『ガスパール こいぬをかう』/文 ・アン・グットマン
文字数 1,827文字
同業のパートナー、喜国雅彦さんとの共著『本格力 本棚探偵のミステリ・ブックガイド』で第17回本格ミステリ大賞受賞をしている国樹さんが、「犬の出てくる面白い本」をネタバレなしで、素敵なイラストつきで紹介してくださいます。
第22回目の今回は、文・アン・グットマン、絵・ゲオルグ・ハレンスレーベンのリサとガスパールシリーズより『ガスパール こいぬをかう』です!
いよいよ本格的な春到来ですね。東京は桜の開花宣言がカウントダウンに入っている様子。相変わらず花粉症に苦しめられている国樹も、知らず心がウキウキしてきます。
そんな心踊る季節には、見ているだけで楽しくなる「リサとガスパール・シリーズ」(文/アン・グットマン、絵/ゲオルグ・ハレンスレーベン)などいかがでしょう。
今更紹介するまでもない大人気の絵本ですが、国樹は初期からの愛読者です。
ウサギ、もしくはイヌのように見えるけれど、どちらでもない未知の生命体がリサとガスパール。鮮やかな色遣いで、あたたかく柔らかに描かれた彼らは、最高に魅力的です。
白いボディに赤いマフラーを巻いた元気な女の子がリサ。黒いボディに青いマフラーを巻いたナイーブな男の子がガスパール。2人は永遠の友達(トワトモ)です。
これは個人的な話ですが、男女の性格が我が家の犬たちと全く同じで「やっぱり女の子のほうが強いよね」と思い、大変身近に感じてしまうのでした。
以前こちらで取り上げた国樹のバイブル本「カロリーヌ・シリーズ」と同じく、リサとガスパール(とその一族)は違和感なく人間界に溶け込み、人間のように暮らしています。飛行機に乗ったり、クリスマスを楽しんだり、生まれたばかりの妹にやきもちを焼いたり。絵本内の世界においては当然のことなので、もちろん説明はありません。
キャラクター設定は不思議なれど、お話は実にまともです。調べたところ、リサとガスパールの年齢は6歳くらいだそう。
つまり、人間の6歳児がしでかすようなことを、彼らが次々とやっていくわけです。何度「私も昔やった!」と思ったか。
それはそうと「ウサギはともかくイヌでもないんでしょ。何で紹介してるの?」と思われている皆さまへ。このシリーズには犬がメインの素敵なお話があるのです。タイトルは『ガスパール こいぬをかう』。
6歳児ならば犬と暮らしてみたいと思いますよね。「絶対に世話出来るから」とおねだりして。ガスパールの願いが叶い仔犬がやって来たのはいいのですが、想像していたのとは違い、楽しいことばかりではなくて……という「あるある」な物語。
あっさりとした展開ではありますが、喜びも葛藤もあって、子どもの心には間違いなく響くでしょう。なのに、教訓めいていないところも好みです。
リサとガスパールはパリ在住ですから、そこかしこにパリのエッセンスが感じられるのもたまりません。仔犬の名前なんて「ブックルドール」ですよ。初めて目にした名前にまで、ときめいてしまいます。
そういえばカロリーヌもフランスのお話だったし、これはもう聖地巡礼をしろということなのかもしれませんね。
漫画描き。近年はエッセイも手がけている。ミステリとメタルと空手と犬が大好き。代表作に『こたくんとおひるね』『しばちゃん。』『犬と一緒に乗る舟』など。講談社文庫では、共著の『メフィストの漫画』などがある。2021年、極真空手参段に昇段。メタルDJもこなす。2017年に『本格力 本棚探偵のミステリ・ブックガイド』(喜国 雅彦と共著)で第17回本格ミステリ大賞受賞。
公式ツイッター→https://twitter.com/kunikikuni
公式インスタグラム→https://www.instagram.com/kunikikuni/
金時(きんとき)
黒白のMIX犬/10歳/甘えん坊なシャイボーイ(怪我治療中)
柑奈(かんな)
茶色のMIX犬/9歳/自由に生きるおてんば姫
無事に退院し、 大好きなパパに甘え放題。
柑奈ちゃんは付かず離れずで見守っているように見えます。