山岡荘八『徳川家康』名言集③

文字数 1,884文字

 山岡荘八『徳川家康』は、その刊行前と後で日本人の「徳川家康像」を変えた…といわれる名著。家康のそれまでのイメージ「狸爺」が「経営者としてふさわしい歴史上の人物」に変わったと言われています。また山岡荘八は、ライフワークと言えるこの作品で、第11回中部日本文化賞、第2回長谷川伸賞、第2回吉川英治文学賞を受賞しています。

 新聞連載足かけ18年間4700回(!)、全26巻、累計6300万部(2022年12月現在)という数字だけを見ても、その桁外れのすごさがわかるというもの(ちなみにあの『転生したらスライムだった件』が現在累計約3000万部です)。


 今年のNHK大河は徳川家康。

 家康本の最高峰『徳川家康』より、家康の名言を厳選した名言集をお届け!

●人間は、過激な言辞を弄してゆくうち、その勢いに酔うものだ。

                     (第17巻「軍荼利の巻」―機と断と)



●人間というは、時折怒りにすべてを賭ける厄介至極な生きもの。

                     (第16巻「日蝕月蝕の巻」―窮鳥猛鳥)



●狸は年を経たものほど化かすのがうまいというが人間もおなじらしい。

                     (第5巻「うず潮の巻」―人生岐路)



●人間とは、時にはおろか、時には正直、そして時にはおそろしい魔もの。

                     (第24巻「戦争と平和の巻」―女性陣)



●個人の器量がいかに卓抜したものであっても、人間の命には限りがある。それを悟らずも立てた計画は、淡雪よりも儚ないもの。

                     (第17巻「軍荼利の巻」―機は熟す)



●隠すということは、危険なものと知っている証拠なのだ……

                     (第22巻「百雷落つるの巻」―万雷落つ)



●人生の波はいつも悲しみと喜びを皮肉に交えて押しよせる。

                     (第1巻「出世乱離の巻」―戦国夫婦)



●人はみな人生の石段を一段ずつのぼるもの。

                     (第15巻「難波の夢の巻」―吉野詣で)



●人情と戦略は両立しない

                     (第25巻「孤城落月の巻」―真田軍記)


●人生は、死ぬまで重荷じゃ。迷いじゃ。長い長い無明の旅じゃ。

                     (第19巻「泰平胎動の巻」―桜の乱行)



●大根は大根らしく、大黒柱になろうなどと思うことは迷いに過ぎない。大根のままで立派にその生を活かす道がある筈――

                     (第13巻「侘茶の巻」―生れ来し塔)



●人には、人それぞれの持って生まれた運がある。この運には何人も歯は立たぬ。

                     (第7巻「颶風の巻」―泣き獅子)



●人はみな生きていると思うている。が、それがそもそもの思案違いでの。生きていると同時に生かされてある……

                       (第17巻「軍荼利の巻」―颱風の眼)



●時勢にさからうものは必ず滅ぶる。それは天に向かって唾することに等しいからだ。

                       (第19巻「泰平胎動の巻」―桐の片桐)



●(酒の味に似ている、人生は……)

辛さを味わい尽すとはじめて残る舌の上の甘味。

                       (第5巻「うず潮の巻」―人生岐路)



●生と死だけは、どのように苦心し、どのように鍛錬してみても、わが身の力や意思では、決して自由にならぬ。

                       (第23巻「蕭風城の巻」―流浪の星)


山岡荘八 (1907~1978) 

明治40年(1907年)1月11日、新潟県小出町に生まれる。本名・山本庄蔵、のちに結婚し藤野姓に。高等小学校を中退して上京、通信官史養成所に学んだ。17歳で印刷製本業を始め、昭和8年(1933年)「大衆倶楽部」を創刊し編集長に。山岡荘八の筆名は同誌に発表した作品からである。13年、時代小説「約束」がサンデー毎日大衆文芸賞に入選、傾倒していた長谷川伸の新鷹会に加わった。太平洋戦争中は従軍作家として各戦線を転戦。戦後、17年の歳月を費やした大河小説『徳川家康』は、空前の”家康ブーム”をまきおこした。以来、歴史小説を中心に幅広い活躍をしめし、53年(1978年)9月30日没した。

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