【新作レビュー】クナシリ

文字数 1,208文字

クナシリ

2019年/フランス

監督・脚本:ウラジーミル・コズロフ

2021年12月4日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開

配給:アンプラグド

© Les Films du Temps Scellé - Les Docs du Nord 2019

ドキュメンタリーの新規性が「撮影対象のレア度」と「視点の目新しさ」で測られるなら(実際、測られることは多い)、「クナシリ」の新規性はかなり高いと言えるだろう。

本作は、今まで実態が知られることのなかった北方領土のひとつ、国後(くなしり)島にがっつりカメラを入れ、それを〝旧ソヴィエト連邦生まれ、フランス在住のドキュメンタリー作家(日本人からすれば目新しい視点の外国人)〟が回した。

希少性同士の掛け算としては申し分ない。


その掛け算が何を見せてくれるかと言えば、高度な政治的緊張や秘された雄大な自然……などではなく、「うわ、汚ったねえ島」というトホホな残念感だ。


インタビューに応える何人かの島民たちは「日本人と共存したい」と希望する。そうしないと島の経済が発展しないからだ。

もし日本の「報道特集」(TBS系)取材班あたりがこのような島民の声に遭遇したら、嬉々として「ロシア政府の考えとは裏腹に、島民は日本人に来てもらいたがっている」という、日本人が受け入れやすい「視点」を設定するに違いない。


しかし日本人でもなくロシアで暮らしてもいない本作の監督は、そうしない。

荒涼としたゴミ溜めのような島を淡々と映し、打ち捨てられた土地の惨めさをただただ記録し続ける。

政府関係者は「我々はこの土地に観光業を発展させたい」と言うが、その割には具体的に動いている気配がない。

とにかく島に魅力がない。生気がない。画面は最初から最後までずっと〝サムい〟。


犬を見て「かわいい」と言う文化圏もあれば、「うまそう」と言う文化圏もあり、そのギャップはそれ自体が見世物になりうる。

その意味で、「日本人に馴染みの題材を外国人が撮るドキュメンタリー」は見世物として成立する可能性が高い。

本作もそのひとつに違いないが、見世物にしては気分が全然アガらないのはご愛嬌。



(ジャーロ NO.80 2022 JANUARY 掲載)

稲田豊史(いなだ・とよし)

【WEB】 INADATOYOSHI.COM

【twitter】@Yutaka_Kasuga


1974年、愛知県生まれ。編集者/ライター。

キネマ旬報社でDVD業界誌編集長、書籍編集者を経て、2013年よりフリーに。

著書に『『こち亀』社会論 超一級の文化史料を読み解く』(イースト・プレス)、『ぼくたちの離婚』(角川新書)、『ドラがたり のび太系男子と藤子・F・不二雄の時代』(PLANETS)、『セーラームーン世代の社会論』(すばる舎リンケージ)。

「SPA!」「日刊サイゾー」「現代ビジネス」などで執筆するほか、インタビュー・対談構成なども行う。


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