『天空の城ラピュタ』/ 木原浩勝
文字数 1,530文字
8月27日(金)から、『劇場版 アーヤと魔女』がいよいよ全国ロードショーされますが、夏休みの夜といえば、そう、ジブリ映画ですよね!
「物語と出会えるサイト」treeでは、文芸業界で活躍する9名の作家に、イチオシ「ジブリ映画」についてアンケートを実施。素敵なエッセイとともにご回答いただきました!
9月4日まで毎日更新でお届けします。今回は木原浩勝さんです。
『天空の城ラピュタ』
『天空の城ラピュタ』一択!
1986年8月2日公開。スタジオジブリデビュー作品にして宮崎駿監督初のオリジナル劇場長編アニメーション。
もうこの文字並びだけで私の心は高鳴ります。
当時、宮崎監督のオリジナル作品を待ち望んでいた誰しもが、いつ作ってくれるのかと待ち望んでいた最新作なんです。
少年少女が大活躍する冒険活劇。かつて天空に繁栄したという超古代文明、無敵のエネルギーを秘めたロボット。これらを付け狙う帝国と、世界制覇を狙うラピュタ人の末裔。さらにはどこにも組することなく金銀財宝を狙う空中海賊一味。
こんな複雑な設定や人間関係を一本の映画に纏めているんです。これが面白くないわけないでしょう!
ですが! 私が最も気に入っているのは、空中海賊ドーラ一家が駆る小型飛行艇”フラップター”です。私にとって『天空の城ラピュタ』はこのフラップターの大活躍を楽しむだけの映画といっても過言ではありません。
日本初の、いや世界初の昆虫式羽ばたき型の飛行物体。
その操縦に椅子なんかありません。立ったまま腰のベルトと機体をロープで固定するだけ。地上から垂直上昇し、あらゆる飛行形態を可能にした作り手の野心とアイデア性に溢れる影の主役です。
こんなにもスピーディーで、こんなにも画面の中で大活躍する飛行物体は、空前にして絶後だと思うのです。
まさに宮崎駿アニメの真骨頂といえるでしょう。
作品としてだけでなく、フラップターにだけ注目して映画をご覧になって下さい。そこにはきっと新しいアニメーションの楽しさが待っていると思います。
1960年、兵庫県生まれ。大阪芸術大学卒業。83年、アニメ制作会社トップクラフト、パンメディアを経て設立したてのスタジオジブリに入社。「天空の城ラピュタ」「となりのトトロ」「魔女の宅急便」などの制作に関わる。90年、スタジオジブリ退社後、『新・耳・袋』で作家デビュー。以降、「新耳袋」「九十九怪談」シリーズや、「現世怪談」シリーズ(『招かざる客』『開かずの壺』『現世怪談(一) 主人の帰り』『現世怪談(二) 白刃の盾』)、『禁忌楼』などの怪談作品を発表。また、怪談トークライブ「新耳袋」やラジオ番組「怪談ラヂオ~怖い水曜日」なども好評を博す。ジブリの現場を描いた感動のノンフィクション『もう一つの「バルス」 ―宮崎駿と『天空の城ラピュタ』の時代―』『ふたりのトトロ ―宮崎駿と『となりのトトロ』の時代―』が話題に。
あの名シーン「バルス」には、もう一つのアイデアが存在した!
「この作品が失敗したら、次回作はありません」宮崎駿監督が口癖のように呟いた言葉。スタジオジブリ創設第一作『天空の城ラピュタ』――宮崎監督と多くのアニメーターたちは、いかにプレッシャーと闘い、情熱を注いだのか。これまで語られたことのなかったスタジオ内での監督の素顔、制作過程、作品考察を交えて描くスタジオジブリの10ヵ月。感涙の極限ドラマを切り出したジブリファン必読のノンフィクション!