【1991年】1位はヘアヌード写真集!?いったい誰の……

文字数 2,080文字

「えっ! この作品流行ったのってそんな前だっけ!?」

「この本って、この頃だったんだ!」


目まぐるしく変わる世の中ですが、その中で記憶され続けるのが名作というものです。

しかし、ときの流れは早いもので、過去のできごとの実際に起ったタイミングと、自分の実感にギャップがあることもしばしば。

そんなこともあって、昔のベストセラーをそのころの世の中と照らし合わせれば、驚きや懐かしさがわんさか出てくるのです。

さあ、????年のベストセラーについて語りましょう!

文:犬上茶夢
1991年のベストセラーはどんな作品?

過去のベストセラーを当時の世相を踏まえて紹介する本企画、第三弾のお題はバブル崩壊が始まったとされる1991年、いわゆる「失われた20年」幕開けの年です。


筆者は生まれて間もない頃でしたから、当時の記憶などあるはずもなく、さてどんな話をすればいいのやら。悩みながらも単行本のベストセラーリストを眺めてみると、昨今でもたまに目にする書名が目に入りました。


その名は『Santa Fe』(宮沢りえ/篠山紀信撮影)――日本で恐らく一番話題になり、また一番問題になったであろうヘアヌード写真集です。撮影当時の宮沢りえさんの年齢が焦点となり、児童ポルノについて語る文脈で触れられることも。単純所持に対する罰則の適用がスタートした2015年には特に話題になったのを覚えています。


その他のベストセラーを見ていると、『Santa Fe』同様に篠山紀信さんが撮影した写真集『water fruit』が8位にランクイン。他にも『だから私は嫌われる』(ビートたけし)や『タモリ・ウッチャンナンチャンの世紀末クイズ』)(笑っていいとも編)が上位に食い込んでいて、華やかなりし芸能界が世の中を動かしていた時代なんだなぁ、ということが良く分かるラインナップです。みんなが知っている人たちの本が売れている。ベストセラー10位の『宜保愛子の幸せを呼ぶ守護霊』(宜保愛子)だって著者は霊能力者でもあると同時にタレントですからね。


2位の『もものかんづめ』(さくらももこ)も象徴的です。今でこそ国民的アニメとして知られる『ちびまる子ちゃん』も、『りぼん』で連載が始まった頃はまだ大衆的な人気を獲得しているとは言い難い、知る人ぞ知る注目作といった立ち位置のマンガでした。「アニメで人気に火が付いた」の最も有名な例じゃないでしょうか?

もものかんづめ』はそんな作者の手による初のエッセイ。さくらももこさんはマンガも上手ければ文章もセンスに溢れるという、天が二物を与えてしまったのが良く分かる一冊で、その後も『さるのこしかけ』『たいのおかしら』などを立て続けに刊行し、エッセイ作家としての立ち位置を不動のものとしていきます。


じゃあテレビや芸能界とあまり関係なさそうなところでは何が売れていたのか? となるとやはりシドニィ・シェルダンが強い。大学時代、ミステリ小説系のサークルに入っていた頃にはあまり聞かない名前でもありましたが、1988年に刊行された『ゲームの達人(上・下)』はほとんど本を読む人間のいない我が家の本棚にも差さっていたのを記憶しています。専門家に刺さったかどうかはともかくとして、大衆的には爆発的に売れていたしウケてもいた(はず)。


1991年だけでも3位に『血族(上・下)』、5位に『時間の砂(上・下)』がランクイン、その後のベストセラーランキングにも当然のような顔をして食い込んでいます。テレビドラマ向けの脚本を書く作家であったからか、本国だけでなく日本でも先に挙げた『ゲームの達人』や『血族』などがドラマ化されているほどで……って、結局テレビの話に戻ってきてしまってる。

1991年は冒頭に掲げた日本経済の落ち込みのみならず、湾岸戦争の勃発やソ連の崩壊など、国内外問わず歴史の分岐点と言える一年であったはずですが、本のベストセラーからそうした世相が読み取れるのはまだ先の話。テレビ業界・芸能界の当時の影響力が伺えるランキングでした。

1991年(平成3年)の単行本ベストセラー

1 Santa Fe 宮沢りえ/篠山紀信撮影

2 もものかんづめ さくらももこ

3 血族(上・下) シドニィ・シェルダン

4 ノストラダムス戦慄の啓示 大川隆法

5 時間の砂(上・下) シドニィ・シェルダン

6 だから私は嫌われる ビートたけし

7 タモリ・ウッチャンナンチャンの世紀末クイズ 笑っていいとも編

8 water fruit 樋口可南子/篠山紀信撮影

9 ホーキングの最新宇宙論 S.W.ホーキング

10 宜保愛子の幸せを呼ぶ守護霊 宜保愛子

出典:『出版指標 年報 1992年版』

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