【1986年】2年連続1位になったゲーム攻略本があるらしい

文字数 2,168文字

「えっ! この作品流行ったのってそんな前だっけ!?」

「この本って、この頃だったんだ!」


目まぐるしく変わる世の中ですが、その中で記憶され続けるのが名作というものです。

しかし、ときの流れは早いもので、過去のできごとの実際に起ったタイミングと、自分の実感にギャップがあることもしばしば。

そんなこともあって、昔のベストセラーをそのころの世の中と照らし合わせれば、驚きや懐かしさがわんさか出てくるのです。

さあ、????年のベストセラーについて語りましょう!

文:犬上茶夢
1986年のベストセラーは?

過去のベストセラーを当時の世相を踏まえて紹介する本企画、第五弾の年をいつにしようかと悩んでいると上野動物園のジャイアントパンダ「シンシン」が双子を出産したというニュースが飛び込んできました。ジャイアントパンダの繁殖は大変難しく、双子となるとさらに珍しいことです。ビッグニュースになるのもさもありなん。


調べてみると日本で初めてジャイアントパンダの繁殖に成功したのは1986年だそうで(誕生であればチュチュに次ぐ2例目)、当時生まれたフェイフェイとホアンホアンの子「トントン」はとてつもない人気者になりました。「トントン」効果で上野動物園の来園者数は一般公開開始1ヶ月で前年比2倍の42万人を記録し、NTTが「鳴き声」を聞けるテレホンサービスを実施したほど。名前の応募は約27万3千件で、この記録は2017年の「シャンシャン」誕生まで抜かれませんでした。というわけで、今回はパンダにあやかり1986年のベストセラーを取り上げてみます。前置きが長い!


当時の世相を見ると、1986年は経済的には「バブル景気」が始まり、世界に目を向ければチェルノブイリ原発事故が発生した年でありました。チェルノブイリはともかく、デフレ時代の到来を予測していた『日本はこう変わる』(長谷川慶太郎)が5位にランクインしているのは象徴的です。6位の『知価革命』(堺屋太一)も、工業社会から知価社会へシフトしていく世の流れを予見しており、なんとなく「これから世界が変わっていく」という予測は共有されていたのかなぁ……という気はします。


面白いのはここから先です。1986年のベストセラーはちょっと例年と顔ぶれが少し異なっていて、たとえば文芸系で上位に食い込んでいるのが『化身』(渡辺淳一)のみ。2位に『自分を生かす相性殺す相性』、そして8位に『運命を読む六星占術入門』(いずれも細木数子)が入っているのはまさしく世相というべきで、人気占い師になった細木さんはこの後テレビタレントとして躍進していきます。

気になるのは上位に食い込む「攻略本」の存在。『スーパーマリオブラザーズ 完全攻略本』(ファミリーコンピュータマガジン編集部編)は2年連続首位、3位に『スーパーマリオブラザーズ 裏ワザ大全集』(フタミ企画編)、9位に『ツインビー完全攻略本』(ファミリーコンピュータマガジン編集部編)と、ゲーム関連の書籍が3冊もランクインしています。

なぜこれほどの人気に? 少し時系列を少し遡ってみましょう。まず任天堂から「ファミリーコンピュータ」が発売されたのは1983年、その2年後にあたる1985年に『スーパーマリオブラザーズ』が発売され、とてつもないブームを巻き起こしました。


徳間書店から発売された攻略本『スーパーマリオブラザーズ 完全攻略本』は瞬く間に部数を伸ばし、世界的ベストセラーであったリー・アイアコッカの自伝『アイアコッカ わが闘魂の経営』を抜き去ります。そして同書は勢いを保ったまま翌年も売れ続けて2年連続ベストセラー1位になった、というわけですね。


1986年には『ドラゴンクエスト』も発売され、同年の新語・流行語大賞では「ファミコン」が銅賞を受賞。その熱狂が書籍の売り上げにも反映され攻略本が売れに売れたというのは、攻略本そのものの安さを考慮しても隔世の感があります。当時、年齢層問わず日本人が熱中したのはジャイアントパンダかもしれませんが、子供や若年層だとファミコンへの注目も凄まじかったのでしょう。


1986年(昭和61年)単行本ベストセラー

1 スーパーマリオブラザーズ 完全攻略本 ファミリーコンピュータマガジン編集部編

2 自分を生かす相性殺す相性 細木数子

3 スーパーマリオブラザーズ 裏ワザ大全集 フタミ企画編

4 化身(上・下) 渡辺淳一

5 日本はこう変わる 長谷川慶太郎

6 知価革命 堺屋太一

7 うつみ宮土理のカチンカチン体操 うつみ宮土理

8 運命を読む六星占術入門 細木数子

9 ツインビー完全攻略本 ファミリーコンピュータマガジン編集部編

10 大殺界の乗りきり方 細木数子

出典:『出版指標 年報 1987年度版』

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