ミステリがなければ生きていけない 堂場瞬一×林家正蔵で語り尽くす!④

文字数 1,842文字

マイベスト海外ミステリ

堂場 今日は、正蔵師匠が少し前に雑誌誌上で書かれた「マイ・ベスト・ミステリー」のアンケートが手元にあるのですが……おお、ローレンス・ブロックの『死者との誓い』が1位ですか! 私は御三家のあとにハマったニューハードボイルドの作家が、まさにブロックでした。『八百万の死にざま』の最後、探偵が泣いてしまう、探偵の弱さを前面に出すのが、実に衝撃的でした。


正蔵 探偵マット・スカダーのシリーズですね。私は『死者との誓い』が最高傑作だと思っているんです。


堂場 なるほど、そしてボストン・テラン『神は銃弾』に、ロバート・クレイス『約束』。(思わず笑顔で)とてもよくわかります。特にロバート・クレイス、私は大好きなんです。日本ではなぜか過小評価されている気がするんですが。


正蔵 今年の頭に邦訳が出た『危険な男』も、すごくよかったですね。そして、ジョーダン・ハーパーの『拳銃使いの娘』も大好きなんですよ。最近はこうした、少女が成長していく話が多いですよね。去年はディーリア・オーエンズ『ザリガニの鳴くところ』が本当によかったですし、今年ですとハンナ・ティンティ『父を撃った12の銃弾』が、いやあ、とても面白かった!


堂場 『ザリガニの鳴くところ』は、昨年の各ミステリ・ベストテンのアンケートで一位に推しましたし、『父を撃った12の銃弾』は今年2月の刊行ですが、既に今年の1位が決まったかな、というくらいの感触がありますね。でも両方とも、いわゆるミステリじゃないんですよね。人が死んでいるからミステリとして読めるけれど、日本でいうと純文学に近い。最近はそういう作品が増えている印象があります。

正蔵師匠のオビ文発表!


正蔵 こうやっていろんな作品を味わうなかで、冒頭に申し上げた堂場さんの『ピットフォール』を読んだわけですが、感じ入ったことがあるんです。堂場さんがこれまで聴いてきた音楽、知り合った人間、一番は読んできた本だと思うのですが、年齢とともに蓄積してきたものを、ちゃんと作品として形にして出せている……そのことが、読んでいてすごく嬉しかったんです。


堂場 積み上げてきたものを出せる年齢になってきたというのは名言だと思います。とても嬉しいです。


正蔵 元来、「年相応」という考え方は大嫌いなんです。そんなものは犬にでもくれちまえ、というぐらい、年相応に収まるのは嫌。ただ、自分では若造だと思っていても、キャリアは重ねてきている。それは噺家の楽屋で座る位置がどんどん変わってくることでわかりますし、日によっては「え、俺、この位置かよ」と驚くこともあるんです。私も堂場さんと同じくそろそろ60歳にならんとする年齢ですが、この歳になってしまったということはきちんと受け止めようと思うようになりました。バリバリ仕事ができるのはあと十年くらいだな、ともよく考えるんですよ。


堂場 私は、あと30年ぐらい書ければいいなと思っているんです。で、最後は断髪式がしたい。


正蔵 えっ?(笑)


堂場 いや、落語家さんと同じく作家も引退がないんですけれども、私は正式に引退して、あとは口の悪い海外ミステリ評論家として生きたいんです。断髪式をやろうとしても、髪が残っていないかもしれませんが(笑)。


正蔵 なるほどねえ。いずれにしても、あと30年は堂場さんの作品を読めるわけですね、楽しみです!

 そうそう、ご依頼いただいていた『聖刻』のオビ文を考えてきたんですよ。お伝えしていいですか?


堂場 えっ、ここでですか!?(笑)


正蔵 では……。

「彼女のように強く優しく生きてみたい。『柿谷晶』は私の胸に消えぬ爪痕を残した。君に首ったけだ」


堂場 「首ったけ」! いいですねえ、ありがとうございます!


正蔵 晶に惚れちゃった、っていうことですね(笑)。

NEWS

発売即重版!


堂場作品のニューヒロインが活躍する『聖刻』は発売1週間で重版が決定!

「警視庁犯罪被害者支援課シリーズ」シーズン2の序章にあたる本作。

正蔵師匠を首ったけにさせたチャーミングな女性刑事のデビュー作です。


捜査一課刑事・柿谷晶の秘められた過去とは――。

孤高のヒロインに、きっとあなたも首ったけに!

堂場瞬一デビュー20周年 特別企画を続々実施中!


3大警察シリーズコラボを記念した、特製オリジナルブックカバーのプレゼントキャンペーンをはじめ、出版社の垣根を越えた豪華企画が盛りだくさん。詳細は特設サイト(http://www.doba.jp/)で。堂場ファン必見です!

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