3分でわかる!『みとりねこ』(有川ひろ・著)

文字数 1,987文字

有川ひろさんの『みとりねこ』が文庫化!

興味あるけどどんなお話なのか、気になる方はこれを読めば大丈夫!

3分でわかる『みとりねこ』です。

有川ひろさん『みとりねこ』は、こんなお話!

文・構成:ふくだりょうこ

■7編の猫と人間の物語


「この世にかわいくない猫はおらん」


全くもってそのとおりである。猫だけじゃなくて、犬もハムスターもうさぎもインコもモルモットも……すべからく誰かに深く愛される動物はみんなかわいい。


有川ひろの最新小説集『みとりねこ』。

舞台化、ラジオドラマ化、映画化などもされた『旅猫リポート』の外伝2本を収録した計7本の猫の物語で構成されている。


猫の島と言われる武富島で出会った猫たち、妻が里帰り出産中に夫がこっそり拾ってきてしまった猫、勝手気ままに生きて自由が好きだった父にばかり懐くやんちゃな猫、猫又になりたかった猫……。

そこには人間から猫へ、猫から人間への愛が描かれていた。



■『旅猫リポート』をより深く愛せる外伝


主人である宮脇悟と暮らすナナ。ひとりと1匹仲良く過ごしていたが、病魔に侵された悟の時間は限られていた。ナナを愛して、引き取ってくれる人を探すために、銀色のワゴンに乗って旅に出る……という『旅猫リポート』。

外伝では、悟が子どものころに飼っていたハチの物語と、ナナとの旅の中で再会した恩師との物語が描かれている。


中学生のころに両親を交通事故で亡くした悟は、それまで兄弟のように暮らしていたハチを別の家族へ託さなければならなくなる。そんな悟をハチ目線で描いている。

新しい家族の中で、悟たちの記憶は薄らいでいく。が、ふとしたときに自分を「どんくさい猫」ではなく「おっとりした猫」と言ってくれていた悟のことを思い出す。

悟が会いに来てくれると聞いたハチは、到着を待ちわびる。それまではずっと家の中で過ごしていたのに、悟が迷子になっているかもしれない、と心配して外で彼の姿を探す。少しずつ、その行動範囲は広がっていって、やがて……。

悟の人生は短かった。その中で彼が出会った悲しい出来事はきっと人より少し多い。それでも悟はずっと優しく、朗らかだった。そんな彼の人柄を2匹の猫を通して知ることができる。悲しい出来事は多かったけれど、彼の人生は決して悲しいものではなかった。



■猫に愛されていると知ることができたならば


人間は猫が何を言っているかはわからない。猫はどうなんだろうか。意思疎通はできているけれど、猫からしてみれば「違うんだよ、わかってないなあ」というところかもしれない。

それでも、不思議なもので、人間が愛を持って接すれば、猫も愛で返してくれる。愛という言葉は出てこないけれど、それぞれの物語には、人間から猫への愛と、猫から人間への愛が描かれている。


愛と共に描かれているのは、「命」についてだ。残念ながら、猫の寿命は人間よりも短い。人間は猫よりも成長するのがずっと遅く、猫は人間より年老いていくのがずっと早い。

表題作の『みとりねこ』では、猫の浩太が一緒に育った人間の弟・浩美をみとりたいと願う。1日でいいから浩美よりも長く生きたい。そうすれば、浩美に自分が死ぬ姿を見せずに済み、浩美を悲しませずに済むから。そのためには猫又になればいい。妖怪だから浩美より長く生きられる。ただ、浩太は普通の猫だった。浩美は大人になり、浩太は年老いた。別れはやがてやって来る。


ペットを飼っている人の多くはこう思うのではないだろうか。

「ずっと一緒にいてね」「死ぬまでそばにいてね」「大好きだよ」

でも、遺していくのもつらい。

人間も猫も命ある中でどれだけ愛を大切にすることができるのか。改めてそんなことを考えてみるきっかけになるかもしれない。

世界が夢中!『旅猫リポート』『みとりねこ』、海外30カ国以上で100万部突破!


猫の時間と人の時間。
進み方は違うけれど、一緒にいる、今がいちばんの宝物。


猫の浩太は、桜庭家の次男坊・浩美とずっと一緒に過ごしてきた。三男猫扱いには不満だけれど、たったひとつの願いは浩美より一日だけ長く生きること。だから肉球はんこの練習にも日々余念がない。なんのためにって? それはーー。
表題作「みとりねこ」、『旅猫リポート』外伝2編を含む、7編、7匹の猫物語。

有川 ひろ(アリカワ ヒロ)

高知県生まれ。2004年『塩の街 wish on my precious』で「電撃ゲーム小説大賞」を受賞しデビュー。同作と『空の中』『海の底』の「自衛隊三部作」、「図書館戦争」シリーズ、「三匹のおっさん」シリーズをはじめ、『阪急電車』『植物図鑑』『県庁おもてなし課』『空飛ぶ広報室』『旅猫リポート』『だれもが知ってる小さな国』『アンマーとぼくら』など著書多数。2019年に「有川浩」より「有川ひろ」に改名、以降の著書に「倒れるときは前のめり」シリーズ、『イマジン?』『物語の種』がある。

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