「落ちたら焼死」の一本橋に「ドS妃」が爆笑。心臓えぐり出すエロ暴君。

文字数 1,294文字

「暴君と傾城の美女のコンビで亡国」という王道の展開を確立。

《殷》 紂王(B.C.1100頃)

「酒池肉林」という四字熟語は「殷の紂王が大量の酒を注いだ池を造り、肉を林にかけ、裸の男女に追いかけっこさせて楽しんだ」という故事に拠る。以前から行われた神事を大規模にしただけ、とも言われるが、ずいぶん楽しそうな神事ではある。


殷は考古学的に実在が確認されている中国最古の王朝で、紂王はその最後の王。


紂王は決して暗愚でも惰弱でもなかった。美貌の持ち主であり、猛獣を殴り殺すほど腕力が強かった。頭の回転も早くて口も達者だったので、諫言した家臣たちも言いくるめられてしまったという。


「(紂王は)自分に及ぶものなど一人もいないと考えていた。酒好きで淫楽に耽り、女性に溺れた。」(「史記 殷本紀」より訳出)


この手の人物が権力を得たら厄介なことになるのは現代と同じ。さらに「伝説の悪女」たる妲己との出会いが紂王の暴虐ぶりを加速させる。


妲己が紂王に提案して実施されたという「炮烙の刑」は残酷だ。これは猛火の上に油を塗った銅の柱を渡し、その上を裸足の罪人に渡らせるというもの(諸説あり)。必死の形相の罪人が、熱さに堪えかね足を滑らせて火中に落ちると、見物していた妲己は身をよじって大笑い。紂王もそんな妲己の体を抱いてご満悦だったという。


他に妲己を喜ばせたものに「蠆盆の刑」があった。これは、罪人を無数の毒蛇やサソリで溢れる穴に落とす、という処刑法。妲己は人が苦しんで死ぬところを見るのが大好きだったようだ。そして、そんな妲己のまぶしい笑顔(?)が見たくて、紂王は軽微な罪を犯した者、果ては無実の者までも過酷な処刑を行った。


たまらず紂王を諫めた者もいたが、紂王は「王たる私を諫めるとは、お前は聖人か」と激怒。「聖人の心臓には、七つの穴があるそうだから、見てやろう」と言って、その男の心臓をえぐり出し、これを観察した


また、奴隷を酷使して鹿台という、高さ200メートル(!)の巨大な楼閣を建造。その中を金銀財宝でいっぱいにした。鹿台の周囲には大庭園を造り、亭の中には珍しい鳥獣を放し飼いにして妲己と楽しんだ。


紂王は盛んに外征も行ったようだ。当然、民衆は疲弊し紂王を恨むようになる。今まで紂王に従ってきた諸侯も紂王を見限り始めた。


そんな中、反乱を恐れた紂王は、有力諸侯を偽って召し出して捕縛、処刑した。さらに、その遺体を塩漬けや干し肉にしたうえ、皆に食わせた。食人の風習は古代においてまま見られるが、紂王は父親にその息子や娘の肉を食わせることまでしたという。


周の武王が殷に反旗を翻すと、諸侯はみなこれに従い、ついに紂王と武王は牧野という場所で決戦となった。紂王の軍は70万(!)という大軍であったが、殷の兵士たちはみな武王の到来を待ち焦がれる始末で、軍は瞬く間に崩壊


敗れた紂王は鹿台に籠って自ら火を放ち、可能な限りの金銀宝玉を身に着けたうえで、焼け死んだという。

関連書籍

『王家の風日』宮城谷昌光/著(文春文庫)

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『古代中国』貝塚茂樹、伊藤道治/著(講談社学術文庫)

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