◆No.2『三将伝』は戦国学園もの!?

文字数 1,881文字

関ケ原の戦い当時、家康に西軍最強の武将と恐れられた立花宗茂。そのひと世代前の時代、地元・九州筑前に将来を嘱望される3人の若者がいた。美丈夫で剣に長けた勇将・藤木和泉、軍師としての才能に恵まれた薦野弥十郎、そしてその二人を慕い、運命をともにする米多比三左衛門。三人の友情と姫君たちとの恋を描いた戦国の青春群像劇『立花三将伝』をもっと楽しむために、著者・赤神諒氏がウラ話を語る!

米多比三左衛門 … 立花家臣。のちに大友派。
佳月 …和泉の妹。のちに出家して桂月院に。
イラスト・山田章博
■主な登場人物
藤木和泉  立花家臣。鑑載派、のちに毛利派。
薦野弥十郎  立花家臣(のちに軍師)。鑑光派、のちに大友派。
米多比三左衛門  立花家臣。のちに大友派。
野田右衛門大夫  通称、右衛門太。立花家臣。のちに毛利派。
佳月  和泉の妹。のちに出家して桂月院に。
皐月  鑑載の娘。和泉、佳月の従妹。
立花鑑光  立花家、第六代当主。
立花鑑載  鑑光の養子。のちに立花家、第七代当主に。
藤木監物  和泉の父。鑑載の腹心。
薦野宗鎮  弥十郎の父。鑑光派、のちに大友派。
安武右京  立花家の筆頭家老。鑑載派、のちに毛利派。
戸次鑑連  大友最高の将。のちの立花道雪。

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 誰しも青春時代があります。

 もちろん戦国時代にだって、あったはずなんです。

 ほろ苦く、甘酸っぱい、二度と戻らない時代。

 <戦国の青春>を描きたい。

 物語開始の当初、『三将伝』の主要人物はすべてティーネイジャーです。

 黄金パターンの学園ものは、しばしば転校生の登場で始まりますね。

 学校ではなく、武術の稽古場ですが、『三将伝』も同じです。

 新天地の立花家について、ほぼ何も知らない主人公の一人、15歳の米多比三左衛門(鎮久)を、視点人物として放り込みます。

 設定をまだ何もご存じない読者の皆様と、ほぼ同じ視点です。

 新顔の登場が、すでに成立している人間関係を変化せてゆく。面白いですよね。



 ところで、学生と社会人の違いは何か。

 それはズバリ「責任」だと思います。

 つまり、学園ものの登場人物の特徴は、誤解を恐れず言えば「無責任」です。

 別に家や組織や社会を背負って立つ必要はない。それは、大人の仕事ですから。

 描くのが面倒くさいので、親は登場しなかったりしますよね。

 学生は自分(たち)とその周りの事だけ考えていれば、それでいい。

 またまた誤解を恐れず言えば、無責任だからこそ、青天井で、無制約に、感情の赴くままに、自分たちの世界で、好きなだけ絆を深められるのかも知れません。

 第一部は、責任を負わない若者たちが、絆を深め合う物語です。

(ちなみに責任も、(もしかしたらより深く)絆を深めます。念のため)



 ですが、若者たちもやがて大人になり、重い責任を背負う。

 自分たちだけでは完結できない世界を生きるようになる。

 第二部は、大人になった若者たちが、残酷な運命に抗おうとする姿を描きます。 

 時代と運命のなかで、深い友情と絆と信頼がどのように作用するのか。



  青春ものにはもちろん女性も欠かせません。

 特に戦国時代ですから、政略結婚や家の事情があって、好き合う男女が結ばれるなど、ごく稀ですが、そこはエンタメ。スムーズに進展する友情や恋愛など何も面白くない。

 『三将伝』では、いろいろな紆余曲折をお楽しみください。



  ちなみに、恋愛メインのラブストーリーをお読みになりたい方は空貝 村上水軍の神姫』をどうぞ。

唐ノ原川(現在):『立花三将伝』の序盤、三左衛門と弥十郎はここで初めて出会います。
写真提供:道雪会




赤神 諒(アカガミ リョウ)

 1972年京都府生まれ。同志社大学文学部卒業、東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了、上智大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学。私立大学教授、法学博士、弁護士。2017年、「義と愛と」(『大友二階崩れ』に改題)で第9回日経小説大賞を受賞し作家デビュー。他の著書に『大友の聖将(ヘラクレス)』『大友落月記』『神遊の城』『酔象の流儀 朝倉盛衰記』『戦神』『妙麟』『計策師 甲駿相三国同盟異聞』がある。

第3回「 三という数 ~なぜ「三」将伝なのか」は5月13日(水)UP!

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