◆No.2 主人公・吉弘鎮信

文字数 1,784文字

赤神 諒さんのデビュー作『大友二階崩れ』で描かれたのは、九州の大友家を揺るがしたお家騒動「二階崩れの変」。それから6年後に再び起きた争乱を描いた『大友落月記』が刊行となりました。策略、裏切り、寝返り……ドラマチックに展開する乱世の悲劇。その制作裏話を、著者が思い入れたっぷりに語ります!

本作の視点人物は、吉弘賀兵衛鎮信です。

大友ファンには知られていますが、全国的な知名度は低い戦国武将ですね。

前作『大友二階崩れ』の主人公吉弘鑑理の長男です。

大友宗麟の甥で、高橋紹運の実兄にあたる、まさしくサラブレッド。

宗麟のために茶器を買いに行ったり、最後に耳川合戦(高城合戦)で戦死する史実は有名ですね。


でも、本作の実質的な主人公は、叛乱を起こす小原鑑元と、これを討伐する戸次鑑連と言えます。この二人を対立軸に据えて、誰の視点で描くか。

等身大の人物を物語に放り込んで、その目線で英雄や悪人を描くほうが感情移入しやすいと私は考えました。前作からの連続性の点でも、吉弘鎮信が最適です。


鎮信の人物もほとんどわかっていないので、実はほぼオリキャラです。

(いつもそうだろ)

これから大友サーガに登場してくる彼の弟、高橋紹運は、戸次鑑連の向こうを張る英雄ですので、キャラのかぶりを回避する必要もあります。

(要するに、作者都合かよ)

古い軍記物ですと、登場人物が強い人間ばかりで、ちょっとワンパターンかも……という面もあるので、差別化の意味で頭脳系のお人好しキャラにしました。


ところで、「なぜ大友を書き始めたの?」とのご質問をいただきました。

このエッセイシリーズをすべて、くまなく読んでくださっている方からです。

ありがとうございます!

デビュー以来あちこちでお話をしてきましたが、ご要望にお応えして、改めて。



すでに何人もの大家が描いている織田信長や徳川家康。

もう、ええんちゃうの? という人も多いのでは。

(なんで、関西弁なんだ?)

名もなき新人のデビュー作に読者が付くか、相当疑問です。

そこで、あまりメジャーでなく、私が好きで、まだ描かれていない、面白そうな人物や事件がないか、北は北海道から探して行ったところ、大友家に行きついたわけです。

(そこまで南下してしまったのか)


小説を書くのは大変重い作業なので、好きな人物でなければとても最後まで書けません。

あ、この人書きたいと思っても、わりと最近書かれていたり……。

世の中すべてはご縁ですね。

大友家の歴史は脚色しなくてもそれ自体面白すぎるので、小説仕立てにすれば輪をかけて(?)面白くなります。これからも大友家にこだわって参ります!


▲耳川(高城)合戦跡地周辺(宮崎県)

■主な登場人物

吉弘賀兵衛(鎮信)(よしひろ・かへえ(しげのぶ)):重臣吉弘家の長子で、大友義鎮の近習。義鎮派。18歳。

小原鑑元(神五郎)(おばら・あきもと(じんごろう)):大友第二の宿将。肥後方分。他紋衆。宗亀派。

:鑑元の娘。16歳。

八幡丸:鑑元の嫡男。8歳。

田原民部(たわら・みんぶ):近習頭。義鎮の義弟で腹心。後の紹忍。25歳。

大友義鎮(おおとも・よししげ):大友家当主。後の宗麟。26歳。

田原宗亀(たわら・そうき):田原宗家の惣領。大友家中の最高実力者。

大津山修理亮(おおつやま・しゅりのすけ):肥後山之上衆の若き当主。

小井出掃部(こいで・かもん):小原家家老。

角隈石宗(つのくま・せきそう):大友軍師。

志賀道輝(しが・どうき):大友重臣。加判衆の一人。宗亀派。

田北鑑生(たきた・あきなり):大友重臣。筆頭加判衆。宗亀派。

仲屋:府内の豪商。おかみが取り仕切る。

戸次鑑連(べっき・あきつら):「鬼」と渾名される大友家最高の将。後の立花道雪

赤神 (あかがみ・りょう)

1972年京都府生まれ。同志社大学文学部卒業。私立大学教授、法学博士、弁護士。2017年、「義と愛と」(『大友二階崩れ』に改題)で第9回日経小説大賞を受賞し作家デビュー。同作品は「新人離れしたデビュー作」として大いに話題となった。他の著書に『大友の聖将『大友落月記』神遊の城』『戦神』『妙麟』『計策師 甲駿相三国同盟異聞』 村上水軍の神姫』北前船用心棒 赤穂ノ湊 犬侍見参』『立花三将伝』などがある。

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