第2話 ショートショート「シンデレラ・アップデート」
文字数 2,913文字
むかしむかし、あるところに、シンデレラという女の子がいました。シンデレラはおさないころに母をなくしていて、まま母と、二人の姉とともにくらしていました。まま母と二人の姉はとてもいじわるで、シンデレラを学校にも行かせず、毎日めしつかいのように、みの回りのせわをさせていました。
ある日、シンデレラの家に、おしろでひらかれる、王子さまのぶとう会のしょうたいじょうがとどきました。しかしシンデレラは行かせてもらえず……
(中略)
……二人の姉も、そのガラスのくつをはこうとしましたが、足が大きすぎて入りませんでした。
そこでさいごに、シンデレラがガラスのくつをはきました。もちろん、ガラスのくつはシンデレラの足にぴったりでした。
「あなたこそが、きのうぼくとダンスをおどった女せいだったのですね!」
王子さまはかんげきして言いました。ガラスのくつをもってきた王子さまのめしつかいも「すばらしい、ついに見つかりましたね」とよろこんでいました。
「どうかぼくと、けっこんしてください」
王子さまは、シンデレラに言いました。
するとシンデレラは、「はい、よろこんで」とこたえ……るんじゃないかという、おおかたのよそうをくつがえし、こう言いました。
「あの、王子さま。あなたは、ゆうべダンスをした私のかおを、ぜんぜんおぼえてなかったんですよね? それで、足のサイズでようやく区別できるような男なんですよね? そんな人、信用できるとおもいます? じょうだんじゃないです。私、そんな男とけっこんする気はさらさらありません」
まわりのみんながぜっくする中、シンデレラはさらに言いました。
「そもそも私は、母と死別したせいで、学校にもかよえずに苦しい生活をしていました。そんなふこうな国民がいるにもかかわらず、あなた方はばく大なお金をかけて、ぶとう会をひらいた。あのぶとう会一回分のよさんで、私のような国民を何人すくえたでしょうか? そんなことも考えようとしないあなたは、私の夫いぜんに、そもそもこの国の王子としてふさわしくありません。いや、あなただけではなく、あなたの父おやの王も、ガラスのくつをもってノコノコついてきた、そこのめしつかいのれんちゅうも、この国のトップにいるべき人間ではありません」
「なんだと、この小むすめ……」
と言いかけた、王子のめしつかいが、ふとまわりを見て、いきをのみました。
いつのまにか、シンデレラの家のまわりには、まちの住民たちが何十人もあつまってきて、王子やシンデレラたちのようすを見つめていたのでした。
「そうだそうだ!」
「シンデレラの言うとおりだ!」
「ぶとう会だなんて、私もおかしいとおもってたわ!」
「おれたちびんぼう人に、高いぜい金をはらわせておいて、てめえらはゆうべみたいなぜいたくばっかりしてやがる!」
「ふざけんじゃねえぞ、くそったれが!」
「私たちはもう、がまんのげんかいだよ!」
次々にとんでくる国民たちのばせいに、王子と、たった三人のめしつかいは、おろおろするばかりでした。そのようすを見て、シンデレラは言いました。
「どうやら、国民のいかりも知らずに、ごえいの兵をつけず、まちまで下りてきたのが失ぱいだったようですね」
そしてシンデレラは、家のまわりにあつまった、おこった住民たちに向けて、一声さけびました。
「さあ、かくめいのはじまりだよ! みんな、やっちまいな!」
住民たちは、「うおおおっ」とおたけびを上げて、王子とめしつかいたちにおそいかかりました。そして「やめてくれえっ」となさけなくさけぶ王子たちをつかまえて、引きずり回し、ぼっこぼこに、ぎったぎたに、ぐっしゃぐしゃに、とてもじゃないけど子ども向けのどうわには書けないようなえげつないぼう力をふるい、さいごに王子たちをロープでぎゅっとしばりました。
「よし、それじゃ、一気にしろをのっとるよ! もうこいつらの好きにさせるもんか!」
シンデレラのかけ声に、おこった国民たちは「おお~っ!」とさけび声を上げました。そして、シンデレラを先とうに、ロープでしばった王子たちを引きずりながら、みんなでしろに向かってあるきました。民しゅうたちのかずは、みるみるふくれ上がっていきました。
一方、しろにいた王さまと、そのぶかたちは、とつぜんしろに向かってきた、何千人もの国民たちを見ておどろきました。
「おい、お前ら、何をしているんだ! これいじょう、王さまのしろに近づくのはゆるさんぞ!」
しろのごえいの兵たいが、しろの門の手前まできたシンデレラに向かって、やりをかまえました。しかしシンデレラは、まったくひるむことなく言いかえしました。
「私をころしてみろ。この王子もしぬことになるぞ」
シンデレラがそう言ってうしろをゆびさすと、兵たいたちはおどろきました。民しゅうにかこまれた王子とめしつかいが、きずだらけになってロープでしばられ、首もとにナイフをつきつけられているのを見て、何もできなくなってしまいました。
「お前たちがもっているぶきをすべて、われわれにわたせ。さもないと、今ここで王子は死ぬことになる」
「み、みんな、おねがいら、ぶきをわたひてくれえっ!」
ぼっこぼこになぐられて、はを何本もおられた王子が泣きさけんだ声を聞いて、兵たいたちはあわてて、ぶきをすべて手ばなしました。シンデレラについてきた民しゅうが、すぐにそのぶきを回しゅうしました。
さわぎに気づいた王さまも、しろの入り口から出てきました。
「な、何をしてるんだ! む、むすこになんてことを!」
おどろいて思わずこしをぬかしてしまった王さまに、シンデレラは言いました。
「お前のバカむすこは、われわれが人じちにとった。これからはわれわれ国民が、自分の手でせいじを行う。バカむすこをころされたくなかったら、言うとおりにしろ! 今すぐこのしろを明けわたせ! このくされげどうが!」
「は、はいっ!」
王さまは声をうらがえしてへんじをすると、シンデレラたちにしろを明けわたしました。
それからは、シンデレラがリーダーとなり、国のせいじを行いました。いきおいで国をのっとったかくめいかに、まともなせいじができるのかとうたがう人もいましたが、シンデレラはたくさんの国民たちのいけんを聞き、国会ぎいんをせんきょでえらぶ、民しゅしゅぎをどう入することに決めました。国会ぎいんの半分は女せいにすることもきめ、王ぞくの生活にかかるお金はけずりまくって、しょ民と同じレベルの生活をさせ、その分のお金をつかって、国民のふくしやきょういくやインフラをじゅうじつさせました。さらに、ぜい金のつかいみちをとうめい化し、シンデレラじしんも決してぜいたくはせず、民しゅしゅぎを定ちゃくさせて国家うんえいが安定してからは、次にせんきょでえらばれたリーダーにそのざをゆずりました。
こうして、シンデレラの国は、シンデレラがただ王子にくどかれてけっこんしたばあいよりも、はるかにすばらしい国になったのでした。こっちの方がよっぽど、めでたしめでたし。
ある日、シンデレラの家に、おしろでひらかれる、王子さまのぶとう会のしょうたいじょうがとどきました。しかしシンデレラは行かせてもらえず……
(中略)
……二人の姉も、そのガラスのくつをはこうとしましたが、足が大きすぎて入りませんでした。
そこでさいごに、シンデレラがガラスのくつをはきました。もちろん、ガラスのくつはシンデレラの足にぴったりでした。
「あなたこそが、きのうぼくとダンスをおどった女せいだったのですね!」
王子さまはかんげきして言いました。ガラスのくつをもってきた王子さまのめしつかいも「すばらしい、ついに見つかりましたね」とよろこんでいました。
「どうかぼくと、けっこんしてください」
王子さまは、シンデレラに言いました。
するとシンデレラは、「はい、よろこんで」とこたえ……るんじゃないかという、おおかたのよそうをくつがえし、こう言いました。
「あの、王子さま。あなたは、ゆうべダンスをした私のかおを、ぜんぜんおぼえてなかったんですよね? それで、足のサイズでようやく区別できるような男なんですよね? そんな人、信用できるとおもいます? じょうだんじゃないです。私、そんな男とけっこんする気はさらさらありません」
まわりのみんながぜっくする中、シンデレラはさらに言いました。
「そもそも私は、母と死別したせいで、学校にもかよえずに苦しい生活をしていました。そんなふこうな国民がいるにもかかわらず、あなた方はばく大なお金をかけて、ぶとう会をひらいた。あのぶとう会一回分のよさんで、私のような国民を何人すくえたでしょうか? そんなことも考えようとしないあなたは、私の夫いぜんに、そもそもこの国の王子としてふさわしくありません。いや、あなただけではなく、あなたの父おやの王も、ガラスのくつをもってノコノコついてきた、そこのめしつかいのれんちゅうも、この国のトップにいるべき人間ではありません」
「なんだと、この小むすめ……」
と言いかけた、王子のめしつかいが、ふとまわりを見て、いきをのみました。
いつのまにか、シンデレラの家のまわりには、まちの住民たちが何十人もあつまってきて、王子やシンデレラたちのようすを見つめていたのでした。
「そうだそうだ!」
「シンデレラの言うとおりだ!」
「ぶとう会だなんて、私もおかしいとおもってたわ!」
「おれたちびんぼう人に、高いぜい金をはらわせておいて、てめえらはゆうべみたいなぜいたくばっかりしてやがる!」
「ふざけんじゃねえぞ、くそったれが!」
「私たちはもう、がまんのげんかいだよ!」
次々にとんでくる国民たちのばせいに、王子と、たった三人のめしつかいは、おろおろするばかりでした。そのようすを見て、シンデレラは言いました。
「どうやら、国民のいかりも知らずに、ごえいの兵をつけず、まちまで下りてきたのが失ぱいだったようですね」
そしてシンデレラは、家のまわりにあつまった、おこった住民たちに向けて、一声さけびました。
「さあ、かくめいのはじまりだよ! みんな、やっちまいな!」
住民たちは、「うおおおっ」とおたけびを上げて、王子とめしつかいたちにおそいかかりました。そして「やめてくれえっ」となさけなくさけぶ王子たちをつかまえて、引きずり回し、ぼっこぼこに、ぎったぎたに、ぐっしゃぐしゃに、とてもじゃないけど子ども向けのどうわには書けないようなえげつないぼう力をふるい、さいごに王子たちをロープでぎゅっとしばりました。
「よし、それじゃ、一気にしろをのっとるよ! もうこいつらの好きにさせるもんか!」
シンデレラのかけ声に、おこった国民たちは「おお~っ!」とさけび声を上げました。そして、シンデレラを先とうに、ロープでしばった王子たちを引きずりながら、みんなでしろに向かってあるきました。民しゅうたちのかずは、みるみるふくれ上がっていきました。
一方、しろにいた王さまと、そのぶかたちは、とつぜんしろに向かってきた、何千人もの国民たちを見ておどろきました。
「おい、お前ら、何をしているんだ! これいじょう、王さまのしろに近づくのはゆるさんぞ!」
しろのごえいの兵たいが、しろの門の手前まできたシンデレラに向かって、やりをかまえました。しかしシンデレラは、まったくひるむことなく言いかえしました。
「私をころしてみろ。この王子もしぬことになるぞ」
シンデレラがそう言ってうしろをゆびさすと、兵たいたちはおどろきました。民しゅうにかこまれた王子とめしつかいが、きずだらけになってロープでしばられ、首もとにナイフをつきつけられているのを見て、何もできなくなってしまいました。
「お前たちがもっているぶきをすべて、われわれにわたせ。さもないと、今ここで王子は死ぬことになる」
「み、みんな、おねがいら、ぶきをわたひてくれえっ!」
ぼっこぼこになぐられて、はを何本もおられた王子が泣きさけんだ声を聞いて、兵たいたちはあわてて、ぶきをすべて手ばなしました。シンデレラについてきた民しゅうが、すぐにそのぶきを回しゅうしました。
さわぎに気づいた王さまも、しろの入り口から出てきました。
「な、何をしてるんだ! む、むすこになんてことを!」
おどろいて思わずこしをぬかしてしまった王さまに、シンデレラは言いました。
「お前のバカむすこは、われわれが人じちにとった。これからはわれわれ国民が、自分の手でせいじを行う。バカむすこをころされたくなかったら、言うとおりにしろ! 今すぐこのしろを明けわたせ! このくされげどうが!」
「は、はいっ!」
王さまは声をうらがえしてへんじをすると、シンデレラたちにしろを明けわたしました。
それからは、シンデレラがリーダーとなり、国のせいじを行いました。いきおいで国をのっとったかくめいかに、まともなせいじができるのかとうたがう人もいましたが、シンデレラはたくさんの国民たちのいけんを聞き、国会ぎいんをせんきょでえらぶ、民しゅしゅぎをどう入することに決めました。国会ぎいんの半分は女せいにすることもきめ、王ぞくの生活にかかるお金はけずりまくって、しょ民と同じレベルの生活をさせ、その分のお金をつかって、国民のふくしやきょういくやインフラをじゅうじつさせました。さらに、ぜい金のつかいみちをとうめい化し、シンデレラじしんも決してぜいたくはせず、民しゅしゅぎを定ちゃくさせて国家うんえいが安定してからは、次にせんきょでえらばれたリーダーにそのざをゆずりました。
こうして、シンデレラの国は、シンデレラがただ王子にくどかれてけっこんしたばあいよりも、はるかにすばらしい国になったのでした。こっちの方がよっぽど、めでたしめでたし。