総評:堂場瞬一


「読むプロ」である編集者は、他社の本をどう読むのだろう——作家の素朴な疑問です。今回のPOP対決は、その一部が伺える面白い企画ですね。


昭和の刑事シリーズ、『小さき王たち』、どちらも長いスパンの物語ですが、POPになると雰囲気が違います


文字量たっぷりの早川版『焦土の刑事』、ビジュアルに振った講談社版『小さき王たち』。どっちもそそられる!……しかし「他社の宣伝」なんて、やっぱり無茶な企画だよね(笑)。


堂場瞬一(どうば・しゅんいち)

1963年茨城県生まれ。2000年、『8年』で第13回小説すばる新人賞を受賞。警察小説、スポーツ小説など多彩なジャンルで意欲的に作品を発表し続けている。著書に「警視庁犯罪被害者支援課」「刑事・鳴沢了」「警視庁失踪課・高城賢吾」「警視庁追跡捜査係」「アナザーフェイス」「刑事の挑戦・一之瀬拓真」「捜査一課・澤村慶司」「ラストライン」などのシリーズ作品のほか、『傷』『誤断』『黄金の時』『Killers』 『社長室の冬』『バビロンの秘文字』(上・下)『犬の報酬』『絶望の歌を唄え』『宴の前』『帰還』『凍結捜査』『決断の刻』『ダブル・トライ』『コーチ』『刑事の枷』『沈黙の終わり』(上・下)『赤の呪縛』『大連合』『聖刻』『0 ZERO』『小さき王たち』など多数ある。

幾多のベストセラーを生み出してきた作家・堂場瞬一。その手になる昭和を描いた大河シリーズが、早川書房、講談社から相次いで発売された。
書棚に置かれ、書籍の惹句などが手書きされた小さな紙片、通称「書店POP」。その一枚の紙きれが、時に全国的なベストセラーを生み出すこともある。

しかし、今回は早川書房の担当編集が講談社文庫の本のPOPを、講談社の担当編集が、早川書房の本のPOPを作成するのだ。そのうえ、POP界の巨匠にその優劣を決して頂き、著者の堂場氏にもご照覧頂くというのである。

敵に塩を送る、禁断ともいえるこの企画。まさに両社の威信を賭けた戦いでは全然ない。だが、ここから出版界のボーダーレス化が始まると言ったら過言であろうか。そう、過言である。