『二週間の休暇〈新装版〉』/名久井直子

文字数 1,293文字

そう-てい【装丁・装釘・装幀】


書物を綴じて表紙などをつけること。

また、製本の仕上装飾すなわち表紙・見返し・扉・カバーなどの体裁から製本材料の選択までを含めて、書物の形式面の調和美をつくり上げる技術。

また、その意匠。装本。


『広辞苑 第七版』(岩波書店)より

プロのデザイナーが、「本」のデザインについて語るエッセイ企画『装幀のあとがき』。

今回は『二週間の休暇〈新装版〉』を担当していただいた名久井直子さんです。

フジモトさんとつくった本

フジモトマサルさんの『二週間の休暇〈新装版〉』は、2007年に出た『二週間の休暇』を、ハードカバーの新装版として、2016年にあらたに刊行したものです。


装丁のコンセプトもそのままで、影絵が層になっているような作りになっています。帯が一番手前の層として、カバーの表、カバーの裏、表紙の4層構造です。

お話は、彼の作品の中では長編と呼んでいいものだと思いますが、鬱蒼とした木々や、夢の中のような非現実感が印象深く、徐々に霧のなかに入っていくようなイメージで思いついたものでした。


パーツをいくつもフジモトさんに描いてもらい(数えたらa.tifからz.tif、zz.tifまであり、27個もありました)、それをわたしが構成していきました。ポットと鉄道はリクエストしたものでした。

最初の案はカバー、幅広の帯、通常の幅の帯が透ける紙に印刷されていて、重なるような仕様で、2パターン説明用のラフを提出したのでした(ラフが残っているのはわたしにしてはとても珍しいことです…)。

この案を気に入ってくれたフジモトさんは、

なくいさんが作ってくれた案は、「こんな風にしたい」という自分の漠然としたイメージ+α(ひとりじゃ思いつかない素晴らしい味付け)という感じの素敵ラフでした。

という有難いメールをくれました。元気づけられながら、仕事をすすめられたのを覚えています。


新装版では、穂村弘さんの解説がつき、「給水塔占い」も巻末に入りました。新たな読者の方々にも読んでもらうことができて本当にうれしかったです。


この8月に、4年ぶりの増刷(第5刷)となったのですが、最初の刊行当時から使用していた用紙が廃盤となっておりました。半透明に透ける紙の種類はあまり多くはなく、実は、最初に予定していたのに、予算の兼ね合いであきらめていた用紙に変更となりました。わたしが思っていた最初の形にできる日がくるなんて。フジモトさんに見てほしかったな。

名久井直子

1976年岩手県生まれ。武蔵野美術大学卒業後、広告代理店勤務を経て、2005年独立。ブックデザインを中心に紙まわりの仕事を手がける。第45回講談社出版文化賞ブックデザイン賞受賞。最近の仕事に『フジモトマサルの仕事』、『逆ソクラテス』(伊坂幸太郎)、『理由のない場所』(イーユン・リー)、『百年と一日』(柴崎友香)などがある。

Twitter:@shiromame

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