第2回★始か続か終か、はたまた余か!?/編集W

文字数 1,604文字

田中芳樹氏の大人気伝奇アクション小説『創竜伝』が、33年の時を経てついに完結──! 完結を記念して、歴代担当編集者や大ファンの現役編集者が、自分だけの「創竜伝とわたし」について語ります! 凄まじい超能力を秘めた竜堂四兄弟も思わずのけぞって号泣する、熱き想いをここに‼


第2回は、編集Wによる「始か続か終か、はたまた余か!?」です。

田中芳樹さん『創竜伝』がついに完結を迎えた。幸運にも講談社の編集者になった私は、本になる前の田中さんの原稿を読ませていただいたり、天野喜孝さんの原画を拝ませていただいたりした。講談社に入ってよかったと、こんなに思ったことはない。


思えば『創竜伝』は私の妄想の源だった。十代の頃から、私はと付き合うべきかを好きになるべきか、いやと一緒にいた方が楽しいかもしれないし、大器晩成と言われたを選ぶのが賢明ではないかと、悶々と悩んできた。


架空の作中の登場人物になりきり、茉理ちゃんを取り合ったこともあるし、毒舌のの理解者として彼を癒やしたこともあるし、と共謀していたずらをしたこともあれば、黒竜に変身したをなだめて人身に戻したこともある。『創竜伝』は途中、何年も刊行が止まっていた時もあるが、退屈することはなかった。妄想の中で、いくらでもたちに会えていたからだ。

は守ってくれそうだけど、真面目すぎて長年一緒にいると息苦しくなるかもなぁ。正座できなかったりお箸の持ち方がなっていなかったりしたら怒られそうなイメージ。は白皙の美貌を誇っているけれど、いざとなると兄弟を優先しそう。いやいや、彼のような男こそ、本気で惚れた女には尽くしてくれるに違いない。はカラッと明るくて、一緒に冒険もできそうで、無鉄砲だけどいいやつだし。でも自由すぎてまめに連絡とかしてくれなさそうだし、振り回されて疲れるかも。はさすがに年下だからないか? しかしおっとりしていて癒やされるし将来性ありそうだし、年を重ねたら年下の男の子が可愛く思えたりして。


その妄想歴、なんと十余年。我ながら恐ろしすぎる……。


の影響で、一番好きなビールは凍る寸前まで冷やしたバドワイザーになった。をまねて舌鋒鋭くなり、友達との喧嘩ではよく相手を泣かした。のように綺麗に魚を食べることができなかったので、を真似て骨まで食べるようにした。竜堂兄弟が私に与えた影響は計り知れない。

私の妄想人生を支えてきた、『創竜伝』。いよいよ完結ということは去年から担当者から聞いており、私の心は激しく乱れていた。そもそも、本当に完結するのか(だって話のスケールが大きすぎて、あと1巻で終わるとはとても思えない)。茉理は結ばれてしまうのか(そうなったらさすがに妄想からを除外しないといけないだろう)。完結したら、私は何を妄想の糧にすればいいのか(ついに、ついに、誰と付き合うか、結論を出さねばならないのか)!


しかし、原稿を読んで、その心配は無用だったということが分かった。ネタバレになってしまうから詳しくは書けないのだが、私が妄想できる登場人物と世界観を、田中さんはたっぷり用意してくださっていたのだ! これは田中さんが、私が妄想の種がなくなることを悲しんでいるのを察してくれたに違いない(いや、それこそ妄想だから)! 田中さん、ありがとうございます! まだまだ妄想はできることが判明したので、私も覚悟を決めて、生涯を『創竜伝』の妄想に捧げようと思います。というわけで、最終巻のタイトルは「旅立つ日まで」なのだが、私の妄想の旅も、四兄弟と共に、永久に続くのであった。

第3回をお楽しみに!
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