『りっぱな犬になる方法+1』/きたやまようこ
文字数 1,753文字
同業のパートナー、喜国雅彦さんとの共著『本格力 本棚探偵のミステリ・ブックガイド』で第17回本格ミステリ大賞受賞をしている国樹さんが、「犬の出てくる面白い本」をネタバレなしで紹介してくださいます!
大好評連載の第40回目は、きたやまようこさんの『りっぱな犬になる方法+1』です!
街中にクリスマスソングが流れ、あちこちにツリーやイルミネーションが。ああ12月だなと思います。
大好きな季節には大好きな本を紹介したくなりました。かつて一世を風靡したと言っても過言ではない、きたやまようこさんの『りっぱな犬になる方法+1』(理論社)です。
1992年に出版された『りっぱな犬になる方法』に、1994年出版の『イスとイヌの見分け方』をプラスし、2017年に改めて発売されたのが本作。それぞれ素晴らしい作品がひとつにまとまったのですから、楽しさ2倍どころか10倍くらいに感じます。
「しょうらい 犬になってみたいと おもっている人はいませんか?」
「これは そんな時 こまらないように 犬が おしえてくれた ちゃんとした犬になる 方法の本です。」
こんな不思議な文章から始まる第一章。可愛くあたたかな絵にまず目を引かれますが、犬が語ってくれているていの文章がたまらなく愉快なのです。しかも、あいうえお順で。
もちろん愉快なだけではありません。「ちゃんとした犬になる方法」ですから、現在進行形で犬と暮らす人たちが知っておくべき事柄が満載。食べさせてはいけないものや、体重の測り方等々、楽しく教えてくれます。
「ねむったときは ゆめを みて、おきているときは ゆめを もとう。」
時折こんな人生訓のようなものも。いい言葉だなと、繰り返しつぶやいてしまいました。
無事に「を」に辿り着いたら、第二章のスタートです。イスとイヌの違いを並べながら、その見分け方を伝えるのは難しいはず。
ですが、巧みなチョイスの連続で読者を納得させてくださいます。例えば「もじ」という項目。
「ひらがなで かくと イヌのほうが むずかしい。
かんじで かくと イスのほうが むずかしい。
カタカナだと ほとんど おなじ。」
犬が大好きな私も気にしたことがなかった見分け方に「その通りだ!」と激しく頷きつつ大笑い。
「がら」「ふとん」「こども」と、比較項目は多岐に渡ります。
「イスは たいせつにすれば いつまでも つかえる。
イヌは どんなにたいせつにしても いつかは しぬ。」
笑いながら読んでいたのに、心臓がズキリとしたのが「たいせつ」という項目でした。イスとイヌの大きすぎる違い。
優しい作者さまは、これについてのアンサーをちゃんと書いてくださっています。クリスマスにご家族で読み、生き物と暮らすことについて語り合うのも、聖夜にふさわしいかもしれませんね。
漫画描き。近年はエッセイも手がけている。ミステリとメタルと空手と犬が大好き。代表作に『こたくんとおひるね』『しばちゃん。』『犬と一緒に乗る舟』など。講談社文庫では、共著の『メフィストの漫画』などがある。2021年、極真空手参段に昇段。メタルDJもこなす。2017年に『本格力 本棚探偵のミステリ・ブックガイド』(喜国 雅彦と共著)で第17回本格ミステリ大賞受賞。
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