第4話「『あつ森』でリアルな町がツツジに浸食されたよ!」

文字数 2,729文字



 あ… ありのまま自粛期間中に起こったことを話すぜ!
 「あつ森をプレイしてから、町の見え方が変わっちまった」。
 なにを言ってるのかわからねーと思うが、俺もなにをされたのかわからなかった……。
 どこぞのポルナレフやねんみたいなことを言ってみたけれど、本当にそうなのだ。
 
 小学生の頃からかれこれ18年ほど住んでいる地域なのに、今になって町の解像度がめちゃ高なのだ。
 風邪のときに食べるぶどうゼリーで、口の中がモノクロから24bitのフルカラーになったあの感じ。白黒写真からスマホで撮る写真になった、の方がわかりやすいかもしれない。
 とにもかくにも、島でのゆったりスローライフをウリにしているゲームにより、18年住んでいる町の見え方は変わってしまった。
 
 一番変わったのは、道端の植物への見方で、あつ森をプレイするまで、わたしは世界にこんなにもツツジが溢れていることに一切気づいていなかった。
 己があまりにも愚鈍だったのかと軽くショックを受けたぐらい衝撃的だったけど、基本的に人は歩きながらツツジがどこにどう生えてるかなんて気にしないと思う。
 わたしが群を抜いて愚鈍とかではないはずだ。
 
 小学校の下校時にツツジの蜜を吸うという定番の思い出がないからなのかもしれないが、今まで、あっ犬! のノリで、あっツツジ! とはならなかった。
 犬はどこを歩いていても目に飛び込んでくるし、どんな犬種かまじまじと見てその可愛さににやついてしまうが、これまでにツツジをツツジだと明確に認識したことはない。
 なんかもさっとしている緑とピンク、もしくは緑と白の何か。解像度激低の頂点。
 
 それが今や、あつ森のアプデで「低木」が島に登場したことにより、家から最寄りのコンビニへの道中、犬との散歩ルート、そこかしこにおびただしい量のツツジが咲き乱れているのがわかってしまった。
 低木や生け垣ではなく、もはや浸食と表現する方がしっくりくる勢いだ。プレデターの最新作とかにありそうで、普通に怖い。
 
 植物にびびる自分も自分だが、150センチぐらいもあるツツジを見ると、これが… 自然…… と慄いてしまう。戦慄で思い当たったけど、戦慄ツツジとかいうアイドル名も可愛いかもしれない。
 
 ハイビスカスでは駄目なのだろうか。夏に向けてのせめてもの南国気分を味わいたい。
 小池百合子が怒りそうなあのツツジ特有の密集具合と主張激しめの毒々しいピンク色がわたしは少し苦手で、でもそこまで町の植物として支持されるツツジが少し羨ましくもある。
 相当タフで管理しやすいのが断トツでツツジなのだろう。
 生け垣界のトップアイドルかつセンターを張っている戦慄ツツジ。
 
 あとは雑草。そう呼ばれる植物などひとつもないのだが、わたしから見れば雑草と呼んでしまうようなありふれた草も、つい見てしまうようになった。
 
 あつ森の島に生えてくる「雑草」。
 これまでのシリーズでは絵に描いたような3本線の草だったのが、今回の「雑草」はやたらと種類が多いし、さらに3段階ほど成長する。
 この雑草が成長する、というところがたまらなく愛おしい。忘れがちだが雑草も生きているのだ。
 
 わたしのお気に入りは、最終形態の背が高いギザギザ状態の雑草。
 この最終形態くんのモデルになっているであろう植物も最近の散歩でめちゃくちゃ見かけていて、その植物を見るたびに、
 
 「任天堂の製作陣はこの植物をモチーフに島の雑草の3段階目を作ったのでは……? 今作はリアルさがテーマだろうけどよくこれを導入しようと思ったよな… やっぱゲームを作る人たちって日頃の観察眼とか再構築する能力とかすごいんだろうな…… 」
 みたいな自分でも何言ってんだかよくわからないことを取り留めなく思うのだ。ゲームを作る人はすごい。
 
 本気を出してググるか、ポケット図鑑を購入すれば、この生命力が豊かそうな彼の名前は一発で判明するのだろうけど、それはなんだかもったいないような気がする。
 
 最終形態くんは、クラス替え間近のタイミングでふとしたことを機に存在を認知した最近気になるクラスメイトと同じ立ち位置だ。
 こっちから話しかけてみてもいいけど、めちゃくちゃ話したいわけでもないし、べつにそこまでしなくてもいいかな、とか思っていたら話す機会もなくそのまま卒業してしまって、大人になってから不思議とたまに思い出す、ぐらいの。
 最終形態くんとはそういう距離感でいたい。
 
 知りたいけど知らないままでもいいような、そんな絶妙な距離感の気になる存在が日常にいてくれるとわりと楽しいのでおすすめです。
 
 戦慄ツツジも最終形態くんも、植物だから基本そこに「いる」のだけれど、町のあちこちに彼ら彼女らを見かけると、おっ、となれるので、いい。
 
 さらには「柵」というアイテムにより、町の至るところに設置されている柵も気になってしまうようになった。町、想像の5倍以上の柵ありきで形成されています。まじです。
 区切られまくっている中で違和感を持たず生きてきたのも衝撃的だし、なによりゲーム内で「柵」を使いこなすのはめちゃくちゃ難しいのに、それを現実世界でやり遂げてきた先人たちは本当にすごい。
 
 建築士とかがめちゃイケな設計をしてくれているからなんだろうか。そうでなきゃ町がわたしの島みたいに無残な景観になってしまうはずだもんな、ありがたい。
 
 住宅街で人気の植物ランキングがあることも知ったし、イケてる一軒家の共通点は砂利プラス細めの木に下からのライトアップだということもわかった。
 
 現実世界の情報量の尋常じゃなさはゲームをしたらわかるようになるよ、だからゲームをして現実もガンガン面白がりなよ、なんて周りの大人は誰も教えてくれなかった。
 
 任天堂のゲームが素晴らしいなんて至極当然のことは経験から知っていたけれど、住み慣れた町の解像度がひとつのゲームによってここまで上がるようになるとは。
 
 外出自粛をして当たり前の日常を失っても、大人になっても、ゲームひとつでまた現実世界が広がるのはイカしてる。
 いい時代に生まれたなあ。

★次回は6月22日(月)に公開予定です!

こみやまよも
 春から営業として働くこじらせ女子。
  好きな人は、いくえみ綾とoyumi。
  就活でことごとく出版社に落ちたのを根に持っている。

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