唯一無二の三谷幸喜創作インタビュー本/松野大介
文字数 1,637文字
唯一無二の三谷幸喜創作インタビュー本/松野大介
11年前の『三谷幸喜 創作を語る』が文庫化されました。
私と三谷さんとの関係はその『創作を語る』のあとがきに詳しくありますが、手短にお話しします。
私が85年に21歳で芸人デビューした頃、構成作家の卵たちが事務所にネタのダメ出しに来ていて、その中に23、24歳の三谷さんがいました(三谷さんがテレビの構成作家だった頃のお話も本にあります)。その出会いから長い期間は再会することがほぼなかったのですが、30代から作家となっていた私のある夕刊紙の取材依頼で再会しました。すると好きな映画(主にコメディ)が共通することもあって話が弾み、2013年、私のお願いによるインタビュー本を承諾していただき、『創作を語る』が刊行されたという流れでした。
三谷さんは自身の創作法をインタビューで語ることはほぼしないようです。加えて自作を振り返ることもしないと言います。なのに『創作を語る』を出せたのは、インタビュー&執筆者が私だからでした(暗に自慢)。
映像作品を中心に時系列で振り返った構成。
中身に2つだけ触れると‥‥、
『古畑任三郎』の主役は最初は玉置浩二さんのイメージ、
『THE 有頂天ホテル』の台本を書いている時のイメージは古びた小さなホテル、
というふうに、最初のイメージから違った作品になる過程も、本書では語られています。1つの作品が出来上がるにはストーリーがあり、そして次々に作品を創作していく流れにもストーリー(つまり理由)があります。
『やっぱり猫が好き』『振り返れば奴がいる』から『清洲会議』『大空港2013』まで振り返った11年前の本には、そのつどの作品で創作法が異なるのの、共通するキーワードがいくつかあります。
「理数系」「様式美」「役者さんへの当て書き」「制約やピンチが好き」など。
と言われても意味がわからないとは思いますが、読むとだんだんと理解できるはずです。それらのキーワードは三谷さんの創作法として重要なことだと思いますから。さらに9月刊行の続編『三谷幸喜 創作の謎』(この11年間の作品についてのインタビュー本)も読むと理解は深まるでしょう(『創作を語る』は新刊に先立ち文庫化されたのです)。
三谷作品を知る第一歩として手にとってくださり、三谷作品をDVD や配信で鑑賞したくなっていただけると、執筆した私としてはこれ以上なく嬉しいです。
ちなみにこの11年間、私はもちろん三谷さんも『創作を語る』を時おり読み返しています。
松野大介(まつの・だいすけ)
1964年神奈川県生まれ。’85年にABブラザーズとしてバラエティー番組「ライオンのいただきます」でタレントデビュー。テレビ、ラジオで活躍。’95年に文學界新人賞候補になり、同年文芸誌にて作家デビュー。芸人小説の先がけ『芸人失格』(幻冬舎文庫)がスマッシュヒット。小説『路上ども』『天国からマグノリアの花を』(ともに講談社)など著書多数。現在、沖縄県在住で作家活動。小説教室の講師も務める。
「古畑任三郎」から「清須会議」まで。
ドラマ・映画・舞台で次々にヒット作を手掛ける希代のクリエーターが、制作の舞台裏を語り尽くす。
「新しいこと」「おもしろいこと」ばかり考える希代のクリエーターが語る、発想の原点とは! 完全保存版の貴重な1冊── ●『12人の優しい日本人』脚本や演出の原点は”ひとり遊び”。●『古畑任三郎』刑事コロンボの、形じゃなくて精神を真似たかった。●『王様のレストラン』無理難題を受け入れながらも、いいものを創りたい。●『新選組!』天下を取った人間は絶対に書きたくない。●『2000年代からの芝居について』天才の近くにいる人間を書きたい。●『THE 有頂天ホテル』日本中の人が楽しめる映画を創ろうと思うようになった。●『清須会議』時代ものも好きだから映画で1回やりたかった。
『三谷幸喜 創作の謎』
三谷 幸喜,松野 大介