青木崇高×麻見和史 「公安分析班」シリーズ、ドラマ化&文庫化記念対談①

文字数 3,678文字

ドラマ化もされ、累計70万部超! 麻見和史さんが手掛ける大ヒット警察小説「警視庁殺人分析班」シリーズ。

その対となる「警視庁公安分析班」シリーズ(『邪神の天秤』『偽神の審判』)がついに文庫化、さらに2月からドラマが放送されることになりました!

文庫化&ドラマ化を記念し、主人公・鷹野秀昭を演じる青木崇高さんと麻見さんの対談が実現!

作品への思いやキャラクターの魅力について――大菜ボリュームの内容を2日間連続で大公開します!!



構成:根津香菜子  写真:村田克己

鷹野と言えば青木さん以外考えられない



──今作では、刑事部から公安部へ異動し、今までとは違う捜査方法に悩む鷹野が、これからどういう風に事件に向き合っていくのかが見所のひとつですが、青木さんが鷹野を演じてみた感触はいかがでしたか。


青木 今作では、慣れ親しんだ捜査一課のみんなから離れて公安部に行くということで「同じ警察の中でも事件に対してこうもアプローチが違うのか」といった戸惑いを僕自身もとても感じました。服装も、今までは黒スーツにグレーのシャツが鷹野の定番でしたが、今回はグレーのスーツに白シャツで、初めてドラマの衣装合わせをしたときに「これを鷹野が着るの?」という違和感があったんです。その違和感みたいなものは、きっとドラマの中で鷹野も感じるものなんじゃないかと思い、この感覚は大切にしておこうと思いました。


──麻見さんは青木さんが演じる鷹野をはじめ、ご自身が描かれた登場人物が実際に「生きている」姿をドラマでご覧になっていかがでしたか?


麻見 嬉しかったですね。私は普段、頭の中で記号的にキャラクターに名前をつけていて、ストーリーを進めるために「この人にはこの場面でこのセリフを言わせて」と、作者の都合で進めていた部分があったんです。でもドラマにしていただいたときに、脚本家の方が自然な流れでセリフに落とし込んでくれて、それを監督さんが演出して、俳優さんたちがしっかり理解した上で表現なさっているのを見て、やっぱり映像というのはすごい力を持っているなと思いました。初めてドラマ化していただいたのが『石の繭』(2015年放送)でしたが、その後シリーズが進み、作品を書いていくうちに「鷹野」と言えば青木さんのお顔が頭に浮かぶようになったんです。


青木 それは嬉しいです。ありがとうございます。


麻見 それまでは「のっぺらぼう」のような感じで人形みたいに動いていたのが、一気に色がついたというか。そこが生きている人が演じてくださるところの面白さですよね。


青木 鷹野に「おい青木、近づいてくんじゃねぇよ」なんて思われたりして(笑)。


麻見 むしろ私の方がどんどん青木さんにすり寄っちゃう感じで(笑)。初期のころはまだキャラクターがうまく固まっていない部分もあったのですが、『石の繭』のドラマを観てからは「青木さんが鷹野を演じるんだったらこういうセリフまわしになるだろうな」と少し影響を受けているところがありますね。


青木 登場人物たちのビジュアルが肉付けされて動き出す、ということなんですね。


麻見 そうなんです。ドラマを作っていただいたからこそ、そこから刺激を受けて次の作品を続けられるというところもありますので、私の方もすごく勉強させてもらっています。

鷹野は風変わりだけど、純度の高い男



──青木さんは、「殺人分析班」、「公安分析班」とシリーズを通してこれまで鷹野を演じていらっしゃいますが、本作の魅力はどんなところにあると思いますか?


青木 このドラマを観てくださっている方から、よく「没頭できる」、「気が付けば『あぁ、もう終わりなんだ』と一気見してしまう」という感想を聞くんですよ。息つく暇もないところが作品の魅力だと思うんですよね。それはやはりベースにある麻見先生の原作のストーリーの面白さがあるからこそで、それが僕らのモチベーションにもなっているし、現場のモチベーションになっています。


麻見 それだけ俳優さんたちの熱量が凄いんだと思います。キャスト、スタッフの方々が全力で作ってくださったものですからね。本当にありがたいです。


──青木さんご自身も鷹野の大ファンでいらっしゃるそうですが、青木さんが思う鷹野の魅力とはどんなところでしょうか。


青木 風変わりというか、何を考えているのか分からないっていうだけでちょっと魅力的な部分はありますよね。彼の事件の真相を追い求める姿勢は本当に純度が高いと思います。他の人から見たら不思議に思えたとしても、彼は彼なりのアプローチをちゃんと持っているから、鷹野と一緒に行動していると周囲も彼の純度に感化されるのでしょうね。

 それに鷹野は聞き込みでいろんな人の話をちゃんと聞いて記憶している。そういう基本的なことをちゃんとする人間だし、班や組織の中で理不尽なことがあったときは、自分なりの意見を持って行動する。そういう意味では、すごく平等で公正な価値観を持っていると思います。それを突き動かすのが、真相に辿り着くことへのモチベーションにつながっていっているんじゃないかな。ただ真面目なだけだとドラマとしても面白くない部分があると思うので、現場でデジカメをガチャガチャ使っているようなところが鷹野の人間味あふれるところで面白いし、キャラクターとしても見せ方としても、心に残る部分なんじゃないかなと思います。


麻見 鷹野が捜査中によくデジタルカメラで撮影するとか、トマトジュースを飲んでいるっていうのは、キャラクターの特徴づけのために原作の方でやったんですね。それをドラマの中でも忠実に再現してくださることで「こいつは風変わりなやつなんだな」と感じてもらえるようになったのだと思います。


(続く)



※本対談は、『偽神の審判 警視庁公安分析班』(講談社文庫)に収録されたものです。

気になる続きは、明日公開!!

乞うご期待!!

青木崇高(あおき・むねたか)

1980年、大阪府生まれ。映画やドラマを中心に活動。主な出演作に、NHK連続テレビ小説「ちりとてちん」、NHK大河ドラマ「龍馬伝」、「平清盛」、「西郷どん」。映画「るろうに剣心」シリーズなど。映画『99.9-刑事専門弁護士- THE MOVIE』が公開中。また、ドキュメンタリー番組「セブンルール」(カンテレ・フジテレビ)ではMCの1人を務める他、2022年NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では木曽義仲役で出演。俳優業のほかにも、イラストや映像制作など活躍の場を広げている。

麻見和史(あさみ・かずし)

1965年千葉県生まれ。2006年『ヴェサリウスの柩』で第16回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。『石の繭』『蟻の階段』『水晶の鼓動』『虚空の糸』『聖者の凶数』『女神の骨格』『蝶の力学』『雨色の仔羊』『奈落の偶像』『鷹の砦』『凪の残響』『天空の鏡』『賢者の棘』と続く「警視庁殺人分析班」シリーズは、映像化され人気を博し、累計70万部を超える大ヒットとなっている。また、『邪神の天秤』『偽神の審判』と続く「警視庁公安分析班」シリーズも2022年2月にドラマ化が予定されている。その他の著作に『警視庁文書捜査官』『永久囚人』『緋色のシグナル』『灰の轍』『影の斜塔』『愚者の檻』『銀翼の死角』『茨の墓標』と続く「警視庁文書捜査官」シリーズや、『水葬の迷宮』『死者の盟約』と続く「警視庁特捜7」シリーズ、『擬態の殻 刑事・一條聡士』『無垢の傷痕 本所署<白と黒>の事件簿』などがある。

「連続ドラマW 邪神の天秤 公安分析班」

2月13日(日)スタート!

毎週日曜午後10時放送・配信(全10話)


青木崇高 松雪泰子 徳重聡 小市慢太郎 福山翔大 瀧内公美 奥野瑛太

渡辺いっけい 段田安則 菊地凛子 筒井道隆


[第1話無料放送]【WOWOWプライム】

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大好評発売中<警視庁公安分析班>シリーズ!
『邪神の天秤 警視庁公安分析班』(著:麻見和史)

内臓が取り出された惨殺遺体。心臓と羽根が載せられた天秤が意味するものは――?

現場に残された矛盾をヒントに、猟奇犯の正体を追え!


都内で爆発事件が発生、直後に有力政治家が殺害された。遺体からは内臓が抜かれ、心臓と羽根を載せた天秤が残されていた。公安部に異動してきた刑事・鷹野秀昭は、持ち前の推理力で事件に挑むが、組織犯罪を疑う公安のやり方に馴染めない。苦悩する鷹野は猟奇犯に迫れるのか。緊迫のサスペンス・ミステリー!

『偽神の審判 警視庁公安分析班』(著:麻見和史)

現場に残された矛盾こそが、「真実」を手にするためのヒントだ!

「公安警察」対「殺し屋」 手に汗握る激闘の行方は――!?



殺人現場に残される心臓と羽根の載った天秤。有力政治家と大学教授が殺害された二つの事件に見え隠れするのは、公安が長年追ってきた殺し屋「鑑定士」の存在だった。殺人を依頼したと思われる組織の情報を得るため、鷹野秀昭は一般人を協力者(スパイ)として潜入させるよう命じられるが――。手に汗握る公安ミステリー!

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