「ペンは日本刀よりも強し?」歴史小説が読みたくなる動画はこれ!

文字数 990文字

縄田一男とキツネ的幻獣による、亜空間書評番組。

「縄田一男のもののふ書評」。謎が多い番組である。


その内容は「歴史・時代小説書評の第一人者である縄田氏による書評番組」ということになる。きわめて真っ当。そこに不思議はない。


だが、まず共演者がおかしい。キツネなのである。「ブンちゃん」などと称しているが、有り体に言えば、キツネようのぬいぐるみである。


それが縄田氏に頓珍漢な質問をする。たとえば「吉原ってなに?」といった類の質問だ。カマトトが過ぎるが、それに丁寧に答える縄田氏の優しさには心底、頭が下がる。


それどころか、ときに縄田氏は、このキツネの頭を愛し気に撫でたりする。いたいけな子どもが初めて夏の特番で『世にも奇妙な物語』を見た夜の夢は、こんな感じではなかろうか。


もう一つ。番組中、縄田氏は、平手造酒よろしくずっと日本刀を抱えている。その意味が分からない。だいたい、縄田氏の衣装は白シャツに赤い蝶ネクタイなのだ。そこに、古風な拵えの日本刀。時空の歪んだ出鱈目な演出を黙って受け入れている縄田氏には、心底、頭が下がる。


どうやら「ダメな本を成敗するための刀」という設定らしい。だが、そもそも番組で紹介される本は、縄田氏が惚れ込んだ逸品ばかりなのである。縄田氏が、読んで「男泣きに泣いた」り、「直木賞の候補に入らなきゃおかしい」と考える優れた作品を紹介しているのだ。


刀が抜かれることはあり得ない。

『八本目の槍』

今村翔吾

むしろ、縄田氏が突如抜刀して妖狐の首を飛ばす、というような展開を期待したくなるが、優しい縄田氏は、そんなことはしないのである。そして、たぶん、模造刀である。


さらに不思議なことがある。毎月60冊あまりの歴史・時代小説を読むという縄田氏。そんな縄田氏が、今も読書して男泣きに泣き(それもしばしば、なのだ)、その楽しさをキツネ風情にまで伝えようとしてくれている。そして若き日に読んだ『燃えよ剣』について熱く語り、新しき司馬遼太郎、岡本綺堂、隆慶一郎の登場を渇望してやまない。


こんな縄田氏の姿を見るとき、歴史・時代小説の尽きせぬ魅力の不思議を、感じずにはいられないのだ。

BundanTV:「次、何読もう?」をコンセプトに、本にまつわる楽しい動画をYouTubeの片隅から配信している。毎日更新。


(Written by BudannTV編集部)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色