【2001年】世紀の変わり目、2つの金字塔がブームに

文字数 2,715文字

「えっ! この作品流行ったのってそんな前だっけ!?」

「この本って、この頃だったんだ!」


目まぐるしく変わる世の中ですが、その中で記憶され続けるのが名作というものです。

しかし、ときの流れは早いもので、過去のできごとの実際に起ったタイミングと、自分の実感にギャップがあることもしばしば。

そんなこともあって、昔のベストセラーをそのころの世の中と照らし合わせれば、驚きや懐かしさがわんさか出てくるのです。

さあ、????年のベストセラーについて語りましょう!


文:犬上茶夢

2001年のベストセラーはどんな作品?

過去のベストセラーを振り返って盛り上がるという本企画、今回は今から20年前の2001年です!


国内では4月に第1次小泉内閣が発足、世界に目を向ければ、なんと言っても9月11日にアメリカで同時多発テロ事件がありました。激動の新世紀の始まりと呼ぶにふさわしい一年です。

 

そんな2001年のベストセラー第1位は、スペンサー・ジョンソンの『チーズはどこへ消えた?』――2匹のネズミと2人の小人がチーズを追い求める様子を通して、変化に富んだ世の流れに適応していく方法を考えるビジネス寓話です。

他にもロバート・キヨサキ シャロン・レクター『金持ち父さん貧乏父さん』(4位)や堀場雅夫『仕事ができる人、できない人』(9位)、ケリー・グリーソン『なぜか、「仕事がうまくいく人」の習慣』(16位)など、ビジネス書のランクインが目立ちます。当時の失業率は5%台、デフレの進む世相が反映されたものと見ていいでしょう。

映画化でブームが加速した『ハリポタ』&『バトロワ』

文芸に目を向ければ、前世紀末から続く「ハリポタ」ブームが映画公開に後押しされて更に加速した年でもありました。第1作目となる『ハリー・ポターと賢者の石』が発売されたのは1999年12月のことですが、2001年時点では「賢者の石」「秘密の部屋」「アズカバンの囚人」の三作がベストセラー2位にランクイン。


 当時中学生だった私も、普段あまり本を読まない同級生とさえハリポタの話をしていたのを覚えています。ファンタジー小説の金字塔とも言える同シリーズのブームはその後も続き、今なお余熱が冷める気配もなく、2023年春には「としまえん」跡地にテーマパークがオープンするというから凄いものです。外伝の映画「ファンタスティック・ビースト」シリーズも当然のような顔で大ヒットしています。

 映画といえば、2001年のベストセラーランキングで面白いのは高見広春『バトル・ロワイアル』が10位にランクインしていること。刊行されたのは1999年ですが、2000年4月の西鉄バスジャック事件を筆頭に少年犯罪が問題視されていたという世相にも後押しされ、映画版は2000年12月に公開と相成りました。映画館に並ぶ行列は当時のニュースでも取り上げられました。
『バトル・ロワイアル』(高見広春)ってどんな作品?
『バトル・ロワイヤル』は極東の全体主義国家「大東亜共和国」を舞台とするデスゲームの金字塔。全国の中学3年生のクラスから50クラスを無作為に抽出し、互いに武器を持たせ「プログラム」と称する殺人ゲームを実施、生存者が1人になるまで殺し合いをさせるというものです。映画版では北野武演じるキタノの「今日は皆さんに、ちょっと殺し合いをして貰います」が印象に残ったという方も多いのではないでしょうか。


「バトロワ」の凄さは、そうした世相を反映した一過性のブームにとどまらず、数多くのパロディを生み出したところにあります。大人には批判的な目で見られていたイメージですが、若い人にはしっかりと刺さったんでしょうね。ちょっとアンダーグラウンドなインターネットの世界を見れば、自分の好きな作品のキャラクターで「バトロワ」のパロディをやるのが密かに流行っていました。まあ好きなキャラクターがひどい目に遭ったりすることもあるので原作同様万人におススメするものではありませんが、上っ面の過激さだけでウケた作品ではなかったのです。

「最後の一人になるまで争う」という発想自体はまあ、スーパーファミコン世代なら『ボンバーマン』で慣れ親しんだものではないかと思いますし、『PUBG』や『Apex Legends』が自然に受け入れられている今ではありふれた構造ですが、そういった作品の源流の一つが世紀の変わり目に生まれていたという事実は記憶にとどめておきたいものです。 


2001年(平成13年)単行本ベストセラー

1 チーズはどこへ消えた? スペンサー・ジョンソン

2 ハリー・ポターと賢者の石 ハリー・ポッターと秘密の部屋 ハリー・ポッターとアズカバンの囚人 J.K.ローリング

3 奇跡の法 大川隆法

4 金持ち父さん貧乏父さん ロバート・キヨサキ シャロン・レクター

5 新・人間革命(9・10) 池田大作

6 話を聞かない男、地図が読めない女 アラン・ピーズ他

7 十二番目の天使 オグ・マンディーノ

8 プラトニック・セックス 飯島愛

9 仕事ができる人、できない人 堀場雅夫

10 バトル・ロワイアル 高見広春

11 光に向かって100の花束 高森顕徹

12 市販本 新しい歴史教科書 西尾幹二ほか

13 声に出して読みたい日本語 齋藤孝
14 The Blue Day Book B.T.グリーヴ

15 模倣犯(上・下) 宮部みゆき

16 なぜか、「仕事がうまくいく人」の習慣 ケリー・グリーソン

17 プロジェクトX リーダーたちの言葉 今井彰

18 「みにくいあひるの子」だった私 梅宮アンナ

19 竹中教授のみんなの経済学 竹中平蔵

20 なぜ生きる 明橋大二ほか/高森顕徹監修 

21 ザ・ゴール E.ゴールドラット

22 経済のニュースがよくわかる本 細野真宏

23 灰夜 新宿鮫(7) 大沢在昌

24 中坊公平・私の事件簿 中坊公平

25 精霊流し さだまさし

26 ビストロスマップ 新世紀こだわりレシピ(1~4) ビストロスマップ制作委員会編

27 バターはどこへ溶けた? D.リップルウッド

28 新ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論(2) 小林よしのり

29 アー・ユー・ハッピー? 矢沢永吉

30 金田一少年の事件簿(9)邪宗館殺人事件 天樹征丸

出典:『出版指標 年報 2002年版』

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