第1話・“本格の鬼”鮎川哲也氏の足跡を辿って

文字数 1,090文字

「ミステリー文学資料館」の冊子から、貴重な読み物を発掘&再録!

「ミステリー文学資料館」が年2回発行していた「ミステリー文学資料館ニュース」には、「展示コーナー」と題した、その折々の特設展示の内容を紹介する欄があった。


創刊号は前回のプロローグでご紹介した通り、「〈カッパ・ノベルス〉から飛翔した作家たちⅠ」と題した「カッパ・ノベルスの第二期の隆盛期をになった作家」の展示だった。


では、次の資料館ニュース第2号(2000年10月)で紹介したのは、いったいどの作家の展示だったのだろうか?

↑↑「ミステリー文学資料館ニュース」第2号(2000年10月10日付)~P4「展示コーナー」
答えは鮎川哲也氏。


同年10月16日から始まる「鮎川哲也の世界」という展示の紹介だった。

本格推理一筋に書き続け、読者だけでなくプロの作家からも絶大な人気を集めていた鮎川氏。


昭和35年に日本探偵作家クラブ賞を受賞した『憎悪の化石』『黒い白鳥』や、『ペトロフ事件』『黒いトランク』など、アリバイトリックが中心の鬼貫警部もの。『りら荘事件』をはじめとする犯人当ての星影龍三もの。バーテンダーが探偵役の倒叙ミステリー「三番館」シリーズ。新人ミステリー作家の登竜門となった『本格推理』シリーズなどアンソロジーの編纂と、ミステリー界に残したその足跡はとてつもなく大きい。


それら作家、編纂者としての残したものを辿るだけではなく、少年期を過ごした満州時代や、さまざまなペンネームで作品を発表していた時代など、鮎川哲也誕生以前の資料も展示された。


さらには、探偵作家クラブ例会で行われた犯人当て「達也が嗤う」のメモや、『黒いトランク』の初稿など、超貴重なものも。

この第2号の1~3ページには、夏のあいだ過ごした北海道・北広島市のご自宅で収録された鮎川氏のインタビュー記事(聞き手は山前譲氏)も掲載されていて、まるごと鮎川哲也特集になっている。
↑↑「ミステリー文学資料館ニュース」第2号(2000年10月10日付)~P1「鮎川哲也氏に聞く」

2002年、83歳で逝去された鮎川氏には、没後、第6回日本ミステリー文学大賞特別賞が贈られた。


資料館ニュースの単独作家企画として一人目となった鮎川氏の存在は、やはり特別なものだったといえる。

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