◆No.4 政略の果てに
文字数 1,733文字
本作では〈政略〉を描きました。
戦争は政略の目的であり、結果であり、この物語では、政略でほぼ決着がついていたとも言えます。
歴史の多くは、実際そうなのかも知れません。
大友家の無二の忠臣であった小原鑑元。
彼は他者同士の政略のために、全く意図せずして叛乱へと追い込まれてゆきます。
本作はその過程を克明に追い、悲劇として描きました。
「これでもか」と繰り出される駆け引き、騙し騙される――政略。
その果てに戦わされるのは結局、政略とはほぼ無関係で、蚊帳の外にいた武将ふたり。
現実社会でも、ままある話だと思うのです。
かくてこの物語では、心ならずも親友同士が対決へと追い込まれていきます。
それも大友第一の将と、第二の将との戦い。
一体どっちが勝つのか、書きながら私も手に汗握りました。
(ほんまかいな)
戸次鑑連、小原鑑元、高橋鑑種の〈大友三将〉。
これは私の完全な創作ですが、実は歴史の展開を見ると、それなりに納得頂けると思います。たくさん登場しすぎると複雑になるので、今回は高橋鑑種を字の文でしか出しませんでしたが、今後の大友サーガでは中核的な人物となっていきます。
ちなみに鑑元の妻の出自は分かっておらず、道雪の妹と設定したのも私の創作です。
戸次鑑連の兄妹姉妹は非常に多いので、それくらいの創作は許されるかと。
さて、恒例の〈本作のテーマ曲〉です。
お分かりの方もいらっしゃるでしょう。
(そんなわけないだろ)
ずばり、レッド・ツェッペリンの名曲 Stairway to Heaven です!
ただの偶然ですが、曲名がこの作品にぴったりだと思っています。
史実はともかく、この物語ではそうあってほしいと願います。
あまりの名曲ゆえに無数のカバーがありますが、私は原曲でなくピアノ曲を聞いていました。他にオーケストラですとロンドン・フィルの演奏やグレゴリアンなどもすてきです。
本当は20曲近くピアノ曲を中心に選んだ組曲を聴きながら書いていました。
ちなみに組曲の冒頭は、アンドレ・ギャニオンのComme au premier jourです。
(読者の方が聖地巡礼で撮ってくださいました。ありがとうございます!)
■主な登場人物
吉弘賀兵衛(鎮信)(よしひろ・かへえ(しげのぶ)):重臣吉弘家の長子で、大友義鎮の近習。義鎮派。18歳。
小原鑑元(神五郎)(おばら・あきもと(じんごろう)):大友第二の宿将。肥後方分。他紋衆。宗亀派。
杏:鑑元の娘。16歳。
八幡丸:鑑元の嫡男。8歳。
田原民部(たわら・みんぶ):近習頭。義鎮の義弟で腹心。後の紹忍。25歳。
大友義鎮(おおとも・よししげ):大友家当主。後の宗麟。26歳。
田原宗亀(たわら・そうき):田原宗家の惣領。大友家中の最高実力者。
大津山修理亮(おおつやま・しゅりのすけ):肥後山之上衆の若き当主。
小井出掃部(こいで・かもん):小原家家老。
角隈石宗(つのくま・せきそう):大友軍師。
志賀道輝(しが・どうき):大友重臣。加判衆の一人。宗亀派。
田北鑑生(たきた・あきなり):大友重臣。筆頭加判衆。宗亀派。
仲屋:府内の豪商。おかみが取り仕切る。
戸次鑑連(べっき・あきつら):「鬼」と渾名される大友家最高の将。後の立花道雪