◆No.4 政略の果てに

文字数 1,733文字

赤神 諒さんのデビュー作『大友二階崩れ』で描かれたのは、九州の大友家を揺るがしたお家騒動「二階崩れの変」。それから6年後に再び起きた争乱を描いた『大友落月記』が刊行となりました。策略、裏切り、寝返り……ドラマチックに展開する乱世の悲劇。その制作裏話を、著者が思い入れたっぷりに語ります!

本作では〈政略〉を描きました。

戦争は政略の目的であり、結果であり、この物語では、政略でほぼ決着がついていたとも言えます。

歴史の多くは、実際そうなのかも知れません。

大友家の無二の忠臣であった小原鑑元

彼は他者同士の政略のために、全く意図せずして叛乱へと追い込まれてゆきます。

本作はその過程を克明に追い、悲劇として描きました。


「これでもか」と繰り出される駆け引き、騙し騙される――政略。

その果てに戦わされるのは結局、政略とはほぼ無関係で、蚊帳の外にいた武将ふたり。

現実社会でも、ままある話だと思うのです。

かくてこの物語では、心ならずも親友同士が対決へと追い込まれていきます。

それも大友第一の将と、第二の将との戦い。

一体どっちが勝つのか、書きながら私も手に汗握りました。

(ほんまかいな)


戸次鑑連小原鑑元高橋鑑種〈大友三将〉

これは私の完全な創作ですが、実は歴史の展開を見ると、それなりに納得頂けると思います。たくさん登場しすぎると複雑になるので、今回は高橋鑑種を字の文でしか出しませんでしたが、今後の大友サーガでは中核的な人物となっていきます。


ちなみに鑑元の妻の出自は分かっておらず、道雪の妹と設定したのも私の創作です。

戸次鑑連の兄妹姉妹は非常に多いので、それくらいの創作は許されるかと。


さて、恒例の〈本作のテーマ曲〉です。

お分かりの方もいらっしゃるでしょう。

(そんなわけないだろ)

ずばり、レッド・ツェッペリンの名曲 Stairway to Heaven です!

ただの偶然ですが、曲名がこの作品にぴったりだと思っています。

史実はともかく、この物語ではそうあってほしいと願います。


あまりの名曲ゆえに無数のカバーがありますが、私は原曲でなくピアノ曲を聞いていました。他にオーケストラですとロンドン・フィルの演奏やグレゴリアンなどもすてきです。

本当は20曲近くピアノ曲を中心に選んだ組曲を聴きながら書いていました。

ちなみに組曲の冒頭は、アンドレ・ギャニオンのComme au premier jourです。


▲大分川河畔(大分市)

(読者の方が聖地巡礼で撮ってくださいました。ありがとうございます!)

■主な登場人物

吉弘賀兵衛(鎮信)(よしひろ・かへえ(しげのぶ)):重臣吉弘家の長子で、大友義鎮の近習。義鎮派。18歳。

小原鑑元(神五郎)(おばら・あきもと(じんごろう)):大友第二の宿将。肥後方分。他紋衆。宗亀派。

:鑑元の娘。16歳。

八幡丸:鑑元の嫡男。8歳。

田原民部(たわら・みんぶ):近習頭。義鎮の義弟で腹心。後の紹忍。25歳。

大友義鎮(おおとも・よししげ):大友家当主。後の宗麟。26歳。

田原宗亀(たわら・そうき):田原宗家の惣領。大友家中の最高実力者。

大津山修理亮(おおつやま・しゅりのすけ):肥後山之上衆の若き当主。

小井出掃部(こいで・かもん):小原家家老。

角隈石宗(つのくま・せきそう):大友軍師。

志賀道輝(しが・どうき):大友重臣。加判衆の一人。宗亀派。

田北鑑生(たきた・あきなり):大友重臣。筆頭加判衆。宗亀派。

仲屋:府内の豪商。おかみが取り仕切る。

戸次鑑連(べっき・あきつら):「鬼」と渾名される大友家最高の将。後の立花道雪

赤神 (あかがみ・りょう)

1972年京都府生まれ。同志社大学文学部卒業。私立大学教授、法学博士、弁護士。2017年、「義と愛と」(『大友二階崩れ』に改題)で第9回日経小説大賞を受賞し作家デビュー。同作品は「新人離れしたデビュー作」として大いに話題となった。他の著書に『大友の聖将『大友落月記』神遊の城』『戦神』『妙麟』『計策師 甲駿相三国同盟異聞』 村上水軍の神姫』北前船用心棒 赤穂ノ湊 犬侍見参』『立花三将伝』などがある。

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