くらいまでボーッとしてました。とりあえず歯を磨いてみるかと歯を磨いてみました。


するとふと感じました。歯医者行ってないなぁ、と。


これだと思いました。そうだ歯医者に行こう。当日予約が取れた歯医者に行きました。


後藤様どうぞ、呼ばれて椅子に座ると女性の歯科医師さんがあらわれました。


小さくガッツポーズしました。ここからなんと僕に興味があるのか、女性歯科医師さんが質問攻めしてきたのです。この歯医者に来るのは何回目ですかとか、最後に歯医者行ったのはいつになりますかとか、どっか気になる部分はありますかとかとか。あまりの積極性に拍手を送りそうになりました。


しかしどの質問に答えても、決まって返事は「分かりました」と冷たいものでした。聞いといてなんだ、と思いながら会話を進めていきました。


そして今日はどうされました?


やっと本題を聞いてきたので健診です、と答えました。


これにも分かりましたと返してきました。シャイガールでした。


シャイガールの健診が始まりました。


まず歯のレントゲンを撮るとのことで、部屋を移動すると変な機械で顔を挟まれました。シャイガールのわりに積極的でした。


撮り終わって説明を受けると、親知らずが4本生えているとの事でした。多分僕のことが好きなシャイガールは少しもひいた目をせず、一緒に治していこう。そんな目をしていました。通院を決意した瞬間でした。


この日は歯のクリーニングだけしてもらい、名残惜しくもお別れしたら時間は13時、2時間しか経っていませんでした。


もう一回シャイガールに会いに行くのもありでしたが、シャイガールの左手の薬指の飾り物を思い出して、グッと堪えました。


お腹も空いてきたのでご飯を食べる事にしました。


しかし綺麗になったばかりの歯をどうしても汚したくなかったので、なるべく歯を使わずに納豆ご飯を蛇のように食べました。


それでもまだ13時半です、ご飯って思ってるより時間経ってないですよね。


そこでなんと夜ご飯のお誘いがきました。テレビのスタッフさんです。20時に恵比寿に集合との事でした。


恵比寿ですわ。テレビ関係者はすーぐ恵比寿。


20時まで何しようかなぁと考えて一瞬だけ目を瞑りパッと開くと、そこにはもう19時の日本が広がっていました。


不思議な話です。回していた洗濯も終わっていました。


あの時僕に何が起きたのかは今でもよくわかっていません。そして恵比寿に行きスタッフさんと食事をしました。


どこの局のスタッフさんかはプライバシーの関係で言えないのですが、めちゃめちゃ楽しかったです。いや、めちゃ×2楽しかったです。イケてました。


こうして後藤の休日は終わりました。


これで休みの日は何してるんですか、という質問に噓を付かずに、歯医者に行って納豆ご飯を蛇のように食べたあと恵比寿に行きます、と答えれます。


よかった。

後藤拓実(ごとう・たくみ)

97年岩手県生まれ。16年、都築拓紀、石橋遼大とともにお笑いトリオ「四千頭身」を結成。おもにツッコミとネタ作りを担当している。YouTubeに四千頭身公式チャンネル「YonTube」を開設し動画を配信中。FM-FUJIにてレギュラー番組「四千ミルク」を放送中。

人気お笑いトリオ・四千頭身の後藤拓実による初エッセイ!

色んな後藤を召し上がれ!


楽しかった中学時代、しんどかった高校時代、楽しくやりたかった草野球がちっとも楽しくなかった事、新幹線のイスを倒せない事、そして四千頭身の一員である事――。

後藤拓実の24年間の軌跡は、日常を楽しくする「笑い」の魔法に溢れている!


「小説現代」で連載されていた超人気エッセイが、作家・武田綾乃さん、俳優・ムロツヨシさんとの豪華対談も収録して待望の書籍化!

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