②『イクサガミ 天』記念対談 今村翔吾✖山田竜平

文字数 3,065文字

作曲家・山田竜平が、「イクサガミ」をイメージしたオリジナル楽曲を書き下ろし!

幼少期からお互いを知り、今や小説と音楽、二つのエンタメの最前線を行く二人の夢のコラボレーション!楽曲制作を始めるにあたって、お二人に記念対談を行っていただきました。

――そもそも、お二人の出会いは?


今村:保育所が一緒やったんよな。


山田:そうそう、京都で。年は3歳違うから、かぶってはいないんだけど保育所は一緒。翔吾くんの弟と僕が幼なじみで、僕の姉や翔吾くんも含めて家族ぐるみでどこかへ遊びに行ったりする間柄でした。


今村:キャンプとかもよく行ったよな?


山田:今村家ともう一組、別の家族と仲良くさせてもらっていました。でも、僕が小学校2年生のときに、パン屋を営む父親の仕事の都合で奈良に引っ越したので、そこからしばらく空いてしまいました。その後、中学校に入ってやんちゃし始めるときぐらいに、弟さんと再会しました。確かその頃に、翔吾くんも中型免許取って、うちの実家に遊びに来てくれましたね。


今村:そう。愛車のドラッグスターで竜平の家にパンを買いに行って久々に会ったんや。


山田:そのときも僕だけじゃなくてうちの家族みんなに会いに来てくれた感じやったよね。


今村:うん。だから俺と竜平の関係が深くなったのはもう少し後、俺が20歳すぎぐらい。


山田:僕は音楽始めたときだから、18歳かな。


今村:その頃俺も音楽やっていましたので、音楽の専門学校に通って駆け出しやった竜平に、編曲してくれない?とお願いしてCDを作ったのが最初ですね。そのCDも5曲作るのに、1年以上かけて、だらだら作ってた。


山田:翔吾くんが土日、午前中うちに来てくれて。


今村:夜まで一切制作しないで割とエンドレスでしゃべるんよな?ひたすら。


山田:うん。宇宙の話とかしたよね。


今村:竜平って、よく「翔吾くん、宇宙ってどう思う?」とか聞くわけよ、俺に。今の世界情勢とか。


山田:僕は興味を持つ割に知識がないから、頭のいい人に分かりやすく説明してもらいたい。一方の翔吾くんは弁が立って説明が上手。


今村:そうやってずっと話して、夕方ぐらいに「ちょっとぐらいやらなな」って言って、夕方とか夜に1時間ぐらいやって、「今日、帰るわ」みたいなのが一年ぐらいずっと続いたよな。合間に竜平のおっちゃんのところのパン食べて。それから、CD制作が終わってからも会ったり電話したりするようになって、子どもの頃よりも濃い間柄になった。


――その後、山田さんはどのような活動をされたのでしょうか?


山田:24、5まで関西で色々と試行錯誤した後、26で上京して、デビュー作とは異なるのですが、つるの剛士さんの「はやぶさ」の作曲をさせていただき、山田竜平という人間の音楽性が世に発信できました。その後も色々と積み重ねて……。


今村:出世作は田中芳樹先生原作、荒川弘先生漫画のアニメ『アルスラーン戦記』の主題歌「翼」(藍井エイル)か。


山田:あとアニメ『バジリスク』の「桜花」だね。そういうアニメ音楽などを作曲して。あとはJ-POP。これも要はアニメ番組の主題歌とかエンディングなどですね。このあたりで状況が変わりました。でも、はじめのうちはまだお互いこんなになると思ってなかったよね。もちろん、「なろう」という思いはあったけど。


今村:むしろ逆よ。竜平のほうが先に自分の夢に進んでいて、俺のほうが二の足踏んでいた。でもそんなときもいつも竜平は、「翔吾くんは、やれば絶対成功するねんから、勇気持ってやったらいい」っていうのは昔から言ってくれてたな。


山田:だし、同じステージに来て欲しかった。だって、昔から本や歴史が大好きだったから。


今村:俺が30のときに小説家になる決意をして前の仕事を辞めたら、竜平がめっちゃ喜んでくれたのは覚えてるよ。


山田:めっちゃうれしかったから。デビューしてからの展開も、一般の方から見たらすごく早い駆け上がり方かもしれないけど、それまでの下積みやフラストレーションを知る僕にとっては、意外ではありませんでした。


今村:すでに己の道を行く竜平には、やりたいことがあるけど、それが具現化できなくて苦しんでいる姿も沢山見せてきたと思う。不安もデカかったけど、竜平は「絶対できる」ってずっと言い続けてくれた。だから俺がデビューしたときも、「ほらな。やればできるって、ずっと言ってたやん」みたいな感じやったな。


山田:僕は18のときにそれまで考えもしなかった音楽活動に出会って、それでもここまでやってきた。でも、翔吾くんは小さいときから志があった。それに、翔吾くんは小さいときから、何がどう転んでも一人で生きていけるタイプの人だと思っていたから。


――そんな中、なぜ今回、山田さんに音楽を作っていただこうと思ったのでしょう?


今村:そもそも竜平とは、いつでもこうしたコラボができる関係性ではありました。でも二人の暗黙の了解で、お互いがお互いの道である程度世間にも認められるようになってからやりたいね、というのがあって。それである程度二人ともプロとして一人前と言えるようになったかな、というタイミングで本作の話が来て、若い子にも読んでもらうために魅力的な音楽が欲しい、音楽といえば竜平じゃないか。ついにそのときがきたか!と思い立ちました。


山田:もっと後でもできたんだけど、お互い家庭ができて身動きができなくなる前に1回やりたかったというのもあります。もちろん40は40でまた何かあるかもしれないし、それぞれがステージを上げていく中で、ときどきこうしてコラボして切磋琢磨出来たら最高ですね。小説を読みながら聴けるような音楽を作りたいって、もともとのイメージはどこから?


今村:これは俺の発案です。俺、ふだんこのキャラクターはこの音楽だ、とか聴き分けながら小説を書くんよ。そういうのもあって、俺の中にあるこの小説のテーマ曲のイメージが読者と共有できたら、もっと俺の見せたい映像が頭に浮かんでくれるんではないか、と。


山田:簡単に言えば小説の主題歌ってことよね。


今村:そう。音楽の力を借りれれば、ふだん歴史小説を手に取らない若者にも手に取ってもらえるんじゃないかな、と。


山田:それじゃあ、気合を入れて作らせてもらいますね。


今村:ありがとう。めちゃくちゃ楽しみにしてます!


今村翔吾(いまむら・しょうご)

1984年京都府生まれ。2017年『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』(祥伝社文庫)でデビュー。’18年『童の神』(角川春樹事務所 時代小説文庫)が第160回直木賞候補に。’20年『八本目の槍』(新潮社)で第41回吉川英治文学新人賞を受賞。同年『じんかん』(講談社)が第163回直木賞候補に。’21年「羽州ぼろ鳶組」シリーズで第六回吉川英治文庫賞を受賞。’22年『塞王の楯』(集英社)で第166回直木賞を受賞。他の著書に、「くらまし屋稼業」シリーズ(角川春樹事務所 時代小説文庫)、『ひゃっか』(文響社)『てらこや青義堂 師匠、走る』(小学館)がある。


山田竜平(やまだ・りゅうへい)

1988年生まれ、奈良県出身。高校卒業時に音楽の道へ進むことを決意し、専門学校で作曲、編曲を学ぶ。その後、藍井エイル「翼」(TVアニメ「アルスラーン戦記」オープニングテーマ)、「鼓動」 TVアニメ「バックアロウ」(2ndクールオープニングテーマ)、水樹奈々「HOT BLOOD」 TVアニメ「バジリスク〜桜花忍法帖〜」(エンディングテーマ)など映像作品との親和性の高い作品を生み出している。

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色