KADOKAWA×講談社 2020年の激押し作家・伊兼源太郎②

文字数 1,978文字

KADOKAWAと講談社、2つの出版社の垣根を越えて語られる伊兼作品への愛!

つもる話は、キャンペーン中の4作品に広がっていき――


白熱の60分、中編スタートです!



伊兼さんを読むなら、まずこの4冊!(前編)





編集N 4ヵ月連続刊行の作品(『事件持ち』『地検のS』『地検のS Sが泣いた日』『事故調』)もお互いに読んでいますが、Tさんは『事件持ち』、どうでしたか?



編集T めちゃくちゃおもしろかったです! 先のお話にもあったように、伊兼さんの記者経験のすべてがここに込められているじゃないですか。その迫力というか、気迫というか、伊兼さんの熱意が凄い伝わってきて、痺れました……!



編集N 情報が散乱している今、「どうして新聞なの? ネットニュースでいいじゃん」という人もたくさんいると思います。それでもやっぱり事件の被害者などを直接取材して、その言葉を新聞が届けることに意味があると、僕自身、同じマスコミの人間として突きつけられましたし、ネットニュースなどで満足してしまっている今の人たちにも、新聞ってこういうところがやっぱり生き残っていくべきところだというのを、突きつけているんじゃないかなと思います。



編集K 新聞も警察も批判されることが多い組織で、すごく悪いイメージで「マスゴミ」と言われることもあります。ただ『事件持ち』はいい面も悪い面も両方ちゃんと書いていますよね。



編集T 『事件持ち』ですごくいいなと思ったのは、そうやってよくバッシングを受ける記者だったり、警察の人だったり、そういった人たち自身が問いに答えようとしているところです。批判は、もちろん外側からたくさんあるんですが、恐らく、中にいる人たちが一番自分たちの問題をよく分かっている。中にいて葛藤や矛盾を抱えつつ、その人自身が答えを出していこうとする姿勢がすごくいいなと思いましたし、伊兼さんからのエールというか、伊兼さんの「信じている、託しているんだぞ」という思いを感じました。それだけに、ラストがとても心に沁みました。



編集K ある意味、伊兼さんってすごく厳しい方だなって、作品を読んでいて思うこともあって。どの作品にも、組織の中で保身に走る人が絶対に出てくるじゃないですか。そういう人たちにも家族がいて……みたいな感じで、言い訳はできる立場にいるんですけれども、伊兼さんの作品の中では何度も、根本的に「これでいいのか」という質問が続くじゃないですか。保身に走る理由も書きつつ、やっぱり「目を背けることを許さない」っていうところは何度も反復していて。



編集N 確かに登場人物たちに対して厳しいのかもしれませんね。



編集K でも、その悪い面だけを描かないというところに優しさもある。多面的な描き方も、伊兼さんの人間ドラマの持ち味につながってくるところかもしれませんね。



編集N 文庫『事故調』は8月刊ですが、単行本は2014年に刊行されていて、ドラマ化もされています。人工海岸の穴に子供が落ちてしまって――と、スタートはすごく社会派。で、市の広報課の黒木が事件を追っていく中で、市の方から自分たちに不利にならない、さきほど「保身」という話がありましたけど、不利な証拠が出ないように情報操作をしろと命令される中での葛藤を描いていきます。海岸の事故は、誰かが手を抜いて、何かをしなかったから起きた事故。黒木自身は元刑事で、その辞めた理由は実は……、ネタバレなんで言えないんですけど()、同じような問題を抱えている。事件そのものと黒木個人の問題がすごくリンクして、その二つが一緒になってストーリーが進んでいく。最後、止まっていた黒木が、昔の自分を取り戻すじゃないですけれども、市の役員たちにぶつかっていくところの爽快感たるや!



編集T めちゃめちゃわかります!



編集N ラストは必見です。これがデビュー2作目というんだから恐ろしい……。



今回登場した書籍はコチラ!



『事件持ち』


「正義」を忘れた全ての人へ。報道・捜査の信念を描くミステリー!

報日新聞記者・永尾哲平は猟奇的な連続殺人事件の取材を始める。捜査情報をつかめず苛立つ記者クラブは県警批判を開始。手掛かりを得られない県警はある取引を報日新聞に持ち掛ける。記者の永尾と県警一課の刑事・津崎庸介。二人は交錯する二つの使命に揺れ動く。


角川書店  定価:本体1700円(税別)





『事故調』


組織か、正義か。

過去の痛みを抱えた元刑事の再生を描く人間ドラマ。

人工海岸が陥没し、男児が意識不明の重体になる事故が発生。市役所職員に転職した元刑事の黒木は、被害者家族と事故調の窓口役を任されるが……。


角川文庫  2020年8月25日発売



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