優秀賞 2020年5月7日≪マスクを踏まえたオシャレ≫

文字数 1,155文字

【2021年4月開催 「Our Day to Day」優秀賞受賞作】


2020年5月7日≪マスクを踏まえたオシャレ≫


著・安芸空希

 モデルや芸能人でなくとも、スタッフの容姿は売り物になる。
 なんせコンビニでさえ、スタッフの容姿で売り上げは変わるのだ。特にクリスマスなどのイベント時、その差は顕著となる。
 だとすれば当然、チェーン店でないカフェでは無視できなかった。
 その為、私はメイクをしていた。もっとも、いわゆるすっぴんメイクで他人から気付かれない程度。
 しかしマスクが必須となった今、更なる一歩を踏み出すしかない。
 そう、アイメイクである。
 世間ではマスクをすれば美男美女になれると囁かれているが、その逆も存在した。目つきが悪い私がそうだ。それを表情でカバーしていたのだが、笑顔が見えなくなった途端、怖いだの冷たいだの言われる始末。 
 これは対策を考えなければならないと私は痛感した。
 そこでまず変えたのがヘアスタイル。マスクをして黒い前髪を下ろすと、どうしても陰気に見えてしまう。なので、生え際が気になるものの派手にかきあげることにした。
 その為にヘアアイロンも購入。更にはヘアオイルや洗い流さないトリートメントなどで髪の毛の手入れを徹底した。
 今の時代、ネットは偉大である。少し調べるだけで必要な情報が手に入る。そして、同じように努力している人たちの存在も知れた。
 しかし私の場合、それだけでは足りなかった。
 だから、アイメイクに手を出す他なかった。
 いわゆる、マスク美人の欠点は全員が似た顔に見えることにある。そうなるのはひとえにアイメイク――それも流行りのデザインを施しているからだろう。
 つまり、頑張れば誰でも近づけるということ。
 もちろん、自分にあったアレンジは必須だ。加え、流行りのデザインを再現する腕も必要となる。
 なんせ、コロナの所為でタッチアップ――お店でメイクをして貰えなくなったからだ。
 結果、コロナの所為で化粧品の売り上げは落ちたらしい。
 一方、私はコロナ渦の今だからこそ必要だった。
 一応は他人の為に始めたオシャレだが、今では自分の為になっている。毎日自撮りをしていれば、努力がわかりやすく目に見えるのもいい。
 こんな時代だからこそ自分で自分を褒め、慰めることも大事だと思う。
 他人や社会への配慮と協力が必須の今だからこそ、何か自分の為に始めてみたりね。
 コロナを悪い言い訳にするのは簡単だけど、どうせなら前向きなことに使ったほうがいい。 
 今更かもしれないけど、コロナだから――といった具合に。

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色