第3回 節税スキルで大富豪への第一歩
文字数 2,410文字
前作「ひきこもり処世術」で大ひきこもり時代を総括したひきこもり・ジェダイ・マスターが次に取り上げるのは……「お金」!
お金にまつわる四方山話を集め資産2兆円(脳内)を目指すカレー沢薫の新たなる旅が始まるーー。
前回はこちら。
前回インボイスについて書いたのだが、そもそも何のためにインボイスをやろうとしているのか。
建前的には、軽減税率が導入されたことにより、正確な税額を把握するためらしいのだが、その内容は、どうみても免税事業主から税金を刈り取る形をしている。
免税事業主というと、今まで税金を納めていなかった奴らから刈り取るのだから良いではないかと思うかもしれないし、むしろそう世間に誤認させてインボイス制度を押し進めようとしている感もある。
免税されているのは売上にかかる消費税分だけであり、所得税住民税などは会社員と同じく普通に納めている。
フリーランスはただでさえ年金や保険料などの負担が会社員より大きい。零細個人事業主がそこからさらに消費税まで取られるとヤバいので、免除されているのである。低所得者が色々と免除されているのと同じだ。
つまり、金がない奴からさらに金を取ろうとする制度だから批判されているのである。
だが、インボイスの真の目的はもしかしたら「フリーランスなんかやってもこんな理不尽な目に遭うだけなんだから、さっさと会社員になって手堅く税金を納めろ」と促すためなのかもしれない。
しかし「フリーランスを辞めさせれば会社員になるだろ」などと思うのは「痩せてメガネを外せば石原さとみになるはず」と言っているのと同じであり、それはあまりにも俺たちフリーランス、そしてデブス様を甘く見すぎている。
フリーランスには、会社員とフリーランスという選択の中からフリーランスを選んだ人もいると思うが、中には会社員のチケットを取ろうとしたら「ご用意されませんでした」と画面に表示されてしまう者がいるのである。
組織の中で働く、というのはそう簡単なことではない。世の中には集団の中に入ると周囲に迷惑をかけた上に自分も病む、というビニール袋に入れられたカメムシ状態になる人間がいるのだ。
私も確実に「ご用意されてない勢」でありながら、無理矢理組織の中に侵入していたのだが、結局「てめえさてはご用意されてねえな?」とバレてしまい、組織を追われた先に辿り着いたのがここだったのである。
つまり、フリーランスしかできないからフリーランスをやっているのである。
カタツムリから殻を剥ぎ取ったら明日から心機一転ナメクジとして元気よくやっていくかというとそんなことはなく、ダイレクトに死ぬだけである。
それと同じように、そういうフリーランスにフリーランスを辞めさせたところで、会社員になるはずもなく、無職のひきこもりになる可能性が高い。
そうなったら、当然税金は払えないし、むしろ皆様の税金で生きていく存在になりかねないので、税収を増やしたいだけなら本当にやめた方がいい制度である。
それ以前に現在でも、フリーランスは社会保障的な意味では会社員より格段に不遇である。
何かフリーランスの方が優遇されていることがあるのかというと横山光輝関羽が「そんなものはない」のアップを始めてしまうだけだが、一応「節税」の余地は会社員よりフリーランスの方があると言われている。
「節税」も重要なマネーリテラシーの一つである。
しかし「節税対策で車や不動産を買う」というのはそもそも車や不動産を買える金がなければ不可能なので、儲かっていないフリーランスは結局そんなに節税余地はない。
しかし税金というのは、知識一つで払わなければいけない額がかなり変わるものである。
最近では会社員でも節税方法は増えている。
節税でまで会社員に負けたらいよいよフリーランスにいいところがなくなるのでやめてほしい。
会社員でもできる比較的新しい節税といえば、iDeCoとNISAである。
iDeCoは掛け金が全額税控除になり、NISAは利益にかかる税が免除されるそうだ。
税金が安くなるのは良いが、両方「今のうちにこれで自分で老後資金を貯めてくれ」という政策であり、「ジジョれカス」という姿勢を全く隠さなくなってきている。
ただiDeCoもNISAも投資の一種であり、掛け金の上限は決められているので、投資としての利益やリスク分散を考えるなら早めに始めた方が良いのではないかと思う。
会社員でもできる節税といえば、「セルフメディケーション減税」を知っているだろうか。
医療費が10万を超えると超えた分が税控除されるというのを知っている人は多いと思うが、セルフメディケーションは比較的近年始まった税控除で、市販薬でセルフメディケーションに指定されているものを年間1万2千円以上購入すると超えた分を控除することができる。
市販薬1万二千円と聞くとなかなかのジャンキーのように聞こえるかもしれないが俺たちのロキソニンを始め、対象になっている薬は多いので、頭痛ネキや腹下しニキは計算してみると意外と超えている可能性がある。
そして、めでたいことに今年からパブロンゴールドAが対象になったようだ。
何が朗報かは説明を省くが、とにかく朗報なのである。
当然だが、この控除は自分で申請しないと受けられない。
このようにこの国には、「知っている奴だけ得する制度」がたくさんある。
まず得をし損ねてないか、「情報」を集めることが大事なのだ。
ただ、パブロンゴールドA控除入り情報が広まりすぎ、やばい額の申請がきて来年外されると私が困るので、これはここだけの話にしてほしい。
山口県在住の漫画家・コラムニスト。最新作に『ひとりでしにたい』原作(講談社)など。
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