帰郷後藤

文字数 1,876文字

帰郷後藤

僕の出身地は岩手県大船渡市です。

 出身地と言っても生まれてすぐに埼玉県朝霞市に引っ越してきたので育ちはずっと埼玉です。

 だがしかし、僕は出身地を聞かれたら間髪容れずに岩手ですと言ってます。

 岩手には母親の実家である祖父母の家があるので、学生時代の夏休みは基本的に岩手県に帰っていました。毎回車で高速道路を使わずに、母親の運転で17時間かけて帰っていました。その道中が僕は大好きでした。


 深夜の2時ごろに起きて埼玉の家をでて19時ごろに岩手県に着きます。高速に乗ると8時間ほどで着きますが、一般道が大好きな僕と姉と母の強いこだわりにより、毎回下道で帰っていました。一般道にはいろんな店があるから好きなんです。


 まずは7時ぐらいまでノンストップで運転してもらいます。ノンストップと言っても信号が黄色だったら止まります。赤だったら必ず止まりますので安心してノンストップでこのまま読み続けてください。

 そして7時あたりでマクドナルドが見えてきます。そこには毎回寄っていました。そして朝マックを食べるのです。


 休憩です。僕と姉と妹は5時間ただ寝ていただけですがね。

 起きてようとはもちろんします。走り出しは今日は17時間起き続けると毎回意気込むのですが、母のお気に入りの福山雅治のベストアルバムが流れ出すと、気が付けば3人眠ってしまっています。

 母にもマクドナルドの時点では疲れは見えません。

 福山雅治の力は偉大です。


 朝マックを完食し僕は母の真似をしてコーヒーを飲みます。あのタイミングでなぜカフェインが欲しくなったのかは今考えるとよくわかりません。

 マクドナルドをでると妹と姉と僕はまたもう寝ないと意気込みます。母と堅い約束を交わし、またそこから5時間、母はハンドルを握りアクセルを踏みます。もちろんたまにブレーキも踏むので安心してください。

 その間は僕らの見ているアニメの曲が流れます。カフェインの効いた僕はノリノリで歌っているので、眠気なんかまったくありません。

 母にこのタイミングで毎回言っていました。

 今年はいけると。寝ずに大船渡に着けるぞと。


 アニソンメドレーが一周すると母の福山雅治のベストアルバムがかかります。妹と姉は一瞬で眠りにつきました。

 まだまだだなと寝ている二人を横目にカフェインを無視した僕の脳と体も一瞬で眠りにつきます。とんでもない子守唄です。


 約4時間眠って13時ごろになると車はブックオフに着きます。そこのブックオフは本やゲームだけではなく昔のおもちゃなども置いてあり、まさに楽園でした。

 そこで安くなった岩手で遊ぶためのおもちゃを買ってもらい、わくわくで車に乗ります。

 そこでもう一度母に意気込みを伝えます。

 もう大丈夫だと。

 こんなにわくわくしているんだからもう眠るわけない。

 そう言い放ち助手席に座ります。

 母はみたび運転席に座り前方を一心に見ます。もちろん車線変更などの時はバックミラーやサイドミラーを見ますので安心してください。

 おもちゃを両手に好きなアニソンを聴きます。妹と姉、そして僕はノリノリです。


 これは大丈夫だ。いける。

 そう思いながら一周するアニソンメドレーそのあとに待っているのは福山雅治ベストメドレーです。絶対に寝ないと心に決めて福山雅治のベストメドレーを聴きます。

 ちょっとしたら大船渡に着きました。それ見たことか。

 大船渡に着くとまだいつもにまして辺りが明るかったので、買ってきたおもちゃをもって外で遊びました。

 楽しい楽しすぎる。

 そう思っていると、夜になった大船渡に再び車が着きました。

 あれ、なにが起こったのかな。

後藤拓実(ごとう・たくみ)

97年岩手県生まれ。16年、都築拓紀、石橋遼大とともにお笑いトリオ「四千頭身」を結成。おもにツッコミとネタ作りを担当している。

YouTubeに四千頭身公式チャンネル「YonTube」を開設し動画を配信中。

FM-FUJIにてレギュラー番組「四千ミルク」を放送中。

『これこそが後藤』(著:四千頭身・後藤拓実)

人気お笑いトリオ・四千頭身の後藤拓実による初エッセイ!

色んな後藤を召し上がれ!


楽しかった中学時代、しんどかった高校時代、楽しくやりたかった草野球がちっとも楽しくなかった事、新幹線のイスを倒せない事、そして四千頭身の一員である事――。

後藤拓実の24年間の軌跡は、日常を楽しくする「笑い」の魔法に溢れている!


「小説現代」で連載されていた超人気エッセイが、作家・武田綾乃さん、俳優・ムロツヨシさんとの豪華対談も収録して待望の書籍化!


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