第2話・蔵の中に秘蔵されていた「江戸川乱歩のルーツ」
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前回は、「ミステリー文学資料館ニュース 第2号(2000年10月)」に掲載されていた、展示「鮎川哲也の世界」をご紹介しました。
今回は、2002年11月発行の第6号に掲載された展示を見てみたいと思います。
当時開催されていた展示のタイトルは……
“本格の鬼”鮎川哲也に続きまして、乱歩というやはり最大級の巨星が登場です!
もちろんミステリー資料館である以上、江戸川乱歩の展示を行うのは、ある意味当たり前のこと。ですが、このときの展示には特別な意味があったのです。
乱歩邸に建つ蔵は「乱歩は蔵の中で蝋燭の明かりで執筆する」という伝説があったほど有名ですが、その蔵とそれを取り囲むように作られた書庫には、膨大な量の資料や書類が保管されていました。
ミステリー評論家の新保博久氏と山前譲氏は、その蔵書や書類を長年にわたって調査し続けていました。その成果のひとつが、展示の前年の2001年に新発見された、乱歩が横溝正史に宛てた341通もの書簡。乱歩はその几帳面な性格から、手紙をカーボン紙で複写して残しておく習慣があったことによる大発見です。
当時、新聞のニュースにもなり、ミステリー研究にまたひとつ大きなテーマが生まれたのでした。
乱歩と正史が交わした書簡――わくわくしますね!
ちなみに同書にはCD-ROMがついていて、当時の蔵の様子を画像で見ることができます。
そして同じ2002年の春に、土蔵を含む乱步邸と4万点近くの蔵書が立教大学に譲渡され、それを記念して「江戸川乱歩再見」の展示が行われたのです。
この展示では、主にデビュー前の創作活動に焦点を当てていました。「二銭銅貨」の粗筋と草稿、早稲田大学時代に書いた幻想小説・冒険小説の原稿、シャーロック・ホームズものを訳した大学時代のノートなど、乱歩のルーツが見えてくる貴重な資料が並びました。
2002年は乱歩研究、そして乱歩ファンにとって画期的な年だったのです。