第9回/蜘蛛を飼う
文字数 1,345文字

寂しい一人暮らしの夜のお供として、ペットを飼う方も少なくないでしょう。
例えば犬や猫。彼ら彼女らは、ただかわいくて孤独を癒やしてくれるのみでなく、「飼い主としての責任感」を芽生えさせ、退廃しがちな一人暮らしの習慣をキチッとしてくれる効果もある……らしいぜ!
犬や猫に合わせて生活リズムをまともにしたり、餌や排泄の管理、終電までに帰って様子を見るなど。生命を背負う重さのおかげで、飼い主の人間としての資質も向上していく……らしい!
「らしい」というのも、別に僕は犬や猫を飼ったことはないので、すべて知人たちの話でしかないからです。しかし、僕はタランチュラなら飼ったことがある。なので、蜘蛛が居る生活の話はできるのです。
まず、なんといっても蜘蛛は大人しい。動かない。ケースの中で薄い巣を張り、その中でじっと動かない。いっさいの音を発しない。餌として地面を跳ね回っているコウロギはうるさいが。蜘蛛は、自分の張った巣にコオロギが引っかかるのを無言で待つ以外の行動をしない。そのクールさがいい。虫に感情はない。
感情がないので、人間に慣れるということもありません。ひたすら本能のまま食事を繰り返すのみですから、たまに腕に乗せるくらいしか交流もできない。それも、向こうからすれば「場所」が移動したのみにすぎず、高い場所を目指そうとする本能のまま腕を駆け上がっていくのみ。「高さ」をうまくコントロールしないと、一気に顔まで登ってきてパニックになる方もおります。拳を天に突きあげることで、最も高い場所である拳の方へ誘導することで解決しましょう。蜘蛛の取り扱いは、それくらいしかありません。しかも、ストレスになるだけなので、できれば手に乗せる行為も控えるべき。
飼育方法も非常に簡単。温度だけ管理すれば、あとは水とコオロギを入れて放置。コオロギの追加も一週間に一回でいい。あとは、脱皮していたら皮を掃除するくらいでしょうか。たしかに「愛着」と呼ばれる思い入れが発生しなくもないが、犬猫のように互いが相手を認識してコミュニケーションすることは決してありません。つまり、一緒に住んでいるのに両者ともに孤独なのですね。
人間側は、最低限の餌と掃除だけするので、あとは巣からはみ出ている時に眺めるだけ。蜘蛛側は、餌と掃除のお礼に自身の姿を一瞬だけ見せる。それ以外は、僅かな音すら出さずに生活の邪魔をしない。慰めも愛情のかけらも発生しない。孤独と孤独のぶつかりあい。それが蜘蛛の飼育。
孤独を分け合うのでなく、お互いが孤独である事実だけが続く夜。そういう寂しさを共に体験させてくれる存在として、タランチュラは今夜もケースに張った巣の上でじっと獲物を待つのみ。

【キラキラのガイガンやキングジョーのソフビ】
怪獣ソフビは、未開封であるからこそ味があるのではと、開けずに保存しようと耐えていたのですが、やはりこのキラキラは直接見てからこそだなと決心して開封。宝石のような輝きに大満足です。