[interview] 次世代ファンタジー作家に聞く「世界の作り方」/笹野ちまき

文字数 5,280文字

 森を抜けると眼下に開ける青空と、海岸沿いの美しい街並み。正統派ファンタジー世界での冒険を予感させる装幀がひときわ目を引く「星空の魔道書と灰色の竜」(笹野ちまき著・レジェンドノベルス刊)が話題です。
 本作で小説家としてデビューした笹野ちまきさんに、本書に登場するゲーム【グラナシエールの創世】の世界が出来上がった経緯をうかがいました。

この度、レジェンドノベルズ様より小説を出させて頂きました、笹野ちまきと申します。よろしくお願いします。

――9月に発売になった『星空の魔道書と灰色の竜』、おかげさまで好調です!
ありがとうございます……! うれしいです!
――笹野さんは「小説になろう」のサイトに、この『星空の魔道書』を含めて2作品、【グラナシエールの創世】というオンラインゲームの世界が舞台の小説を投稿されていますが、……じつは、『星空』のほうが、ブックマーク数もポイントも少ないんですよね。「なろう」の目次を見ると、『星空』は全話同じ日に投稿されています。

そうなんです!

「小説家になろう」を始めた当時は、ラストまでどかーんと一度に出した方がいいかもしれないと思って……あとでいろんな人の投稿の仕方をみてたら、一日毎とか、数日おきに、とかが一番いい感じだということに気づきました。その方が、たくさんの読者さんの目に触れる機会が多くなるみたいです。

――そうですね、一気にラストまで16万字掲載ってあまり聞いたことがない……最初に気づいてブックマークした読者だけが読破する、というかんじで?

はい、一度にどかーんと出したら、あまり目に触れないというのが分かりました!

同世界設定の小説(『暝き黒霧の狂王』)の方は一般的な手法(?)をとって連載形式で投稿していたので、そこから辿って、読んで下さったりしてるみたいです。

――レジェンドノベルスには、投稿サイトの優れた作品を発掘する専門チームがおりまして、『星空の魔道書』も、ランキングやポイントによらず、スタッフが「面白い」と推した作品群から選抜されたタイトルです。うちのスタッフも、別作品から辿って『星空』に出会ったそうです。
ありがとうございます……でも私を発掘、サルベージするとは……なかなかに攻めてますね(!?)
――【グラナシエール】シリーズ、「なろう」での読者の反応はいかがでしたか?
どちらも食べ物が美味しそうと言われました。(え?)
――食べ物がおいしそうなのは、作品の強みです!!^^
食は全ての基本です!
――作中で宵月もいつも言っていますもんね(笑)

ここで、笹野さんからいただいた【グラナシエールの創世】の設定を拝見したいと思います。

【グラナシエールの創世】

 PCオンラインゲーム。

 初期のプロトタイプであるベータ版で十年、正規版は今年で三十年目を迎える長寿ゲーム。作り込まれた世界観と日々進化するシステムは、多くの人に愛され、未だに高い人気を誇っている。


 ──生まれたての世界【グラナシエール】。さあ、一緒に世界を創ろう──が初期のキャッチコピー。

 その初期キャッチコピー通り、エリアはどんどん広がっていき、システムも進化し続け、NPCはまるで生きているかのように動き、今ではまるでもう一つの別世界をみているような、本当は何処かにあるのではないかと感じるほどになっている。


 テホム・ワールド・システムズという会社が運営している。

 本社は海外にあり、社員は少人数、そのほとんどがリモートで仕事をしているらしい。社長は映像でしか姿を現した事がない。膨大なデータを納めているサーバーは、どこかの海の底にあるらしい。

 極秘事項の多い、いまだ謎の多い会社。

――ゲームの運営会社については、初耳な設定がほとんどで興味深いです! ほかにもまだ公開していない設定がたくさんあるのでしょうか?
まだ書ききれてない部分もあるので、ちょこちょこあります。古竜のいる場所とか、本文中にちょこっと登場したクローバーのいるところとか、南の方にちょっとダークな大陸があったり。
――『星空の魔道書~』の世界観は、「小説家になろう」に投稿を始める前からずっと温めていたものなのですか?
そうですね、元々書きたい、というか自分が観たいシーンが頭の中にいくつかあって、私もこういう体験をしてみたいなという妄想と願望があって、じゃあこういうストーリーにしようとシーンを繋ぎ合わせて組み立てて、忘れないうちにと急いでそれをグワーと書きだしていた記憶があります。
――作品世界を作るにあたって、影響を受けたと思う他の作品や体験などはありますか? 映画だったり……やっぱりゲームでしょうか。
映画だと、ファンタジーはもちろんですが、SF系も好きでよく観ます。少し前の作品だと、独特な文字を扱う宇宙人と交流する言語学者の映画……『メッセージ』ですね。おお、と思いました。『指輪物語』とかも好きです。ガンダルフ。剣持って戦う魔法使いってあまりいない……恰好良い!
ゲームはとにかく好きで、学生時代からいろいろやってました。友人も好きな人が多くて、妹も好きで、一緒にプレイしてたり…
――どんなゲームをされてました?

『ウイザードリィ』(知ってるひと、まだいますよね……?)とか、『女神転生』シリーズとか。最近のはちょっとしてないですけど、3D探索系が好きで。

マッピング、好きなんですよね……ダメージ床ももれなく乗って埋める。なので『世界樹の迷宮』も好きでしたw 落とし穴にも全て漏れなく落ちる。

進んだ先で何が起こるか、何があるのか分からない、あのドキドキ感と踏破感。好きです。

――3D探索系! 笹野さんの小説を読んでいても、次々現れる新しい街を、キャラクターと探索しているような感じが楽しいです。


探索系、本当に好きなんですよね。ちょっと新し(くもない……か。いや、新しくまた出るみたいだし新しい…と言える!)ものだと、『デモンズソウル』という探索系アクションものにはまってました。

西洋風な世界観に、古城、ダークな雰囲気。剣と魔法。謎。とかそういうのは、結構、いや多大に小説に影響が出ていると思われます。

――『デモンズソウル』! 笹野さんがTwitter(@sasamaki_2020)で、PS5で新作が出るとつぶやかれてましたね。
自分の三倍以上もある騎士っぽい魔物と一人で戦ったり、ちょとグロテスクな大きな魔物と戦ったり、仕掛けを解いたり、古城を歩き回って調べたり……楽しい! ちょっと恐い系なので、万人にオススメはできませんが、良作です。というか私の中ではベスト3に入ってます。

ゲーム対談みたいな流れになってしまいますが、ファイナルファンタジーシリーズも好きです。ナンバリングタイトル、間のいくつかはできてないんですが、だいたいはクリアしました。

――『星空の魔道書』の作中で、主人公はむちゃくちゃ膨大な時間をかけて【グラナシエール~】をプレイしていますが……

羨ましすぎる、私もいっぱいしたい〜!! と思いながら書いていました。

多少、羨まし念波が主人公に向かっていっていたかもしれません。それにより、リアルラックの低さに多大な影響がでていたのかも?しれません。だって、私も長時間プレイしたい!

――自作のキャラが妬ましくなってくるというやつですね(笑)

私は、12時〜1時には寝ないと翌日に影響でまくる質なので……泣く泣く逆算して……プレイ時間は一日4時間ぐらいでしょうか。

夜中もぶっ通しで出来る人達って、いいなあって思います。

――『デモンズソウル』は高難易度ゲームとの評判を聞きますが、【グラナシエール~】はどんなイメージでしょうか。ゲーム内でスローライフも可能なかんじですか?

かなり自由度の高い設定にしています。日々強いモンスターを求めて戦い続けてもいいし、家や庭や畑を買ってまったりスローライフ、セカンドライフしてもいいです。第二の世界で生活、みたいな。

高難易度クエストは、それなりにえげつない攻撃をしてくるので要対策です。でないと、冒頭の宵月のような目に……

――わたしはオンラインゲームをほとんどしないのですが、冒頭に出てくる、3冊の至高の魔道書を入手できる高難易度クエストの条件、読むだけでウッってなりました……

セカンドライフエンジョイ系プレイヤーは、ゲームの世界に連れてはいかれないですよね。きっと。

それは……どうでしょう……やり込み系の人とか、ちょっと目をつけられたりしたらヤバいかもしれません(?)。

オンラインゲームも楽しいですよ。時間が足りませんが!

――笹野さん、最近プレイしているオンラインゲームはありますか?(はっ雑談になっている)

(!!)(ゲーム話、止まらなくなるんですよね……)

某国産有名MMOは、ちょこっとしてます。ストーリーが、いいんですよね……私は好きです。シナリオライターの人、すごいなあって思います。

――某……なんだろう……

有名すぎるので伏せときます!(分かる人はわかると思います!)

こそこそっとしてますので |・`ω・)

――「世界作り」の話に戻りましょう(笑)
世界観の作り方、ほかの作家さんのお話もすごく聞きたいところです。
――笹野さんの「世界作り」で、もしかするとほかの作家さんと違うかも、というところはありますか?

どうなんでしょうか……私の場合は、世界……舞台になる場所は、こういう風景のところに行ってみたいな、から始まります。

こういう場所があったらいいな、だったらそこにはこういう人がいて、こんなのがいたら面白いだろうな、と妄想(?)していって……ひとまずざっくりと世界(舞台)の設定をしていく、という感じでしょうか。

――描きたいシーンの風景を掘り下げたりつなげていって、舞台設定ができていくんですね。

それなら、戦う武器はこういうものを使って、こういうモンスターと戦ってみたい、暮らす人達はどういう生活してるのかな、と、少しずつ、少しずつ世界の中へズームしていく……みたいな……感じでしょうか。

観光、もしくは体験気分?的な。ファジーですいません。

――その世界の生活や常識を、丁寧にシミュレーションして周辺のことを形作っていく。グラナシエールの世界を旅するように読めるのは、そういう世界の作り方からかもしれないですね。
はい、そうかもしれません。
またその世界を、スズキゴロウさんがすごく素敵に描いてくださって! 装画、本当にイメージ通りでした。
――実は、『星空』を発掘したスタッフが、スズキさんも推薦してくれたんです。その方が、今作の重要な功労者ということに…!

ありがとうございます……! 

スズキゴロウさんはTwitterに日参してしまうほどのファンになってしまいました! モフモフ感素敵です。理想のモフモフ……。ゲームでもモフモフは絶対に一人は入れる派です。いつか、ああいう感じのモフモフ小説書きたい……。

――イラストから触発されて1作書くのもたのしいかもしれません!

スズキさんのTwitterの動画、わたしもよく見に行っています。セーラー服女子の動画はシリーズになっているみたいで、ほんと、かわいいですよね…

林檎をあげそうであげない少女と獣人のお兄さん?とのやりとり……癒されます
――あのしっぽぴくってなるやつ!
ぴくってなるやつ!

――さてさて……そろそろお時間がきてしまいました。

最後に、『星空の魔道書と灰色の竜』未読の方に、メッセージをお願いいたします!

主人公と一緒に、違う世界、剣と魔法が飛び交うファンタジー世界にトラベル&冒険気分で読んで楽しんで頂けましたら幸いです! ありがとうございました!
レジェンドノベルス

『星空の魔道書と灰色の竜』

著・笹野ちまき 装画・スズキゴロウ

【あらすじ】
 大学生の松波与一は、気がつくとオンラインゲーム【グラナシエールの創世】の世界にいた――自らの分身であるプレイヤーキャラクター【宵月】として。右も左もわからない森の中、最初に出会った双子のケモ耳少女・レフとライ、そして半竜人のジェイスとパーティーを組み、元の世界に戻る手がかりを探してこの世界を探索しはじめる。
【宵月】の職業は上級職の【魔道学者】。装備するのは、超難関クエストで入手したアイテムであり、神の叡智の一片とされる最強の魔道書――通称「星空の書」。遊び尽くしたはずの世界なのに、辿り着くのは見覚えのない街ばかり。戸惑いながら進むうち、自分と同じく【こちら側の世界】に連れてこられたプレイヤーたちの存在を知る。連れてこられたということは、戻ることだってできるんじゃないのか……!?
 コツコツ頑張る系主人公が、家族ため、仲間のために東奔西走。オンラインゲームに魅せられた者がいざなわれる【グラナシエール】の世界と、伝説の魔道書の秘密とは。

【profile】
笹野ちまき
岡山県岡山市出身。某神社近く在住。非現実系、ファンタジー系、ゲームテイスト系小説を主に小説投稿サイトにて執筆中。好きなものは古新合わせて謎っぽいもの、手触りの良いもの、新製品。

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