文豪が放つマゾヒズムの珠玉。この変態、震えるほどにピュア。
文字数 912文字
↑写真/静川文一
遠藤周作『月光のドミナ』
文豪、変態じゃん。
そんなふうに思った、いや、思ってもいいんだ!と思ったきっかけの本。
それこそがこの、遠藤周作『月光のドミナ』だ。
私的三代マゾ指南書のひとつである(残りの二つは、谷崎潤一郎『日本に於けるクリップン事件』、山本英夫『殺し屋1』)。
知ったきっかけは、あの、戦後最大の奇書とも呼ばれ、三島由紀夫らが絶賛した稀代の変態SF小説『家畜人ヤプー』の作者、沼正三のインタビュー記事。
そこにあの、『沈黙』や『海と毒薬』で有名な、大文豪が出てくるのである…!!!
「本当の快楽は苦痛よりも凌辱の方にある」
沼正三によると、『月光のドミナ』にあるこの言葉こそが、マゾの真髄だという。
「痛み」ではなく、精神性に重きを置いているのだ。
よく、「マゾ?ただ痛いのが好きなんでしょう?」という人がいるが、「違う、そうじゃないんだよ…」と上手く伝えられないことが多々あった。
そのモヤモヤを、この短い一文で完璧に言い表してくれるとは…!
さらにこんな言葉も……
「僕等は人間ではなく物にまで引き下げられたい連中なんです、いいですか、物にですよ」
圧倒的説得力、圧倒的気迫である。
さすが世界に誇る我が国の文豪……
パーフェクトアカデミック変態。
我々のマゾヒズムへの理解を深めてくれること間違いなし、堅苦しい文豪のイメージが大きく変わること間違いなしの名作だ。
『月光のドミナ』遠藤周作/著(新潮社)
↑写真/静川文一
吉行ゆきの@変態文学大学生
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「文学」と「変態」と「酒」を偏愛する北大生。主にTwitterで活動し、全国で無駄にリテラシーの高い変態文学イベントなど開催。ミスiD2021受賞。
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