よく知る二人、気になる二人/後藤拓実(四千頭身)×加 賀翔(かが屋)対談②

文字数 3,568文字

「小説現代」誌上での人気連載エッセイを書籍化し、『これこそが後藤』を刊行した四千頭身後藤拓実さん。

また講談社から自身初となる小説『おおあんごう』を刊行したかが屋加賀翔さん。

今最も旬なお二人の豪華すぎる対談が実現!


『有吉の壁』のあんなお話(!)から、創作論、お互いのプライベートにいたるまで、仲良しトークが盛沢山です!


3月9日からの3日間に分けて、毎日12:00に公開いたします!


【構成】西澤千央 【写真】松井雄希

加賀くんって呼んでもいですか?

加賀 後藤は小説書かないの?

後藤 僕は無理です。

加賀 俺も無理だと思ってたもん。後藤なら地元のことをモチーフにした小説とかいけそうですよ。

後藤 地元ですか。

加賀 地元と家族かな。後藤の家族、ちょっと面白いじゃないですか。

後藤 でもこのタイミングで地元と家族のことを小説にしたら、もう『おおあんごう』じゃない?

加賀 フィーチャリング加賀翔(笑)。ちょっと不良っぽいものも読みたいけどね。気合いが入ってますから、後藤って。

後藤 後藤、気合い入ってます?

加賀 ヤンキーとかではないですけど。生き方に気合い入ってる。最初にLIVEで後藤を見たときに衝撃だったのは、モグライダーの芝さんがMCで、後藤も並びでMCだったんですよ。阿佐ヶ谷のLOFT Aでやっている企画LIVEで、後藤は1年目。四千頭身の知名度もまだそんなにって時期だった。芸人はみんな知ってたけどね。後藤は1年目で誰も知り合いがいない状況なのに、マイクを持って普通にツッコんだり、ボケたり。で、芝さんがそれにツッコんで、ワッとウケたり。僕、そのLIVEのカメラマンをやっていたんですよ。演者じゃなくて。その時こいつはやばいって思ったんですよね。気合い入ってるやつ。あとから聞いたら、死ぬほど緊張してたって。マジで友達もいないし、知り合いもいない中で、ただ日和ってるわけにはいかないから、できるぶってただけだったらしいんですけど。でもそれができる/できないで今後の人生が変わってくるっていうのを、南原(清隆)さんも似たようなことを言ってたんですよ。大事な舞台で、ビビらず一歩前に出てくるだけで、マジで年収変わってくる世界だって。すご……それ地でやってるやんって思ったんだよね。

後藤 そのとき俺としゃべりました?

加賀 しゃべってない。僕が勝手に思ってた。別のLIVEで新宿で一緒になったときに、それを言いもしなかったです、僕は。だから実は後藤にビビっていたけど、後藤を見て学んでいるから、全然ビビってない感じ出してた(笑)。

後藤 えー、僕で?

加賀 そう。逆輸入。後輩から学んだことをやってた。

後藤 僕は加賀くんの第一印象をよく覚えていない。

加賀 いや、つええな(笑)。覚えておけよ! でもふわっとだったもんな~。

後藤 一緒の時期にテレビに呼んでもらい始めましたから。気が付いたら仲良くなってた。ライブでよく一緒になってたのは、かが屋さんと宮下草薙さんと。

加賀 きつねさんもそうだ。

後藤 ザ・マミィも。

加賀 そう、平日の16時ぐらいにさ。60分ぐらいのLIVEで出てて。

後藤 そうです。若手が選抜されて、6組ぐらいネタをやって企画をやる。

加賀 あれのおかげでいま、一緒にしゃべっているっていうのはありますね。

後藤 マジ友達っすよね。

加賀 「加賀くん」って呼びますから、僕のこと。

後藤 はい。「加賀くん」ですよね。

加賀 だめだよ? って言うんですけど、僕は。「加賀さんな」とか言うんですけど。

後藤 本気で言ってないんですよね、目が。

加賀 お前、やめとけ(笑)。

後藤 本当に「加賀さん」だとしたら、もっと来ると思うんですよ。「おい」って。「ええ加減にせえよ」みたいな。

加賀 いやいや(笑)。俺、そんなジャニーズ憧れとかないから。実は“くん”付けで呼ばれるの嬉しいとかそういうのないから(笑)。いや、別にいいんだけど、一応周りの人のために言ってる。本当に同期だと思われることがあるから。

後藤 同期のときもありますもん、たまに。

加賀 たまに(笑)。

後藤 僕らは4月から7年目です。

加賀 え、7年目? はあー。早い。そんなに経ったか。

後藤 まだまだですよ。

加賀 マズがりますね、後藤は。よくマズがってます。「これじゃ、だめですよ」って。よく言ってる。

後藤 マズがりますね。

加賀 不安。心配性ではありますね。見た目と雰囲気な割に。

後藤 え、雰囲気そんなことなさそうですか?

加賀 だってオラオラ系な雰囲気はあるじゃん。

後藤 嬉しいな。昔に比べたらあか抜けましたよね。

加賀 いやー(笑)。あか抜けた。逆になっていった気はしますね。見た目は、言ったら素朴な感じで始まったじゃないですか。でもキャラはオラオラというか、全然怖じ気づかないキャラ。「僕が一番最初に売れましたからね」って言ったり。それができる。失礼なことを言ってのけるキャラクター。だけど、だんだん見た目が厳つくなっていくにつれて、どんどん弱気になっていった。

後藤 バランス取れてないんです。

加賀 そう。実際に強くなると心配なことも増えるんだなと思った。後輩もできてくるし。

後藤 いや、でも裏目に出ていますよね。

加賀 後輩もいるし、しっかりしなきゃっていうのが?

後藤 うん。だってもっと僕らより若い世代にどんどん頑張って欲しいじゃない。

加賀 早いけどね、それ思うのも(笑)。後藤は気を使ってくれるんですよ。たとえば、僕は後藤の家に一回くらいしか行ったことないんですけど、あまり誘わないようにしてくれてたんですよね。僕の醸し出す「誘わないでオーラ」みたいなのがあったらしくて。そんなことはないのよ(笑)。

後藤 なんかね、これを読んだらもっと誘いにくくなった。緊張しますよ。

加賀 裏目に出てるって(笑)。

後藤 これほどの小説を書く人が、どこまで分析しながら僕と接しているのか。

加賀 マジでそれはないよ。本当に。

後藤 コントでイジられたりしたら嫌だな。

加賀 俺がコントでちょっと声のトーンを抑えめに「賀屋くん、賀屋くん、賀屋くん」ってしゃべり出したらそうかもしれないけど(笑)。

後藤 『コント・舐めてるだけの後輩』

加賀 「賀屋くん、ポケモンユナイトやろう~」

後藤 賀屋さんには言わない!!

加賀 いや、ほんとそんなことないよ。僕としては本当にまだお返しもできてないから。いつもごちそうになってばっかりだった。僕、後輩にご飯をおごったことがなかったんですよ、それまで。だからコロナ前ですけど、勇気を振り絞って「後藤、ちょっと行こうよ」って誘って。

後藤 『(有吉の)壁』の帰りかな。だってずっと言ってるんですよ、ご飯食べてるとき。「いや、今日初めて後輩にごちそうするんだ」って。

加賀 慣れてないしさ。それで最後お会計お願いしたら「あ、頂いてます」って言われて。たまたま別のテーブルに先輩がいて。僕たちのお会計払ってくれてた。慌ててその先輩のとこに「おい、後藤行くぞ」って。僕、初めてのごちそうする後輩の前で「ありがとうございました」って(笑)。

後藤 後藤、頭下げろ! って。

加賀 クソださかったね。あれね、本当に(笑)。だからまだおごったことなくて。それが「加賀くん」から抜け出せない要因かもしれない……。早くおごらねば。

本対談は、「小説現代」2022年3月号に掲載されたものです。
気になる続きは、明日12:00公開!

乞うご期待!

後藤拓実(ごとう・たくみ)

1997年岩手県生まれ。2016年、都築拓紀、石橋遼太とともにお笑いトリオ「四千頭身」を結成。おもにツッコミとネタ作りを担当している。YouTubeに四千頭身公式チャンネル「YonTube」を開設し動画を配信中。FM-FUJIにて四千頭身でのレギュラー番組「四千ミルク」を放送中のほか、日本テレビ系列にて「宮下草薙」の草薙航基とレギュラー番組「ハネノバス」を放送中。

加賀 翔(かが・しょう)

1993年岡山県生まれ。マセキ芸能社所属のお笑い芸人。2015年に加賀壮也とお笑いコンビ「加賀屋」を結成。「キングオブコント2019」では決勝に進出。ラジオ・バラエティ番組の他、趣味の短歌と自由律俳句のイベントにも出演し、マルチに活躍中。

『これこそが後藤』 後藤拓実


「小説現代」誌上にて2020年3月号から21年9月号まで連載された同名エッセイを書籍化。単行本化にあたり、ムロツヨシ、武田綾乃との対談も収録。


定価:1375円 講談社

『おおあんごう』 加賀 翔


岡山の田舎の小さな町で、細いゴリラのような父に振り回され、繊細な心を削られて生きる「ぼく」。凛とした母、ふんわりしたおばあちゃん、無二の親友との心の交流を描く、自身初の小説。


定価:1540円(税込) 講談社

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