第3話・江戸川乱歩から辻真先へ。怪人二十面相は死なず!

文字数 1,594文字

「ミステリー文学資料館」の冊子から、貴重な読み物を発掘&再録!

「ミステリー文学資料館」が行った特設展示の内容を、年2回発行していた「ミステリー文学資料館ニュース」から振り返る本コーナー。


前回は推理小説会の巨星、「江戸川乱歩再見」の展示をご紹介しました。


その乱歩の流れで、今回は2004年8月~9月に行われた展示「怪人二十面相をつかまえろ!!」をご紹介します。(「ミステリー文学資料館ニュース第10号〈2004年8月〉」掲載)

江戸川乱歩の作品は数あれど、子どもたちにもっともポピュラーだったのは、やはり少年探偵団が活躍するシリーズでしょう。名探偵・明智小五郎と少年探偵団を組織した小林少年の活躍を、かつて手に汗握る思いで読み耽った人も多いと思います。

そして明智探偵+小林少年が輝いたのは、彼らが対決するライバル・怪人二十面相がいたからと言って過言ではないはず。


変装の名人で、どんな不可能も可能にしてしまう男、二十面相。黒マントに黒いマスク、タキシードを身にまとった姿は、探偵小説史上屈指の格好よさです。


また、犯罪を起こしながらも血を流すことは好まず、明智探偵との闘いもあくまで頭脳対頭脳の勝負。そのクリーンなスタイルも読者を惹きつけてやまない要因でしょう。


怪人二十面相が登場する「少年探偵団シリーズ」は、戦前は昭和11年から『少年倶楽部』(講談社)で連載がスタートしました。

そのシリーズ第1作「怪人二十面相」から、タイトル通り二十面相が登場し、物語の終盤では少年探偵団が結成されます(そして第2作のタイトルは「少年探偵団」!)。


戦中は連載が中断されましたが、戦後、昭和24年に『少年』(光文社)で連載が再開され(再開第1作は「青銅の魔人」)、その後も乱歩の戦後の代表シリーズとして書き続けられました。

そしてラジオ・ドラマやテレビによって知らない子どもはいないほどの人気となっていったのです(ある年齢から上の人は「ぼ・ぼ・ぼくらは……♪」で始まる主題歌を歌えるかも)。


この「怪人二十面相をつかまえろ!!」の展示(下写真参照)では、少年探偵団シリーズの初出誌、単行本、雑誌付録などを展示し、懐かしさ全開ながら、どの年齢層でも楽しめる企画でした。

↑↑「ミステリー文学資料館ニュース」第10号より

上述のように、少年探偵団の活躍=怪人二十面相の活動は、戦中と戦後のしばらくは中断していました。


 この「空白の期間」にいったい二十面相は何をしていたのか? 

 明智探偵と小林少年の消息は? 


そんな疑問から始まったミステリーがあります。

辻真先さんの『焼跡の二十面相』『二十面相 暁に死す』の2冊がそれです。

● 『焼跡の二十面相』辻真先(光文社)

1945年8月15日、日本敗戦。明智小五郎は応召して不在。

ふたたび動き出した怪人二十面相が出した犯行予告は、軍需産業の首魁・四谷剛太郎に向けたものだった――。

昭和を代表するダーク・ヒーローが、焼け焦げた帝都を暗躍する。痛快冒険探偵小説!

● 『二十面相 暁に死す』辻真先(光文社)
敗戦の翌年。疎開していた少年探偵団の団員も少しずつ戻ってきて、にぎやかになりつつあったが、二十面相の暗躍もやむことがなかった。

団員の羽柴くんの家には、明智探偵と小林少年の偽者まであらわれる始末。

偽者たちの正体と、その目的はいったいなんだ!?

「少年探偵団シリーズ」を懐かしく再読する方も、初めて小林少年の活躍を読む人も、彼らの空白の歴史をこの2冊で埋めてみるのもいいのでは。

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