老若男女と寝る淫らでヴァージンな魂。変態が官能小説に見た貞操。
文字数 947文字
リーラ・セフタリ『背徳の聖女』
世の中には貞操観念が発達した人が実にたくさんいるものだ。
そんな自称清潔な人たちが、性に奔放な人、性風俗、挙げ句の果てには他人の不倫にまで口うるさくお説教する。
だけどそんな世界線で私は官能小説を読み続ける。ひたすらに性的な世界を探求する官能小説の主人公たち。
自称清潔な人たちが見つけたら、卒倒すること間違いなしな官能小説の中の彼/彼女たちは、実は大切なことを沢山教えてくれる。
「わたしも彼も、ヴァージンなのだ。少なくとも命だけは、まだだれにもおもちゃにされたことはないのだから。」
これは、富士見ロマン文庫の『背徳の聖女』という本のビッチな主人公の言葉。富士見ロマン文庫は、ひとむかし前の海外の性愛文学を集めて翻訳した文庫シリーズだ。
その中でも私が一番大好きで、人生の聖書としている『背徳の聖女』のこの言葉は痛烈だ。
彼女は「淫ら」だ。扉を開くように次々と欲望の赴くままに老若男女誰とでも寝る。
だけど彼女は魂の貞操を貫いている。
自分の見つけたいもののために、常に覚醒した状態で行動し続けている。
「淫ら」なことは、決して「だらしない」ことじゃない。
ただ、ひたむきなだけだ。
命の主導権を自分で持つということ。そんな大切なことを刺激的に教えてくれるから、官能小説って大好きだ。
「わたしの世界は、夢に彩られたステインド・グラス。」
物語終盤の彼女の言葉だ。こんなふうに世界を感じることができたら、人生上出来じゃない。
人のことなんか気にしないで、自分の魂くらい自分で守り通したい。
吉行ゆきの@変態文学大学生
「文学」と「変態」と「酒」を偏愛する北大生。主にTwitterで活動し、全国で無駄にリテラシーの高い変態文学イベントなど開催。ミスiD2021受賞。
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