東大生本読みのおススメ「星に関する小説」10選

文字数 2,864文字

今、どんな作品を読んだらいいの?

そんな疑問にお答えするべく、大学生本読みたちが立ち上がった!

京都大学、慶應義塾大学、東京大学、早稲田大学の名門文芸サークルが、週替りで「今読むべき小説10選」を厳選してオススメします。

古今東西の定番から知られざる名作まで、きっと今読みたい本に出会えます。

七月である。夏である。


最も強固にノスタルジーと結びついた季節、夏。そして夏といえば星空である。七夕、大三角、天体観測……。星空のイメージは常に言いようのないノスタルジーを伴っている。それは夏という季節が本質的に持つ力であり、読書体験を引き立てる極上のスパイスでもある。

というわけで今回は「星」に関する小説を紹介したい。ジャンルはミステリ、SF、ライトノベル、児童文学まで豊富に揃えた。

(執筆:新月お茶の会)

新月お茶の会(しんげつおちゃのかい)/東京大学

ミステリ・SF・ファンタジーを掲げるエンタメ系総合文芸サークル。この情勢下でも地道に活動を続けて新入生を確保することに成功し、何とかサバイブ。会誌『月猫通り』の最新2171号(特集:ライトノベル新人賞回顧、ミステリ新刊回顧)はDLsiteで電子版販売。noteもやってます。

①『時を壊した彼女』古野まほろ
何度繰り返しても、彼の死だけが変わらない。

どうすれば不可解で理不尽な状況を打破できるのか、命がけのタイムリープ青春本格ミステリ。

何が起こったのか、なぜ悲劇が繰り返すのか、いくつもの謎が怒涛の論理でするすると紐解かれる快感はまさに本格の真髄であり、すべてが明らかになったさきに響き渡る高校生の彼らの慟哭が読者を強く揺さぶる。

②『星読島に星は流れた』久住四季
数年に一度、必ず隕石が落ちてくる島、星読島。

そこで毎年行われる天体観測の集いにて、参加者の一人が海に浮かんだ状態で発見される。

一見単純な殺人と思えたが、徐々に一筋縄ではいかないことがわかってくる。

深まる謎。

増える不合理、不可能、不可解。

それら全てを解き明かす鍵は、大胆にも登場人物の、ひいては読者の目の前に提示されている。

丁寧かつ鮮やかな謎解きと、余韻を残す結末が実に印象的な推理小説。

③『七つの海を照らす星』七河迦南
様々な事情を抱えた子供たちが暮らす児童養護施設・七海学園で起きる奇妙な事件の数々と直面する保育士の北沢春菜。

彼女は謎を通して子供たちと対面する。

三話目の「血文字の短冊」は離れて暮らす父とのすれ違いを描いた秀作だ。

思いがすれ違うときもあれば、伝えようとしたこと自体が時を越えて通じ合うときもある。

驚きと温かみに満ちた、屈指の連作推理短編集。

④『私たちが星座を盗んだ理由』北山猛邦
北山猛邦のミステリ短編集で、「恋煩い」「妖精の学校」「嘘つき紳士」「終の童話」「私たちが星座を盗んだ理由」の五編が収録されている。

意図的に現実感が省かれ、メルヘンチックな雰囲気で進む物語は、いずれも最後に意外な展開を迎えて終わる。

表題作「私たちが星座を盗んだ理由」は、病院で幼馴染に再会した「私」が、幼い頃、幼馴染が夜空から「首飾り座」を消して見せた謎と向き合う作品だ。

現実から逃げ、童話のような雰囲気にひと時浸るのも、悪くない。

⑤『天の光はすべて星』フレデリック・ブラウン
遅咲きの夢と恋の物語。宇宙開発の停滞した近未来、事故で片足を失った老齢の航空技師が、未亡人議員の力を借りて宇宙飛行を目指す。

ロマンを失った世界の中、孤独で、ともすれば身勝手な反抗を続ける主人公は、実に人間臭い。

周囲に支えられてこそ輝く夢と、その儚い結末は、綺羅星のように美しい。

巨匠フレデリック・ブラウンのウェットな筆付きが感傷的な、古典SFのいぶし銀だ。

⑥『星を継ぐもの』J.P.ホーガン
題名に「星」の字を持つSFを募れば真っ先に名前が上がるのが本作だろう。

ハードSF、そしてSFミステリの傑作である。化学、物理学、生物学、地質学、言語学……幅広い分野の科学理論が動員され、緻密ながらも大胆な仮説とその反証が積み重なっていく。

考察の果てに見えて来る景色の壮大さと言ったら、まさにSFというジャンルでしかなし得ない偉業だろう。

そのときあなたはこのタイトルに納得し、星に想いを馳せるはずだ。

⑦『プロジェクトぴあの』山本弘
数多の革命を起こす天才科学者にして、絶世の歌唱力を持つ稀代のアイドル。

そんなヒロイン・結城ぴあのに惹かれる者なら『プロジェクトぴあの』が最高のSF小説であることに同意してくれるはずだ。

舞台はサイバー化されたオタクカルチャーに覆われる近未来の秋葉原。

現代と地続きなオタクカルチャーと堂々たるハードSFガジェットが過剰な密度で詰め込まれ、宇宙への熱烈な恋が全てをまとめ上げている。

読み終わればきっと星空を見上げたくなる小説だ。

⑧「笹の葉ラプソディ」谷川流 『涼宮ハルヒの退屈』収録
ゼロ年代日常SFの傑作、涼宮ハルヒシリーズの短編。

『涼宮ハルヒの退屈』収録。一巻の前日譚にあたり、キョンとハルヒの数奇な出会いが描かれる。

七夕の準備をするSOS団のコミカルなシーンから始まり、このシリーズらしく、奇想天外で独創的に展開していく。

制服のハルヒが、深夜の中学グラウンドでラインカーを引きずる情景がノスタルジックで忘れられない。

あの頃、中高生だった人には是非読んで欲しい青春の一作。

⑨『銀河鉄道の夜』宮沢賢治
貧しく孤独な少年・ジョバンニ。

気が付くと彼は親友カムパネルラとともに銀河鉄道に乗っていた。

彼はカムパネルラと銀河の中を旅していく。

星というテーマで絶対に外せない本の一つ。

銀河という未知で壮大で神秘的な世界での旅には、だれしもワクワクすること間違いなし。

読み終わったら星座早見盤を眺め、彼らの旅したルートを辿ってみてはいかがだろうか。

⑩『星の王子さま』アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ
操縦士の「ぼく」は、不時着した砂漠の真ん中で一人の少年と出会う。

実はとある星の王子さまだという少年は、現在様々な星を旅している最中だという。

「ぼく」は、王子さまから彼の旅の話を聞くことになる。

星というテーマでは絶対に外せない一冊。

神秘的で高潔で素直な王子は、きらきら光る星が誰よりも似合う存在だ。

この星空のどこかに王子の故郷があるのだろうかと考えると、夜空を見上げるのが楽しくなってくる。

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