『QED 神鹿の棺』刊行! 高田崇史さんコメント

文字数 1,599文字

高田崇史さんの大人気シリーズ「QED」の最新刊『QED 神鹿の棺』が講談社文庫より刊行!

そこで著者・高田崇史さんから刊行によせてコメントをいただきました!

 最近「常陸」という地名が読めない若者が多くなっているという話を耳にしました。しかし、考えてみれば「常陸」がどうして「ひたち」と読めるのか不思議ではないでしょうか。「常」の文字には「ヒ」「ヒタ」という読みはありません。「常陸」を「ひたち」と読める我々の方が間違っているような気すらしてきます。


 また、地名の語源に関する色々な説明にも目を通しましたが、やはり納得がいきません。この「常陸」という名称は、一体どこからきているのか……。


 今回は、その「常陸国一の宮」――茨城県の「鹿島(かしま)神宮」の話です。


 平安中期に編纂された、官弊社の一覧『延喜式(えんぎしき)神名帳(じんみょうちょう)』には「神宮」と号された社が、たった三社だけ記載されており、一社はもちろん伊勢国の「伊勢神宮」。残りの二社は、常陸国の「鹿島神宮」と下総(しもふさ)国の「香取(かとり)神宮」。


 熱田神宮も石上(いそのかみ)神宮も平安神宮も、もちろん出雲大社も大神(おおみわ)神社も「神宮」と呼ばれていなかった時代に、何故、京から遥か遠く離れた東国のこの二社が「神宮」という特殊な地位にいたのでしょうか。


 その理由に関してさまざまに述べられていますが、全て明らかに後づけです。当時はもっと論理的で、そうせざるを得ない理由があったのです。


 そもそも「鹿島」という名称が、どこから来ているのか? 


「鹿の島」というのは一体どういうことなのか……。


 しかも鹿島・香取の二神宮に、やはり常陸国に鎮座する息栖(いきす)神社を加えると「東国三社」となり、見事な「直角二等辺三角形」を作り出します。現在では「東国三社パワースポット」として一般の方々にも大変人気のようですが、そもそも誰が何のために、この場所に「直角二等辺三角形」を作ったのか?


 もちろん、偶然にそうなったわけではありません。そこには間違いなく「何者か」の「ある意図」が働いていました。というのも、鹿島神宮と息栖神社は同じ年にわざわざ現在地に遷座されているからです。


 その意図は一体何なのでしょう。この場所に「直角二等辺三角形」を作らなくてはならないと考えた理由は? 追求して行くと、とんでもない事実にぶち当たりました。正直ぼくも「まさか」と思わず目を疑ってしまうほどでした。


 茨城県は、余り人気がないという話も聞きます。しかし、この常陸国には鹿島・息栖だけではありません。


大洗(おおあらい)磯前(いそざき)神社」「酒列(さかつら)磯前神社」「大甕(おおみか)倭文(しとり)神社」「(しず)神社」などなどの、長い歴史と謎に満ちた神社が数多く存在しています。余りに素晴らしいので、かえって悪口を叩かれているのではないかと邪推してしまうほどです。


 今回は、長い間、眠られていた神々を揺り起こしてしまったような気もしています。少し恐ろしいこの旅に、ぜひ皆さまもおつき合いいただければ幸いです。


高田崇史(たかだ・たかふみ)

昭和33年東京都生まれ。明治薬科大学卒業。『QED 百人一首の呪』で、第9回メフィスト賞を受賞し、デビュー。歴史ミステリを精力的に書きつづけている。近著は『古事記異聞 陽昇る国、伊勢』『江の島奇譚』『猿田彦の怨霊 小余綾(こゆるぎ)俊輔の封印講義』など

QED最新作!

茨城県山中の寂れた神社で大瓶に入った白骨死体が発見される。

その話を友人の小松崎から聞いた桑原崇は、由緒不明の神社の祭神に興味を抱き、茨城へ。
彼らが現地に到着する前に新たな遺体が瓶のなかから発見されたという報せが。
「水死かな」
次の事件を予見する崇の目に見えているものとは? 

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