[event]発掘者 vs 文芸部 ビブリオバトル いいからこの本を読め!
文字数 6,527文字
最近本を読んでいないあなた。または次に読む本が決まっていないあなた。
この記事は、あなたのための企画です!
突然ですが、みなさんは「ビブリオバトル」ってご存知ですか?
紹介者がそれぞれ自分の愛する本を持ち寄ってアピールしあい、聴衆に一番読みたいと思わせた人が勝ちというシンプルかつアツい競技です。
コロナ第三波真っ只中の今、みなさんのおうち時間を充実させること間違い無しの、おすすめの本を紹介したい!
そして、せっかくなら少しでもおもしろく紹介したい!
そんな思いから、レジェンドノベルスでは「オンラインビブリオバトル」を開催し、みなさんにその模様をお届けすることにしました。
プレゼンターたちの熱すぎる作品への思いに、きっとあなたも紹介された作品を読みたくなるはずです!
ルール説明
二人のプレゼンターが、それぞれ5分の持ち時間で作品を紹介します。
紹介が終わったら、それぞれの紹介について話し合い、最終的に審査委員長が勝者を判定します。
最初から最後まで、Zoomを使ったオンライン形式で実施します。
出演者紹介
プレゼンター(先攻)
堀敦史:レジェンドノベルス専属プロスコッパー。2万作品以上の投稿作品を読破し、優れた作品を見つけ出す、発掘のスペシャリスト。
プレゼンター(後攻)
久野川聖:文芸サークルの名門「新月お茶の会」の現役会員。主な守備範囲はミステリと青春小説。
審査委員長
吉野:レジェンドノベルスアシスタント(デザイン・分析担当)。
司会・オーディエンス
レジェンドノベルス編集部(松本、藤澤)
若き本読みのお二人に、オススメのレジェンドノベルス作品を持ち寄っていただきました。お二人ともビブリオバトルは初めてということですが、どちらも大変な読書家です。どんなバトルになるのか、楽しみです。
お二人に意気込みをお伺いできればと思います。まずは堀さん、いかがですか?
『魔界本紀 下剋上のゴーラン』 紹介者:堀敦史
今回私がオススメする作品は、この『魔界本紀』です。
一言で言えばこの『魔界本紀』っていうのは、ヤンキー漫画の小説版みたいな感じで、簡単なあらすじとしては群雄割拠の魔界に生まれた前世日本人のオーガ族のゴーランが大事な家族ーー家族っていってもオーガ族だけを指してるんじゃなくて種族を超えたもので、マフィアやヤクザのファミリーみたいなものを想像してもらえると理解しやすいと思いますーーそういう家族を守るために強大な敵を下しながら、成り上がっていくっていう話です。
『魔界本紀』の世界観はまさにこの帯にあるように、まさに世紀末で、複数の魔王が魔界の統一を目指して常に潰しあっている戦国乱世の様相を呈してます。
なのでどの種族も基本的には好戦的で、同じ種族内や魔王軍団内部でも下克上、下のやつが上司とかを倒してその上司の役割に収まるっていうような下剋上が頻発してます。
つまりなめられたら終わりな世界観なんです。
こんな世界でゴーランの種族であるオーガ族は魔法の使えない脳筋って呼ばれていて、下っ端で、日々突撃要員の消耗品として使いつぶされています。
そんなオーガ族に生まれた主人公のゴーランなんですけれども、彼には二つの人格があるんですね。
本文で漢字表記の「俺」とひらがな表記の「おれ」がいるんですけれども、基本的人格であり前世の日本人の記憶を引き継いだ理性的な漢字表記の「俺」は様々な前世の経験を活かして、理性的かつテクニカルに敵を下していきます。
例えば首を鉢がねで締め上げたりだとか、刀を使った剣道のような剣術で戦ったりします。
もう一つは転生後の本来の人格であるひらがな表記の「おれ」です。
オーガ本来の性格である脳筋よりで、やや言動も幼いんですけれども理性的な俺とは比べ物にならない程の圧倒的なパワーを使って、敵をねじ伏せていきます。
彼の魅力はそんな強さだけじゃなくて基本的に去るもの追わず、来るもの拒まずの精神なんですけれども、一度身内に引き込んだ種族にはとことん甘くて、身内を守るためなら敵わないとわかっている強大な格上の上司とかにも迷わず下克上を仕掛けるんですね。
そのたとえばその格上の相手というのが上司のネヒョルっていう、再生能力を持つ吸血鬼でこれが絵に書いたような腹黒有能系の上司なんですね。
まずゴーランが下剋上で、オーガ族の長になったことを知ってすぐにゴーランに注目してくる。
それだけじゃなくてゴーランが戦闘の最中で倒した他の魔王軍の魔物の惨状を見て、ひらがな表記でパワータイプの「おれ」のことにうっすら気づくんですね。
それでますますゴーランに注目してきて、結構ちょっかいをかけてくるんですよ。
そんな感じに魅力的なキャラクターがいっぱい出てくる作品なんです。
私は、『俺たち青春浪費中、魔法少女と世界を救う』をご紹介したいと思います。
人間誰しも、学生の頃は「自分は特別なんじゃないか」とか、そんなことを思いながら過ごす時ってあると思うんです。でも、結局はごく普通の大学生活を送っている。
この本の主人公も、やっぱり特に何の取り柄もないような大学生活を送っています。ですが、彼は魔法少女と出会ってしまう。そこから物語が始まります。
彼が出会った魔法少女、シロハちゃんって言うんですけれど、彼女は魔法少女最後の生き残りで、たった一人で、敵と戦って世界を守っている。そんな存在なんです。
物語の最初で、主人公は偶然にも彼女と出会うんですけれど、どうもなんか危なっかしいと。
まず登場人物の掛け合いがすごく楽しいんです。
この本の主人公・棗裕太君と友達の灰原君。彼らのやり取りは、唐突のラップバトルだったり唐突にお互いをディスってみたり、無意味ではあるんですけどすごくエッジが効いています。そんな楽しい掛け合いが全編を通して繰り広げられています。
その上で最初は大学生の会話に戸惑っていたシロハちゃんが、途中からその会話に乗ってくるようになる。
それで「シロハちゃんが心を開いてくれたんだ」と言うのがわかって、読者としても嬉しくなってくることだと思います。
そして次に、この本は主人公たちが敵と戦っていくんですけれど、その中で次々に色んな策を繰り出していく、その爽快感がすごく魅力だなと思います。
敵も魔法少女が相手をして戦っているくらいなので特殊能力を持ってるんですけども、やっぱり主人公たちは特殊能力も何もなく、ただの我々と同じ一般人なので出来ることというのはすごい限られているんですよ。
ただ、敵は人間の攻撃ではどうもできない、でも魔法少女はシロハ一人だから自分たちが何かをしなければならない。
どう立ち向かえばいいのかというところで、彼らは非常にさまざまな策を繰り広げていきます。
やっていること自体はくだらないことだったりするんですけれども、本当にその姿がヒーロー然としているというか。シロハを助けるために全力で行動しているところがカッコいいんです。
三つ目としては、登場人物たちがみんなハッピーエンドに向かって全力なところです。
戦いとしては、人が死ぬかもしれないという本当に緊迫した戦いであるはずなんですけれど、彼らはみんなやっぱりシロハとともに世界を救いたいという意味で戦いにすごく前向きと言うか。自分たちが死ぬかもしれないとしても、何か夢と希望を持って進んでいってるのがすごくいいなと思います。
少しでもネガティブになればためらってしまうような無謀な作戦もなんか無茶で通してしまう。できると思ってるから結果成功するところが多々あって、これもまた魅力だと思います。
『青春浪費中』は愉快な会話劇にバトル、それからキャラクターの魅力など惹きつけることがたくさんあって、誰でも読みやすいような本になっていると思います。
彼らはもともと無為な大学生活を送っている中で魔法少女と出会って、今ここがもしかしたら自分が特別になれるかもしれない状況において、世界を守る、さらにはシロハを守るために足掻いていく。
できることをとにかく足掻いてやっていく彼らの姿は、誰が見ても魅力的で好きになってしまうんじゃないでしょうか。
我々、というか私は大学生なんですけども、大学生はやっぱりあこがれてしまうところがあると思うし、大人の方でもあの頃の青春みたいなのを思い描いて、かつて夢描いたものとして楽しめることだと思います。
ご清聴ありがとうございました。
まず堀さんの『魔界本紀』は、私から聴いてるともしかすると完全な男の子向けの作品なのかなと思いましたね。
後半、ネヒョルとの関わりの部分は細かい話になってきちゃって、ネヒョル以外の仲間たちだったり物語の展開の話に持っていけなかったのが少し残念だったような気がします。
喧嘩で成り上がる話だけど、女性的な萌えの部分ってあるのかなと。
堀さんはそういうのって感じながら推せる部分ってあったのかなって。
久野川さんの方は、久野川さんのフィルターを通すと『青春浪費中』の世界、相当綺麗な青春になってるんだなあって思いました。
なんかオタクのエグい部分とかゲスい部分みたいなのが取り払われて、すごいキラキラしたその「魔法少女を守るんだ」っていう美しい世界の話なのかしらと。
堀さんの方のプレゼンは、堀さんから見た作品の面白さっていうのを、情熱のままに語ってくれたような感じがすごくありました。
本当に直球と言うか、「本好きが他の本好きに本を勧める時の紹介の仕方」だなと思って大変好感が持てましたね。
一方で久野川さんの方は、理由は三つっていうのがコンサルっぽくてロジカルなプレゼンテーションですよね。すごく説得力がありました。
久野川さんのフィルターを通してすごくかっこいい主人公たちの姿っていうのが聞いてる人にもよく伝わったんじゃないかなあと思います。
はい。アツいプレゼンテーションをありがとうございました。
ではまず堀さんの方から。
堀さんの紹介は、いろいろと気になる単語が出てきて、「ヤンキー漫画の小説版」や「下剋上」、「二つの人格」など刺さるワードがたくさんあって純粋に面白そうだと思いました。
「俺」と「おれ」がふたつ出てきたりだとかは、ストーリーだけでなく主人公自身の面白さがあるんだと、表紙ではわからない部分で色々と詳しく教えていただいたなという感想です。
下剋上とか戦闘モノ特有のスカッとする話って私も好きなんですけど、どのような部分で盛り上がるのか端的に教えてくださるともっと良かったと思います。
次に久野川さんなんですが、私も学生っていうのもあり、一番最初のつかみの「誰しもやっぱり大学生ぐらいの頃は自分は特別なんじゃないかと思いながら過ごす」という言葉でぐっと引き付けられました。
魔法少女というワードが出てくるので実はファンタジーよりなのかなと思っていたんですけど、彼らの大学生らしい掛け合いなど日常に近い面白さがあるっていうのが分かって共感できる部分が多い作品なのかなと感じました。
またバトルの見どころも分かりやすくまとめられていたので、どういう風にストーリーが展開していくのかもっと知りたいなと思わせるプレゼンだったと思います。
藤澤さんに指摘いただいたところに関しては、ビブリオバトルで触れる時間があまりなかったのと、自分もオタクなので読んでいるときにあまり気にならなかったという感じですね。
改めて本の受け取り方は、人それぞれなのだなと思いました。
ビブリオバトル難しかったです。
BL的にはネヒョルは腹黒いけど、誘い受け系の、いわゆる眼鏡くいってするようなあれな感じの上司なんですっていう文言を最初は入れてたんですけど、さすがにBL系の単語をこう、入れてしまっていいのかどうかっていうのがちょっと迷いがあって。
『俺たち青春浪費中、魔法少女と世界を救う』
著:佐藤悪糖/装画:紙魚丸
著:茂木すず/装画:lack