連作にすると決めて設定を作ったとき(二〇一七年)の段階では、今とはまったく違うラストシーンにするつもりでした。ですが、いよいよ最終章を書かねばならないとなったとき(二〇二〇年)に、ふっと気持ちが揺れたんです。本当にこの終わらせ方でいいのだろうか? あまりにも安易ではないか? 別のラストではいけないのか? 編集さんとも相談しましたが、自分の中で結論は出ませんでした。


最終章に関しては、他にも不安はありました。それはこの章ではじめて堀尾葉介が視点人物になるということです。これまでは、他人から見た堀尾葉介で、「圧倒的なオーラがある」とさんざん賞賛されてきました。ですが、葉介が自分自身の言葉で語るとなると、彼の真実の姿が明らかになってしまうわけです。


「さんざん凄いスターだとか言われてたけど、葉介、たいしたことないな」


「なんだよ、実はつまんない男だったんだな。がっかりだ」


読者にそんなふうに思われたらどうしよう、と本当に怖かったんです。


結局、不安と迷いを抱えたまま、とりあえず書きはじめました。土砂降りの雨の中、堀尾葉介は車の中で溺れそうだと感じています。陰鬱な出だしです。そのとき、ふっとあるシーンが頭に浮かんだんです。当初の計画とは正反対のラストシーンです。これだ、と思って慌てて書きました。それが現在のラストシーンです。そこからは逆算でした。あのラストシーンに持っていくために、物語を作りました。


本になった今、読み返してみて、しみじみ思います。やっぱり、このラストシーンで正解です。思い切って変更してよかった、と。

作品タイトル:【新刊インタビュー】

記事名:『雨の中の涙のように』刊行記念 遠田潤子 インタビュー

作者名:小説宝石  hosekikobunsha

|その他|連載中|1話|5,616文字

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