町田 康とねこ①

エピソード文字数 1,192文字

町田康さんが猫との暮らしを描いたエッセイは、2000年4月に「猫の手帖」で連載が始まった。以後、「FRaU」、「Grazia」に連載され、『猫にかまけて』『猫のあしあと』『猫とあほんだら』『猫のよびごえ』と4冊の本となって刊行された。


行き場をなくし、生命の危機に瀕している猫たちを連れ帰り、治療を受けさせて世話をする。それでも別れは訪れる。日々を淡々と丁寧に、写真とともにつづった作品に溢れる猫たちの愛らしさと生命の尊さ。長い人気を誇るベストセラーシリーズを紹介する。


写真/扉:但馬一憲  他すべて:町田康・町田敦子

※2016年IN★POCKET11月号より


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『猫にかまけて』講談社文庫


「昔は猫が苦手だったが一緒に暮らすようになってからすっかり猫が好きになった。

 いつも側にココアやゲンゾーたちがいた。どうでもいいようなことで悲しんだり怒ったりしているとき、彼女らはいつも洗練されたやりかたで、人生にはもっと重要なことがあることを教えてくれた。」


ココア(1982〜2004/享年22歳/めす)

町田さんが一緒に暮らした最初の猫。若いときは五羽も六羽も雀や鳩を捕ってきた。小柄だが聡明で気位が高く威厳に満ちた猫。18年をともに暮らした。

ヘッケ(2001〜2002/享年14ヵ月/おす)

都内の裏通りに兄弟たちと捨てられていたが衰弱ぶりが激しく町田さんに拾われた。さまざまな治療で元気になったように見えたが1歳2ヵ月で亡くなった。可憐な猫。

     ***


「人がキーボードに向かっているとき邪魔をしに来るというのは猫にとって仕事のようなものでゲンゾーもココアも同じく邪魔をしに来たが、ココアとゲンゾーではその動機が違っていたように感じられる」。


     ***


「ココアの場合は洞察力に優れているから、ただ邪魔をされているというより、そこにはしかるべき批判があって、

「ほーん、なかなかうまく書けている。書けてはいるがどうも表現が表面的かつ軽薄で毫も心にしみてくるものがない。例えばいま書いているそのシーンで、主人公はししゃもを食べているけれども、そのししゃもがちっともおいしそうでない(後略)」 


     ***


「こんなに早く死ぬと分かっていたら仕事を休んで遊んでやればよかったと思う。無根拠にヘッケとの生活が続くものだと思っていた自分は阿呆である。

 いつも寝ていたベッドに好きだったクッションを入れ花を飾った。ヘッケは無念きわまりないという顔をしていた。

 自分はヘッケの使っていたタオルを自宅に持ち帰った。空虚だった。ヘッケが走っていた部屋で原稿を書いている。」


(『猫にかまけて』より)   ※ねこプロフィール内年号は町田家にいた年

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