川中島の戦い完全ガイド➂ そもそも「川中島の戦い」とは

文字数 2,169文字

日本の歴史に残る有名な合戦を活写&深堀りして大好評の矢野隆さんの「戦百景」シリーズ

第4弾は、最強武将対決の戦い「川中島の戦い」を描いた『戦百景 川中島の戦い』

今回は「「川中島の戦い」という名称は知っているけど、誰と誰が戦ったんだっけ?」「そもそもどんな戦だったんだっけ?」という方に、「川中島の戦い」の基本を知っていただくための「そもそも川中島の戦いって⁉」です!


「戦百景」シリーズとは…

第1弾『戦百景 長篠の戦い』は「細谷正充賞」を受賞!

第2弾『戦百景 桶狭間の戦い』

第3弾『関ヶ原の戦い』

と、有名な合戦を深堀りしてリアルタイムで描く、矢野隆さんの人気シリーズ!


これから読む方にも、読んだ方にもおすすめの、物語をより楽しむための作品ガイドです!

《そもそもの「川中島の戦い」1》

父親を追放して武田家の当主となった晴信(のちの信玄)が、北条や今川との対決を避けて信濃に侵攻。国人衆がつぎつぎにその軍門に下るなかで、天文22年(1555年)村上義清が、越後の長尾家を継いで間もない景虎(のちの上杉謙信)を頼る。

景虎は義清の要請を受け入れ北信濃に出兵する。

ここに日本合戦史上で有名な川中島の戦いが始まる(第一次)。


このときを含め第三次の戦いまでは睨み合いが多く、両軍の全面衝突には至らなかった。


そして迎えた永禄4年(1561年)8月、上杉家の家督を相続し関東管領職を襲名して長尾景虎を改名した上杉政虎は、決戦を決意して居城・春日山城を後にする。

途中、善光寺に5000の兵を残して敵陣深く妻女山に布陣する。

13000の越後兵を率いて。対する信玄(2年前に出家)も甲府を進発。

甲州兵を引き連れて一度茶臼山に布陣し、さらに八幡原を横断して海津城に入城した。

武田家の最大動員兵力である20000の軍勢。


それから10日ほど膠着状態が続いたのち、武田軍は軍議で二手に分かれて上杉軍を攻撃する「啄木鳥戦法」を採用することを決する。

9月9日のことだった……。


《そもそもの「川中島の戦い」2》

「1」では武田軍が上杉軍を「啄木鳥戦法」で挟撃することを決する、9月9日までの両軍の動きについて触れた。

後のことになるが、この「啄木鳥戦法」に似た作戦が関わった合戦が二つ思い浮かぶ。


一つは織田・徳川対武田の「長篠の戦い」。

徳川方の酒井忠次が武田勝頼を戦場におびき出すために、武田軍の後方を別動隊で攻撃することを献策。

見事な成果を収めた成功例だ。


もう一つは豊臣軍と徳川軍が対峙した「小牧・長久手の戦い」。

膠着状態を打開するために豊臣方の池田恒興と森長可が、別動隊で徳川の本拠・三河を攻撃することを献策。

その動きを徳川家康に見事に見破られ、恒興も長可も戦死するという失敗例。


この二つの合戦の結果を考えても、件(くだん)の啄木鳥戦法がいかに雌雄を決するための大作戦であったかがうかがい知れる。

武田軍は総勢20000のうち過半の12000を別動隊に振り分けるという大胆な手に打って出たのであるから。そして決戦の日の9月10日。

「小牧・長久手の戦い」のときと同じく、上杉謙信は武田別動隊の動きを読み切り、13000の越後兵で信玄のいる本隊8000に総攻撃をかける。

合戦の前半は武田軍が大敗。

作戦の立案者・山本菅助は敗戦の責任を取るように戦死するのだった……。


あらすじ

父・信虎を追放して甲斐国主となった武田晴信(のちの信玄)は信濃への侵攻を繰り返す。晴信は次々に信濃の国人衆を従えていくが、北信濃の村上義清が立ちはだかる。だが武田軍の圧力に抗しきれず、義清は越後の実質的支配者・長尾景虎(のちの上杉謙信)を頼る。景虎は義清ら国人の要請に応え北信濃に進出。武田軍と対決する。天文22年(1553年)の第一次川中島の戦いである。その後両者は二度対峙し、また景虎は関東管領職に就き上杉政虎と改名するが、二人が直接干戈を交えることはなかった。信州進出でほぼ無敗を誇る晴信と、戦神・毘沙門天を名乗る政虎。戦国最強の二人の勇将は互いに雌雄を決することを欲するようになる。そして永禄4年(1561年)、ついに決戦の時が訪れる。晴信を屠ることを決意した政虎が川中島の南部に位置する妻女山に13000の兵で布陣し、晴信はその意図を察したように武田の橋頭保・海津城に全軍20000を集めた。10日ほどの対陣ののち、濃霧が出る前夜に武田軍は二手に分かれて出陣。それを気取った上杉軍も密かに妻女山を下るのだった……。

矢野隆(やの・たかし)

1976年福岡県生まれ。2008年『蛇衆』で第21回小説すばる新人賞を受賞。その後、『無頼無頼!』『兇』『勝負!』など、ニューウェーブ時代小説と呼ばれる作品を手がける。また、『戦国BASARA3 伊達政宗の章』『NARUTO-ナルト‐シカマル新伝』といった、ゲームやコミックのノベライズ作品も執筆して注目される。また2021年から始まった「戦百景」シリーズ(本書を含む)は、第4回細谷正充賞を受賞するなど高い評価を得ている。他の著書に『清正を破った男』『生きる故』『我が名は秀秋』『戦始末』『鬼神』『山よ奔れ』『大ぼら吹きの城』『朝嵐』『至誠の残滓』『源匣記 獲生伝』『とんちき 耕書堂青春譜』『さみだれ』『戦神の裔』『琉球建国記』などがある。

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